そして12月を迎え、
いつものようにふたりで
食事をしていた時だった。
理佐が申し訳なさそうな表情で発言する
「今月末に父がこの家に
帰ってくるかもしれないの、
嫌な思いをさせるかもしれないから、
旅行にでも出かけてくれないかな?」
友梨奈は理佐が父親のことを
心底嫌いなのはわかっていた。
家庭を顧みず、金の為に
弱い者を容赦なく叩きのめす
その為に多くの人間から恨まれている。
そんな人間を大事な友梨奈とは
会わせたくないのである。
「大丈夫だよ
私はどんなことがあっても
理佐さんのことは嫌いにならないから。
この家にいるよ。
いや、いさせて!」
友梨奈は必死に訴えた。
「ありがとう・・・
じゃあ、その時父に紹介するね」
理佐は友梨奈の心遣いが嬉しく思えた。
そして、理佐の父親新太郎が
帰宅する日がやってきた。
夜の19:00ジャストに
インターホンがなった、
秘書1名とボディーガード2名を引き連れ
玄関のドアをあけた。
理佐、友梨奈、家政婦2人の計4名が
横に一列に並び出迎えた。
「只今、我が家は2年ぶりぐらいかな?ははは!」
豪快に笑うのが松井新太郎52歳。
小太りの体型で、声が低くて
地声が大きいいので
かなりの迫力のある外見だ。
「お父さん・・・ご無沙汰してます。」
理佐は頭をあげ、話しかけた。
「いつも、ご苦労だな。理佐。」
そして、見慣れない友梨奈に視線をむけた。
友梨奈は明るく挨拶した。
「住み込みで理佐さんの助手として
働かせていただいています。友梨奈です。」
「お父さん・・
私の手助けをしてもらっているの。」
理佐はなにか不愉快なことを
言われるのかと心配だったので
視線を新太郎の顔から外さずにいた。
しかし、以外にも新太郎は笑顔で発言する
「秘書から聞いているよ
君が友梨奈君か。
理佐がお世話になっているね」
友梨奈も満面の笑みで答える
「私こそ理佐さんには、
妹のように可愛がってもらっています。」
嫌味でもいわれると覚悟していた理佐だったが
上機嫌の新太郎を目の当たりにして安心した。
実は新太郎は、
新たな買収作業が順調に進んでいる為に
機嫌がよかったのである。