小説『アバタール チューナー』 | ボクとその周辺

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あと、日常のこととか、気が向いたら心理学関連も書くかもです。

『女神転生』系のゲームの小説化…ではなく、原案を頼まれた著者が、そこからゲームとは違う方向性で、10年かけて本格SFとして仕上げた作品です。

全5巻、ハヤカワ文庫です。


何年も前に読んだものをKindleで見つけたのですが、記憶では3巻ぐらいだったはずです。
どうやら、その時出てた3巻まで読んで、終わったと勘違いしてたようです。

ので、3巻分は紙媒体でまだあるはずですが、すべてKindleで買ってしまいました。



世界観は、若干いまの流行りに近いところがあります。
まあ、異世界ものですね。


その世界では、人間は常に戦う運命を課せられています。

生まれたときから戦える身体、少なくとも10代半ばであり、〈トライブ〉というグループに属すことになります。

既にある〈トライブ〉に入るか、さもなくば結成します。


世界は、天を突き刺す巨大な建物を中心に、美しい完全な建物が並ぶ〈教会〉を中心に、放射状にいくつかのエリアが存在しており、周囲エリアは廃墟や荒野となっています。

因みに、教会の寺院が貫く天の先には、ヨーガのチャクラから名を取られた〈サスラハーラ〉と呼ばれる楽園があるとされ、周囲エリアもチャクラの名前が付いています。

空は、〈LT(ライトタイム)〉は薄く緑色に光って地上を照らし、〈ST(シェイドタイム)〉には光が消えますが、やはり星も月もありません。

周囲エリアでは〈トライブ〉同士の戦闘が常に行われ、全ての〈トライブ〉を淘汰した上で教会を訪れると、楽園に行くことが出来るとされています。


そして死んだ人間は、時間がたつと遺体は消滅し、〈罪(カルマ)〉を浄化されて、別人として生まれ変わります。
もちろん、記憶なども消えて、パラメータが再び振られます。



そんな世界で、下の上ぐらいのトライブ〈エンブリオン〉を率いる主人公サーフは、上の下ぐらいの強力なトライブとの戦闘中に事件に遭遇します。


さっきまで何もなかったところに現れた、黒い球体と、この世界に存在しないはずの黒い髪を持つ少女。

そして球体が何かを周囲に放射(?)した途端、周囲の人間の身体が化け物へと変わり、共食いを始めます。

もちろん主人公達も例に漏れず…

耐え難い飢えの衝動で、仲間同士で喰い合いそうになったところ、黒髪の少女に与えられた彼女の血液によって、共食いを免れます。


そこから、主人公たちは悪魔(〈アートマ〉と呼ばれる)への変身を駆使して、上り詰めてゆきますが、それだけでは5巻も持ちませんし、ただのゲーム小説版の域を出ません。

それだけではないのです。


因みに、リーダーで主人公のサーフは水の神の名を冠する〈ヴァルナ〉、相棒ヒートは火の神〈アグニ〉、女性スナイパーのアルジラは地母神〈プリティヴィー〉、参謀ゲイルは風神〈ヴァーユ〉、小間使い的な少年シエロは翼を持つ〈ディアウス〉に変身します。


以降若干ネタバレです。



2巻まで読破すると、すごく良いところで、次が読みたいところで終わります。

しかし、3巻は過去編です。
主人公も変わります。
少し、3巻を飛ばして、4巻を読もうかと思いました。

でも、3巻からが本格SFの始まりです。
中盤ぐらいからかなり面白くなるのですが、それまでのライトノベルに近い感じから、一気に雰囲気が変わり、展開も遅くなるので、ラノベ専門の人は少しキツいかもです。


また、〈神〉と呼ばれる存在が大きな鍵になってくるのですが、最初少しガッカリしました。

その〈神〉は、空間と時間を合わせた4次元よりも上にある存在なんですよね。

『エルナサーガ2』を初め、多くのコミックやゲームで見られる設定です。

培養したバクテリアを顕微鏡で覗く人間の構図です。
〈神〉とは名ばかりの、ただの動物です。

しかし、本作は違いました。
後は読んでのお楽しみです。


まあ、異世界なのにヒンドゥーやヨーガから名前が付けられてるのが、ある意味伏線でしょうか。