野球場で流れる応援歌や選手の登場曲。
ただその歴史はそれほど古いものではなく、1970年(昭和45)、ナンシー・ファウストというオルガン奏者による生演奏が最初らしいですね。
ナンシー・ファウスト(Nancy Faust)
シカゴ・ホワイトソックスの試合で、初めて選手別の登場曲や出塁テーマを演奏したそうです。
MLBの歴史は今から約120年前と言いますから、音楽を伴った応援はとても斬新だったんじゃないでしょうか。
それ以降、野球の試合に定着したであろうオルガンの音色……
MLBの中継を観ていると、良くこのメロディが流れますよね。
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Charge(fanfare)
これは「Charge(=突撃)」というタイトルの曲で、1946年(昭和21)、南カリフォルニア大学の学生トミー・ウォーカーが作曲したものだそうです。
トミー・ウォーカー(Tommy Walker)
1922年(大正11)~1986年(昭和61)
「Charge」は彼が大学3年生の時、母校のアメフト部のために作曲したと言います。
野球応援にオルガンが採用された1970年代から、MLBでも広く親しまれるようになりました。
またMLBでは、こんなトランペット曲も流れると思います。
Charge (bugle call)
この曲の歴史はさらに古く、アメリカ南北戦争(1861年~1865年)の時、歩兵部隊が使用したラッパが起源らしいです。
(直訳すると「突撃ラッパ」)
南北戦争のラッパを収録したCDブックレット
(出版:Mel Bay Pubns)
さて、日本においては遅れて1977年(昭和52)頃、MLB形式のオルガン演奏が取り入れられたようです。
鳴り物やヤジによる応援は戦前にも見受けられたそうですが、トランペットに合わせて手拍子や声出しを行う現在の応援スタイルもこの頃に始まったと言います。
各球団の応援でよく聴くのは、この曲じゃないでしょうか。
速歩行進 (其ノ一)/三三七拍子
三三七拍子にメロディがついたものですね。
メロディは旧陸軍の軍隊ラッパ「速歩行進 (其ノ一)」が原曲で、イニングの開始時や出塁テーマに多くの球団で採用されています。
(靖國偕行文庫)
この軍隊ラッパは、アメリカの突撃ラッパにならったものなのでしょう。
まあ、1軍・2軍、ド軍、巨人軍という呼び名がある等、野球と軍隊は妙に親密な関係です。
野球は戦いである以上、メロディも勇ましい軍隊調の曲と食い合わせが良いのでしょうね。
ついでに三三七拍子の歴史というのも、思うほど古いものではなく、1921年(大正10年)、明治大学・初代応援団長の相馬基が考案したと言います。
相馬基(そうま もとい)
1896年(明治29)~1981年(昭和56)
三三七拍子は六大学野球を通じて有名になり、スポーツ応援に広く利用されるようになりました。
当初は「勝った方がいい(三)、勝った方がいい(三) 、勝った方がいいったら、勝った方がいい(七)」という歌詞があったそうです。
(相馬くんのバンカラな声が目に浮かびます^^)
では最後に
敵チーム選手がアウトになった時に流れる「アウトコール」のメロディ。
これは「ひげ剃りとカット25セント(Shave and a Haircut, Two Bits)」という曲で、野球なんか全然見ない人でもお馴染みのフレーズじゃないでしょうか。
ひげ剃りとカット25セント
(Shave and a Haircut, Two Bits)
現在もさまざまな場面で使われるメロディですが、最も古く確認できるのは1899年(明治32)、米国のミンストレル・ショー(黒人差別的な演劇)での使用らしいです。
(その時の曲名は「At a Darktown Cakewalk」(作曲:Charles Hale(チャールズ・ヘイル))
ミンストレル・ショーとは、白人が顔を黒く塗り、無知で滑稽な南部黒人を面白おかしく演じる大衆演芸ですね。
日本の野球においては、相手チームを侮辱する台詞を伴う(「くたばれ読売」等)ことが問題視され、アウトコールは現在ほぼ禁止になっているそうです。
侮辱的な替え歌に注意喚起する動画
(阪神タイガース/2024年)
と、なにやら軍隊・差別・侮辱だの、野球の暗部を書いてしまった気もしますが…( ̄▽ ̄)ゞ
今や音楽が野球観戦にすっかり溶け込んでいる事、日本がアメリカ野球に大きな影響を受けていることが分かりますよね。
でもまあ「くたばれ」はやめましょうよ。
それより相馬くんの「勝ったほうがいい」を復活させたいです(笑)。