【サッカーのスプリントは奥が深い】
サッカーは走るスポーツ。
カテゴリーやポジションにより変わりますが、90分間ゲームなら一試合で大雑把に10km前後走ります。スプリント回数は多い選手で30〜40回あります。
※スプリントとは日本サッカーの基準では24km/h以上の速さで走ること。主に20〜30m走。
こんなに走るので、当然走りはサッカーのパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
まず、この動画をご覧ください。見て欲しいのは動画の6〜10秒のところです。
〈横浜Fマリノスvsヴィッセル神戸。Fマリノスマルコス・ジュニオール選手のうまい落としから、Fマリノス扇原選手がスピードに乗ったままボールをワンタッチでヴィッセルのDFを置き去りにしてラストパスを送った場面。ヴィッセル神戸菊地選手は足を出すもわずか足一歩分だけ及ばす。この一歩分がゴールの有無を分けたシーンでもあります。ボールを落とした刹那、扇原選手と菊地選手のボールまでの距離はお互いにほぼ同じ1〜2m。ショートカウンターでスピードに乗って真っ直ぐ走る扇原選手が有利。そして、(動画には映ってませんが)ボールの奪われ方が悪かったので準備する間がほとんどなかった菊地選手はターンの必要もありどうしても不利。そんな中、菊地選手は他の要素を使い先にボールに触りたかったものの及ばすという場面でした。広いピッチの中、わずかなその幅で勝敗が決まるという見方もでき、この「超々短距離走」でも勝てる走り(ステップ)が時には必要となります。サッカーとは、ピッチが広いのであまりそう感じさせませんが、実に細かい局面で戦っているスポーツです〉
サッカーの走りには、以下の前提条件があります。
・360°の全方向に走る必要がある。つまりターン+走りとなることが多い
・色々な目標物(ボール、人、スペース)に向かって走る必要がある
・不利な体勢や状況から走り出す場面も多い
・走りを相手に邪魔される場面も多い
・オフェンス時の走る最終目的はゴールにボールを入れること
・ディフェンス時の走る最終目的は相手からボールを奪うこと
サッカーの多くの場面では、上記の要素を考えなければならないので陸上の短距離走とは似ているフェイズもありながらも内包する要素が大きく異なります。
また、現代サッカーでは、数m〜20mほどのショートスプリントを頻回にできる能力が求められますよね。なにしろ走る能力はかなり重要。
今回は、その中でも上の動画のような「1m超々ショートスプリント」でサッカー選手の走りを考えます。(1mでスプリントと言えるかはさておいて。。。)
この動画の1m走は、上記のサッカーの走りの特徴をいくつか表しています。
この局面で、菊地選手は走りからストップし両足がほぼ揃ったフォームから右100°〜110°の角度へターン(ステップ)しています。
反対に、扇原選手は前向きに走る陸上短距離走にも似た走り(厳密には違いはある)となっていますが、菊地選手を上手くいなしてスピードが落ちないように身体を使っています。また、加速後のラストパスのイメージもおそらく走り出した時点であったと思うので、まさにゴールにボールを入れる為の走りです。
今回、注目するのはこの時の菊地選手です。この時菊池選手の1m走の歩数は足の踏み替えを入れて二歩です。
菊地選手にとって、サッカーの狭いエリアで勝つための重要な要素である
「素早い方向転換(ターン)」と「高い加速力」が同時に求められる場面でした。
それを後手に回ったこのシーンで行う。。。かなりシビアな要求です。
しかし、それでもここで相手を止めたい!じゃあこの場面における1m走に勝つにはどうすれば良いか?
ということになります。
この場面では「ターンしながら加速すること」が求められるわけですが、1つ間違いなく言えるのは「素早いターン」を構成する運動要素は筋力ではありません。
それは自由度の高い体幹が1つの条件となります。
そして「高い加速力」を構成する運動要素の方に筋力が入ってくると考えられます。筋力以外にも、反射や走るスキルなども必要です。
トレーニングを考える時、そこをちゃんと区分けして考えないとなりません。
ただ、上の動画ではそれを同時に求められた訳です。なので、かなり高いレベルの身体のコントロールが求められます。
ちなみに、ここで言う体幹とは、主に脊柱、骨盤、大腿骨の部分です。副次的に鎖骨、肩甲骨、胸骨、肋骨が大切になります。
結局ほぼ全部です。。。それらが分節的に動く自由度の高さが必要となります。
なので、以前のブログにも書きましたが、やはり固める系の体幹トレはそれだけだと、選手のフィジカル面でのポテンシャルの上限が高まりにくいです。
一般的に、筋トレが不足していた選手がよくあるるプランク系やクランチのような体幹トレーニングを始めれば、それだけでも最初のうちはパフォーマンスの改善は感じるでしょう。
しかし、そのような体の強さを作るだけの要素ではパフォーマンスの上限は高まりきらない、まだまだ伸び代がある、ということです。
アジリティや初速、加速力の部分で悩んでいる選手は、このことも頭の片隅に置いておいても良いと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
追伸
以前、選手からアジリティドリルをやってて、マーカーまで全力ダッシュからの180°ターンでまたダッシュする時、必ず身体が大回りしてしまって上手く加速できないし、無理に加速しようとすると足が滑ってしまう。どうすれば良いですか?と相談されたことがあります。
この選手は真面目な選手で、自主トレで欠かさず体幹トレをやっていました。ただ、様子を見てるとその内容は筋肉を収縮させて固定力を高めるタイプのものばかりで内容のバランスが非常に良くなかったです。
その結果、筋力はついたけど体幹が1つのボックスのように固まり、分節的な細かい動きができなくなったため、180°ターンで身体を割るようなキレを出せなくなったのが原因となってしまっていました。
方個性がズレると、トレーニングをしても成果が出ないことがあります。
隠れ家トレーニングn
〒214-0034 神奈川県川崎市多摩区三田1-28-2ライブリー三田205
tel:070-4417-7897
HP:ynls0.crayonsite.net