【膝は繊細な関節】


この今回の内容は、特に趣味でスポーツをやっている社会人の方にお伝えしたい内容です。


それは、趣味でスポーツや運動をやっている社会人の膝の故障率があまりにも高いと思うからです。


現代社会のスポーツは相当多様化してますが、趣味の範囲では、ウォーキング、ランニング、ダンス、水泳、登山、筋トレ、ヨガ、ピラティス、卓球、テニス、バドミントン、ママさんバレーなどをやっている方が多いと思います。


アクティブにスポーツをすることは、健康的だしとても素晴らしいことです。


しかし、そんな中、膝に痛みがくることは多く、時には水が溜まって正常歩行ができないくらい痛い。。。でも練習やレッスンは休みたくない。。。試合も近いし困った。。。皆んなと約束しているのに困った。。。という方はたくさんいらっしゃいます。


スポーツがあるから仕事も家事も頑張れる訳だし、仲間と集まるのが楽しいし、誰だって休みたくないですよね。


でも、トレーナー目線からすると

「お気持ちは分かりますが、それだけ膝を痛めていたら、やることしっかりやらないと休まずやるのは難しいですよ。。。」

と感じる場面は数多くあります。


スポーツをやっていれば、誰にでも急性外傷や慢性障害に見舞われてしまう可能性がありますが、予防のためにできることは無限にあると知って欲しいです。


 膝を痛めている真っ最中の方は治すために。
過去痛めた経験がある方は再発予防のために。
まだ痛めたことがなくても今後の予防のために。


今回は、スポーツ障害でも非常に多い膝に関して、痛めないためにその無限にできることの中の1つをお伝えしますので、頭の中を整理していきましょう。



そもそも、なぜ膝の痛みを抱えている選手が多いのか?を紐解くために、膝の構造や特徴の知識を多少持っておいて良いかもしれません。


下記の①〜⑦はとても長いので面倒な場合読み飛ばしてもらうか、青い文字の下線部だけチェックしてみてください。
※膝のもっと詳しい情報を知りたい場合は他サイトでお調べください。



〈膝は構造的に弱い!その7つの特徴〉

①膝の動きは直線的
膝はももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)から構成され(大腿脛骨関節)、わずかな回旋はあるものの、ほぼ真っ直ぐにしか曲げ伸ばしできない。これはドアの蝶番のように2Dの動きになるので、膝は構造的に横方向や捻じれ(外反、内反、外旋、内旋)が加わった3Dの力に弱い。つまり、膝は苦手な方向や動きが多い関節である。


②滑車に頼らなければ成立しない
膝にはお皿(膝蓋骨)が大腿骨と合わさるように配置されており(大腿膝蓋関節)、膝の曲げ伸ばしの際、膝蓋骨が大腿骨上の決まったレール上を走るように設計されている。その安定があることで膝蓋骨は滑車の役割を果たし、大腿骨と脛骨の正常な関節運動に寄与している。ゆえに、膝蓋骨の配置や向きの悪さ、動きの悪さ(マルアライメントとトラッキング不全)があると正常なレールから脱線することに繋がり膝に悪影響を及ぼす。それは多くの場合、本人の気づかないうちに悪くなり始めていることが多い。膝の違和感とは、動きのレールを外れ始めているサインかもしれない。


③膝は細長い2本の棒が縦に並んでいるだけ
膝は細長い大腿骨と脛骨が縦に二本並んでいることで構成される関節。これは明らかに構造的に弱いのに体重が乗っかってくる場所にある。そのため、筋肉以外にもクッションや摩擦を減らす組織(関節軟骨、半月板、膝蓋下脂肪体など)と、骨と骨がズレないようにバンド(前十字靭帯などの各靭帯)がサポートしている。それらをまとめて包む袋(関節包)により、さらなる安定性を実現している。ゆえに、何かの理由でこれらが傷ついたりすると、曲げ伸ばしの度に不安定さが出たり、膝の傷口への負荷を回避しにくい。それは膝が治りにくい理由の1つとなる。
※広い意味では、腓骨を含めて3本で安定性を作っている


④膝には潤滑油が大切だがもろ刃のつるぎ
関節包の中は滑液(かつえき)という液体で満たされ潤滑油の役割を果たす。ちなみに、滑液にヒアルロン酸がはいっていて、温まるほど滑らかになる。この滑液は関節包の内側に張り付いている膜(滑膜)から産出される。「膝に水が溜まる」という現象は、関節包内の組織が傷つき、その炎症がきっかけとなり増殖した滑膜細胞が発痛物質を含んだ滑液を過剰生産するもの。そうすると、袋の中の圧力(関節内圧)の上昇と発痛物質などが痛みの発生機序となる。特徴は痛みの部位が移動する場合があること。その程度にもよるが、水が溜まって間もない頃は、マッサージや電気治療、筋力アップや柔軟性アップが即効性を持って解決に繋がるものでないことが多く、膝に水が溜まった場合、一般的には運動制限をかけられる。しかし、全く打つ手がない訳ではなく、急性期でも痛みを寛解する方法はある。
※上記の滑液の過剰生産のきっかけは、慢性痛のパターンであり、急性外傷は出血で水が溜まることがある。


⑤足首と股関節より立場の弱い関節
膝は股関節も足関節の中間に配置し、膝周りの筋肉は細長いもの(ニ関節筋)が多い。上は骨盤・股関節から伸びてくるもの、下は足首の方まで伸びているものがある。ゆえに、膝は股関節や足首の動きが悪い場合、その影響を受けやすい。スクワットで股関節と足首が上手く使えない場合が良い例で、ももの前(大腿四頭筋)ばかりを使うしゃがみ動作は圧縮力や剪断力が高くなり膝への負担が大きくなる。これは、本来股関節と足関節は「動き」を作り(モビリティ)、膝関節は「安定」を作る(スタビリティ)役割があるのが逆転してしまっている状態である。しかし、関節の動きを評価するとその逆転現象が起こり、機能低下してしまっている人が非常に多い。こうなってしまうと、膝が痛くない人も膝が痛くなる確率が高くなる。それと、O脚やX脚、またニーイントゥアウトは膝の問題ではなく、股関節や足首の機能低下の結果である。特に女性は、ヒールの高い靴や夏に履くサンダルタイプの靴が足首や足の指の機能低下の原因になっていることも多い。膝の障害予防のためには、この⑤が一番大切な視点である。


⑥膝の筋肉は入りくんでいる
膝周りに付着する筋肉は、一箇所に集中したり交差するような走行を成すことと、硬い腱性の部分を増やすことで膝周りを補強する作りになっている。逆に言うと、そこに負荷が集中しやすいから、そこが頑丈になるように進化してきたと言えるかもしれない。膝の内側(鵞足部)や膝の裏側(膝窩部)、膝の前側(膝蓋骨周辺)などがそれにあたり、過負荷による炎症を起こしやすい。膝の外側(外側の顆部付近)も炎症は起こしやすい。また、元々そういう負荷が集中しやすい部位なため、痛みだした頃にはすでにかなりのダメージを負っていることも多く、正常化するのにある程度の時間を要する。ゆえに、少なくとも違和感を感じているくらいの時に手を打った方が絶対に良い。


⑦伸びきらない膝はダメージが増える
膝蓋大腿関節の動きとしては、スベリとコロガリ運動(副運動)があり、screw-home-movement(スクリューホームムーブメント)と言われる膝特有の関節運動がある。その動きは円滑な関節運動のためには必須であり、軟骨や靭帯などの様々な構成体がそれを成し遂げるために寄与している。ゆえに、それら構成体のどこかに緩みや硬さ、余計な筋肉の緊張が出ると、これらの関節運動は意外と簡単に狂い、膝が伸びきらなくなる。荷重とは無縁の肘は伸びきらなくても痛くならないが、荷重のかかる膝は伸びきらないと痛くなりやすい。そして、それが続くと変形性膝関節症の一因となる。この狂いを治療で解決した後、それを長持ちさせるにはそれを目的とした運動以外に方法はないと考えて良い。
※伸びきりすぎている膝(反張膝)は別の意味で注意が必要です。




まだまだ挙げようと思えば挙げられるくらい、膝は痛みが発生しやすい理由はたくさんあります。構造的理由以外にも大切なことがありますがそれはまたの機会に。


こんなに長々と書いたのも、意外と壊れやすい理由が多いんですよ、とお伝えしたいからです。長すぎるし専門用語はあるし逆に伝わりにくかったかもしれませんが^_^;


膝が壊れやすいのは、歩くたびに体重が乗っかってくることも大きな理由です。


なので、病院でドクターに

「体重を減らしなさい」(→負荷を減らすため)
「筋肉をつけなさい」(→支える力を養うため)

はたいてい言われます。

それと「加齢ですね」とだけ言われて怒っている方も多いですよね。
※加齢と共に組織は固くなる特性があり、それも痛みの要因であることは否定しません。だからこそ予防が必要な訳ですが、間違いなく言えるのは加齢だけが痛くなる理由ではありません。


しかし、減量や筋肉増強やストレッチだけを行なうのではなく、膝を良くするためには他にも考えられることはたくさんあります。






〈膝の健康度合を調べる簡単セルフチェック方法。脚を投げ出し座って(動画では寝てもらい他の人がチェックしています。それと、柔軟性がない人は座布団に座ると良いです)膝裏とベッドの隙間はどうか?をまずチェック。不健康な膝は伸びきりません。次に膝蓋骨の位置が左右で違っていないか?をチェック。不健康な膝蓋骨は股関節方向に引き上がっていることが多いです。次に、膝蓋骨が内側に動いてくれるか?をチェック。不健康な膝蓋骨は外側に固定されがちになり内側に移動しにくくなりがちです。次に膝蓋骨の外側をめくれるか?をチェック。不健康な膝蓋骨はその外側をめくりあげようとしても張り付いたように固まって指を引っ掛けるのもやりづらいです。慣れないとその良し悪しが分かりにくいですが、痛くない側の膝と比較すると良いと思います。動きの量とそのスムースさがどうか?チェックしてみてください。膝蓋骨の上下の動きもチェックしても良いです。もちろんまだまだチェックすべき点はありますが、これだけでも膝の健康具合はある程度測れます。分かりづらい動画ですみません〉




全てをここでは述べきれませんが、その1つは「動きの質を変えること」です。


負荷がかかりすぎているなら負荷がかからないように動こう!ということですね。


特に、テニス、バドミントン、ママさんバレーなどの対人スポーツをやっている方には練習や試合の時、ストップ動作と減速動作は上手くできていますか?と問いたいです。これは、ダンスのステップや登山の下り道でも言えることです。


例えば、朝寝坊して全速力で駅に走って向かっている時、曲がり角で90°方向転換するとします。


想像して欲しいのですが、曲がる前に必ず減速しますよね?

その減速動作が不十分のまま方向転換するとどうなりますか?

車がカーブで減速不十分だったら横転するかもしれません。


人間の場合、減速動作が不十分のまま方向転換しようとするとメチャクチャ踏ん張って体の一部に負荷をかけ関節を本来いらぬ方向に動かしながら、さらに体勢を崩しながらでも強引に方向転換しようとします。それでは膝には悪いし、方向転換は遅くなるし良いことはありません。あるいは転倒したり滑ったりしてしまうかもしれません。


その強引な方向転換のため、脆弱な構成体である膝関節に、過剰な横方向や捻れのメカニカルストレスが生じることが容易に想像できます。もちろん他の関節にとっても良くないです。


どんなスポーツでも、方向転換に限らずですが、不十分な減速動作や、中途半端なストップ動作がクセになっている選手は、膝に力学的負荷が頻繁にかかるため、そのうち膝を壊す可能性が高いと言えます。


つまり、スポーツにおいて、質の良い減速動作やストップ動作は、膝を痛めないことに一役買うということです。


ダッシュやステップ後はしっかり減速、そしてストップ。
ジャンプの着地後は衝撃を吸収するような減速、そしてストップ。


しっかり減速、そしてストップした後に、方向転換と再加速、または次の動きにスムーズに移行できるようになれると良いです。
※伸張反射というメカニズムをめいっぱい利用する場面では若干考察が違ってきますし、ピタっと止まれても膝にはズレの力が生じますので、もちろんピタっと止まるその中身も大切です。



「膝は意外と脆弱な関節なので、そこに余分な負荷をかけると壊れやすい。それを防ぐためにしっかり止まろう。」


このように頭の中を整理し、ご自分のされているスポーツ動作に当てはめてみてください。


ご自分の普段のプレーを思い返すとどうでしょうか?


上手く減速、そしてストップできていそうですか?


競技により動きや状況は違いますが、特に対人スポーツはリアクションが多くなるので大切な視点となります。


長々と書きましたが、膝のリハビリの観点において、実はこの話は基本中の基本です。

しかし、リハビリを受けた経験がある人でもこの考え方がスポーツ動作とリンクできていない、または忘れてしまっている。それか最初から認識できていない、そこまで気を配れていない。そのような選手がたくさん見受けられます。それでは痛めて当然です。



これは膝を痛めないための思考の整理がまだ足りないということになるので、膝を治すにはこのエクササイズが良い、あれが良い、これが良い、とネット情報などに右往左往させられ、手段ばかりを追ってしまい、結局なんにもならない、という状況に陥ってしまいます。


それでは良くないですよね。


なので、時にはちゃんと専門家にみてもらうことも必要です。今回の内容だけで十分という訳でもないですしね。


とにかく、膝の痛みの再発予防や、治しながらスポーツをやるため、健やかなスポーツライフを送るためには、この精度を高めることも有効な一手と知ってください。


それには、重心のズレを髪の毛一本分くらいの細やかさで修正するイメージも必要かもしれません。これが髪の毛ではなく綿棒の太さだったらまだ繊細さが不十分かもしれませんし、ボールペンの太さだったら問題外かもしれません。


慢性痛が長い人や再発を繰り返す人ほど、そのくらい繊細に見直してみてください。数字で良し悪しが分かる訳ではなく、感性の世界になってきます。ゆえに、選手自身の内観力がとても重要です。


また、下半身のみに頼った減速動作とストップではなく上半身も利用できた方が理想です。この話もまたの機会に。


これらの発想はスポーツパフォーマンスアップにも確実にプラスになります。




今回は、膝の痛みを取るための考え方として

治療をする
減量をする
筋力をつける
柔軟性をつける

という観点ではなく


「体を動かす質」の観点から話をしました。

その中でも

ストップと減速動作に着目した形です。



最後までお読みいただきありがとうございました。




追伸




膝のスポーツ障害で代表的なのは

前十字靭帯や内側側副靱帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷、オスグッド病、膝蓋靭帯炎をはじめとするアンテリオールニーペイン、鵞足炎、腸脛靭帯炎

などになります。これらのいずれの診断が出たとしても、今回の減速動作とストップの質が大事というのは同じです。
※オスグッドは成長痛でもありますのでちょっと違うところもありますが。


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