【スクワットは良い塩梅が大事】


筋トレでスクワットをやることは多いと思います。そして、色々な目的で行われます。


筋トレ好きな人たちには、ベンチプレスとデッドリフトと共に「ビッグ3」と呼ばれ、分厚い太ももやお尻の筋肉を作るのにも人気だし、

怪我や術後のリハビリでも処方されるし、

ダイエットや体引き締めメニューでも行われるし、

スポーツの筋力強化としても取り入れられます。


筋トレがあまり好きではない人でも、スクワットと聞けば「あ〜あれか〜」とイメージできるくらい世の中に浸透しているエクササイズ。


今回は、そんな大人気のエクササイズのスクワットを考えます。

その中でも「フォーム」についてです。


筋トレでは「フォームが大事」や「正しいフォームでやりましょう」とか、よく言われますよね。


「正しい」は前提条件によって変わるというのは常にある訳ですが、それは置いておいて、スクワットの一般的なティーチング(声かけ)を挙げていきます。


〈構え〉
①足は肩幅、または腰幅くらいで立つ
②つま先はやや外側に向ける
③手は腰に添える、または胸の前で合わせる

〈動作〉
④腿は水平くらいまでしゃがむ。キツイ場合は無理ない程度にしゃがむ
⑤そこから元に戻る

〈注意点〉
⑦膝を前に出さない
⑧内股、がに股にならない
⑨猫背にならない
⑩踵重心やつま先重心にならない
※⑩に関しては、追伸①をお読みください。


などが言われます

他にも、

椅子に座るイメージで。
股関節から動かすイメージで。
お尻を後ろに引いて。
膝とつま先は同じ方向に。
胸を張って。
腿を意識して。
お尻を意識して。


など、たくさんあります。



この中の

⑦膝を前に出さない

を頼りに深掘りしていきます。

改めてスクワットのフォームのポイントをおさえてください。


「膝を前に出さないように」は、ほとんどのトレーナーが行なうティーチングですし、言われたことがある人も多いと思います。


しかし、その意識が強くなりすぎてスクワットが上手くいかないことがあります。


スクワットでしゃがむ時、膝は前に移動しすぎても良くないし、移動しなさすぎても良くないです。


そもそも、なんで膝をつま先より前に出さない方が良いか?というと、


第一に、関節(特に膝)余計な負担がかかるため
第二に、使う筋肉が偏る可能性が高いため

です。


つまり、膝関節を痛めず高い安全性と効率性のためと言えるので、これはおさえておきたいポイントです。


でも、だからといって、膝が後ろすぎると上手くしゃがめません。
そうなると重心が後ろに移動し、やはり膝に負担がかかります。それでもかまわずしゃがんでいくと、代償的に腰が反りぎみになったり、足の指が浮いてきたりして、これまた安全性と効率性が担保できなくなります。


膝が前に出ると膝を痛めやすい。
膝が後ろに残りすぎると腰を痛めやすい。


と覚えると良いと思います。
※実際は、高負荷の重量をかけない限りそうそう腰椎は痛めることはありません。しかし、腰椎が無事でも、腰の筋肉の過緊張が起こり、それが腰痛の温床になることはあります。また、代償運動の出方は個人差があるので、必ずしも上記のようになるとは限りません。しかし、変なスクワットをしていて膝と腰が大丈夫な場合、その代わりに別のどこかにいらぬ負担がかかっていると思った方が良いです。しかし、これまた例外があり、高い身体意識がある人は、パッと見で変なスクワットでも問題がなかったりします。人体はそういうところもあります。



まとめると、


「スクワットでしゃがんだ時、膝が前に行きすぎず、後ろに残りすぎず、ちょうど良い塩梅に移動させましょう。」

ということです。



これを別の言い方をすると、
「スクワットでしゃがんだ時、脛を適切な角度、斜めに倒しましょう。」と言えます。スクワットでしゃがんだ時、つま先(親指か人差し指)と膝の二点を結んだ線が垂直になるくらいが目安です。やりながら、自分の目で見下ろすと確認できると思います。


そして、その脛の角度と上半身(背骨)が平行になるイメージです。


これらの条件を満たした時には、お尻もしっかりと落とせる見た目が美しいスクワットになっていると思います。また、臀部やハムストリングスなどの効くべき部位に効いてきます。


スクワットのフォームは、このようなところを気にしてみてください。









〈スクワット集。動画の皆さんは、サッカー、野球、ラグビー、バドミントン、スキー、剣道、バレエ、筋トレ愛好家など、様々なスポーツや運動をやっています。年代も小、中、高、大学生、社会人、ご年配の方と様々です。スポーツ実践者でも多くの人に代償動作が出ています。逆に、ご年配の方のスクワットの方が良かったりします。この動画のほとんどが、基本フォームの説明のみで細かい指示は特にせずにスクワットをやってもらっているので、よりナチュラルな癖が出現しています。スポーツ選手の方が上手くできていないこともあることから、スクワット動作は筋力のみが反映される訳ではないことが分かります。むしろ、スポーツ選手の方が悪い運動連鎖(キネティック・チェーン)の癖がついていることも多く、そこは明らかな修正点であり伸び代です。この後の、追伸①で述べる内容を読んでいただければ、安全で効率的なスクワットを実践するのはかなり難度が高いことを感じられると思います。しかし、スクワットそのものが目的ではなく、あくまで目標を達成するための一手段にすぎないことも覚えておかないといけません。しかも、何だかんだスクワットは運動の基礎にすぎないので、これを上手くできないのは。。。。。という感じです〉





ここからの話は、少し専門色が高くなります。


スクワットのように、床に足裏全体をベッタリ固定した状態や、手が固定された状態で行なわれる運動をクローズド・キネティック・チェーン(CKC)と言います。
反対に、足や手が固定されていない状態で行なう運動をオープン・キネティック・チェーンと言います。
※CKCとは、「遠位セグメントが自由運動を固定された関節の組み合わせ」と定義されます。その特徴は、一つのエクササイズで一斉に多関節、多筋肉を協調的に働かせることです。そのため、少ない関節や筋肉が関与するだけのOKCより日常生活動作やスポーツ動作に近い特性があり、実動作に直結しやすい運動です。そのため、リハビリやスポーツのためのトレーニングでは、OKCよりCKCの方が重要度が高いと言えます。



CKCエクササイズであるスクワットは、足が固定されているという前提があります。


なので、関節が適切に動いているか?を評価する時、スクワットでは「足を基準」として他の関節の動きを考察する必要があります。足は固定されて動かないので基準になる訳です。
※足部には28個の骨が連なっており、関節もその数だけあります。実際は、スクワット中に固定されているように見える足ですが、それらの関節が少しずつ動いています。そのため、その考察なしに関節運動の評価はできません。スクワット中のアーチの増減に着目すると、こんなところでも関節が動いているんだなと分かると思います。


足関節の動きは、膝関節、股関節を始め、その他の関節の連鎖運動に大きく影響します。下から上(上行性)に影響するのです。
※下行性の連鎖も考えなければいけませんが、この場では分かりやすく、上行性だけ考えます。


「足を基準に考える」

というのがポイントです。

その基準である足の関節が適切に動かないと、その上にある膝関節に本来起こらない捻れ運動が生じます。それでは膝を痛めます。
※多くの場合、女性では脛が内側に傾斜(内傾)してしまう現象が起こります。その理由の一つは、足首の純粋な足首を反る動作(背屈)ができないからです。単純に足首を反る動作ですらごまかし運動が入っていることが多いのです。その結果、さらなる代償運動として、脛を内傾させます。そうすると、膝に負荷がかかりそのようなスクワットをやっていると膝が痛くなります。また、別の理由として多いのがお尻周りやお腹周りの筋力不足です。お尻周りの筋力不足で大腿骨を適切な位置に保つ能力がないため、ももを内側に傾斜することで楽に体を支えようとします。これは内股歩行になっている女性のX脚になっている正体の一つです。では、なぜ足関節の純粋な背屈ができなくなっている人が多いのか?と疑問が湧きます。その原因は様々ですが、足首の捻挫の経験があることや、足の指のグーやパー、そして指の反りがちゃんと出来ず、それが足首に影響していることが多いです。脛が外側に傾斜するパターンももちろんあります。


足首の純粋な背屈の良し悪しは大事で、スクワットにはそれが影響するということです。

特にどこも痛めている訳ではないし、普段運動もたくさんしている方がスクワットを上手くできない場合、足首の可動域の少なさが原因のことも非常に多いです。しっかりした考察の元、修正する必要があります。



最後までお読みいただきありがとうございました。




追伸①


先程、

⑩踵重心やつま先重心にならない、

とあえて書きました。特に違和感を覚えた人はいないのではないでしょうか?。しかし、これは間違った表現です。正解に近い表現は、「踵荷重」「つま先荷重」です。

重心と荷重という用語がごっちゃ混ぜになっている文章を目にしますが、より正確に理解したい場合、これは良くないです。


まず、重心とは何か?

重心とは、地球上においては「質量の中心」と同義で解釈して良いと言えます。
(厳密には違います)


人体の質量の中心は、足裏ではなく第2仙椎のやや前方(骨盤の中)です。



次に、荷重とは何か?

荷重とは、重力下で物体の接触面に発生する力のことです。

スクワットの場合、地面を圧迫する力や、足という物体に働く反発する力(床反力)ということになります。


それは、地球から足裏に押し返される力が加わっているということです。


それがあるから、スクワットでしゃがんだ状態から立ちあがれる訳です。フワフワでポヨポヨした柔らかいクッションの上でスクワットをしても、その押し返される力が発生しないので立ち上がれなくなります。
荷重、反力の方向がバラバラになるからです。


さらに言うと「つま先荷重」「踵荷重」でもなく、「足圧中心(床反力作用点 COP)がつま先「足圧中心が踵」と表現するのがもっと正確です。(ちなみに、COPがつま先や踵なのはかなり良くないことです。)足圧中心とは、「足裏全体にかかる反力の中心」のこと。「足裏全体にかかる反力の中心」とは、足裏の各部位に生じる反力を合成させ1つにしたもの(床反力ベクトル)。スクワットの場合、右足と左足のそれぞれに床反力ベクトルが生じるので、それを左右均一にし、その二つを合わせた作用点を体の中心ラインと合わさっている方が均衡した質の高いスクワットと言えます。そして、COPを脛骨直下にコントロールし、スクワット動作の全フェイズで床反力ベクトルを出来る限りを変えないイメージで行なうと、関節に負担のかからない良いスクワットと言えます。
※COPは、必ずしも接触面にあるとは限りません。なので、足裏の場合、土踏まずの空間内にある場合があります。


これは、よく言う「軸をぶらさない」と同じ解釈で良いと思います。


 それゆえ、


スクワットをやる目的によって、あえて支持基底面内でCOPを移動したり、床反力ベクトルを変えながらスクワットを行なうのか?また変える場合その程度は?その範囲は?それとも全く変えないのか?

を考えてスクワットを行なうと、より質の高いスクワットと言えると思います。


どうせやるなら、筋肉をつける以外にも意味を持たせたいところです。


どうでも良い話のようで、ちゃんとした分析には役に立つ知識です。

 


追伸②


中には、そもそもトレーニングとしてスクワットをやる必要はないという考えもあります。

スクワットをやるから色々と問題を起こすんだ。だから、しゃがみ動作はスクワットという認識で行わず、ある目的があって、ただそれに向かってただしゃがむだけ、という感じです。


ピンとこないですよね?


これは、なんとなくは頭では分かっていても実践は難しい身体意識の世界になってきます。


スクワットだけで、人体や運動について考えること、感じることは無限にあるように思えます。


底が全く見えないくらい奥深いですね。



隠れ家トレーニングn

214-0034 神奈川県川崎市多摩区三田1-28-2ライブリー三田205

tel:070-4417-7897

HP:ynls0.crayonsite.net