星新一の自選作品集「ボッコちゃん」の中にそれはあった。
タイトルを忘れてしまい調べてみたところ、それは「おーい でてこーい」という作品で、星新一の初期のころの代表作とされるらしい。初出は1958年となっている。
星新一のショートショート集は何冊も読んだけど、この物語だけが心に残り続けた。

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。
表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
─BOOKデータベースより─
この小説は、ある日突然に現れた直径一メートルぐらいの穴をめぐって展開する物語。
─要約─
台風一過のある晴れた日。ある村のはずれに小さく深い穴が見つかった。若者が「おーい でてこーい」と穴に向かって叫んだが、底からは何の反響もなかった。
彼は勢い良く小石を投げ込んだがやはり反響はなかった。その穴はとてつもなく深いようで、学者が調べてもその深さのほどは分からなかった。困った学者が「穴を埋めてしまいなさい」といったところに利権屋が現れた。

「おーい でてこーい」
利権屋は、仲間を使い都会で運動を行った。その結果、穴を原子炉のカスの廃棄場所とすることを官庁に認めさせることに成功し、原子力発電会社は争って契約した。
村人たちは心配したものの、数千年は絶対地上に害は出ない、と説明され、また利益の配分をもらうことで納得した。まもなく都会から村まで立派な道路が作られた。
やがてその穴には原発の廃棄物から、官庁の機密文書から、伝染病の実験に使われた動物の死骸から、あらゆるものが捨てられた。穴はいっぱいになる気配を示さなかった。穴は、捨てたいものは、なんでも飲み込んでくれた。
しかし、そんなある日、建築中の高いビルの上で作業員がひと休みしていたところ、頭の上から「おーい でてこーい」と叫ぶ声を聞いた。
次に小さな石が彼をかすめて落ちていった。しかし彼は、ますます美しくなってゆく都会のスカイラインをぼんやり眺めていたので、それには気が付かなかった。
ショートショートなので、この後の展開はもちろん書かれていないけれど、これで充分でしょう。
この物語、福島の原発事故を受けて話題になっているようです。地震から逃れられない国であり、廃棄のめども立たない放射性廃棄物を生み出すというのに、また原発が稼働します。
海が、この穴の役割を果たしていたころがありました。糞尿や産廃の海洋投棄、有害なものの川への垂れ流し。それはかつて公害を生みました。
「水俣病」「新潟水俣病」「イタイイタイ病」「四日市ぜん息」を始めとする四大公害病以外にも、カネミ油症などがあり、多くの人たちの人生を奪いました。
最近ニュースになっている、子宮頸(けい)がんワクチンを接種した若い女性らが全身の痛みなどを相次いで訴えている問題も深刻です。
人間の作りだしたものにパーフェクトなものはないのですね。
人類はいつになったら賢くなるのでしょう。
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YouTubeでこんなのを見つけました。
「おーい でてこーい」












