人の言葉で、ひどく傷ついた人がいる。
どうしてそうも、完膚なきまでに叩きのめそうとするのか僕にはわからない。
僕は知っている。
その人たちだって打ちのめされたことがあるのを。
のど元過ぎればなんとやらではないけれど、忘れてしまうのだろうか。
それとも、一種の仕返しに近いのだろうか。
言葉は人を刺殺しもすれば、生かしもする。
それを理解せずに人の上に立つのはご法度である。
つい最近入ってきた新人女性がいた。
高校生といわれればそう見えるし、中学生といわれればそう見えるような女性だった。
一生懸命笑おうとしている姿が、微笑ましくもあり、痛々しくも映った。
まるで我が子を見るようであった僕は、この子を可愛がってあげようと思っていた。
その子が今日、欠勤した。携帯電話が鳴っても応答がないらしい。
漏れ聞いたところによると、昨日ひどく叱責を受けたらしい。
出勤してくれれば何とかしたいと思っているのだが、無理かもしれない。
最初に登場した傷ついた人は、おばちゃんだ。
「どうせあたしなんか……」
その言葉を聞いたとたんに僕は振り向いた。
「そんなことないよ!」
「○○さん、世の中色んな人がいる。気にしちゃだめだよ。人は人、我は吾なんだから」
僕は背中を叩き腰を叩き、包むように両肩を叩いた。
「ね」と。
この人、僕が入金に行かなければならない状況だと判断したら、退勤が遅くなるのを覚悟で自ら入金をして、全部終わったからね、と言ってくれる人だ。
なぜそうしてくれるのかは知らないけれど、僕は、ありがとう、助かります。いつもそう声をかけている。なぜなら、退勤後に入金に出かけることもあるからだ。
言葉は、人を生かしも殺しもする。
新規店舗オープンのあおりを受けて人手が少ない。駆り出される人が多いからだ。各店舗の責任者クラスは、みんなどことなくイラついている。とげとげしい。
「何! 何! なに!」
「ああ、すみません○○です」
「今、忙しいんだよ!」
「ああ、すみません」
僕は責任者クラスの人間が持たされている携帯電話を切った。
おばちゃんを傷つけたのはこの人だ。
僕はこの人が不遇だったころをよく知っている。
力になろうとしたことが何度もある。
こんな中、いったい誰が正気を保っているのだろうか。
明日も人手が足りない。
「○○明日は休みか!」シフト表を見た僕は声をかけた。
「ああ、うう~」中国人のその男子がシフト表を見る。
「ああ、うう~」
「16時から22時までなら出ます」
「おおー悪いなあ! 助かるよ! 悪いな○○」
「人がいないの大変だから」
そう、この男子も苦労をしている一人だ。
僕は何度も礼を言って、店を後にした。
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