―ブラザース・ジョンソン―
「ミュージシャンを目指しているのですか?」ギターが目にとまったようだ。
「敬語なんて使わないでください」僕は右手を目の前で振った。
父親ぐらいの年齢の人に敬語を使われるなんて、ひどく恐縮してしまう。
「ああ、そうか、分かった分かった」おじさんはにっこりと笑った。
「セーラー服と機関銃」のポスターに興味を持たれなかったことでほっと胸をなで下ろした。
取り立ててファンとかではないのだけれど、部屋にポスターを貼っているなんて、どこか恥ずかしく思ったから。
ひょっとしておじさんは、薬師丸ひろ子のことなんて知らない可能性もあった。
「音楽で飯が食えたら最高ですけどね。あ、座ってください」
「あ、ありがとう。学生さんでしょ?」コートを脱ぎコタツに座ったおじさんは、クイッとあごを突き出した。
「ええ、一応名の通った大学に通っています」
「そうかあ……バンドでも組んでるの? それともソロ?」
「バンドのベースです。アコースティックじゃなくてこっちが本業なんですよ。学祭はもちろんだけど、時々はライブもやるんですよ」僕はケースに入ったベースを引き寄せた。
「もしかして、フェンダー?」
「そうです! ひょっとしてやってたんですか?」
「下手の横好き程度だけどね」はにかんだように鼻の横を掻いたおじさんの顔は、無性に可愛かった。

僕は愛機のベースをケースから取り出した。
「ブラジョンのチョッパーベースでも聴かせてあげたいけど、ここじゃ無理ですからね」
「うんうん、ブラジョンいいね! ファンキンナウいいよね!」身を乗り出してきた。
「ストンプもいいですよね!」僕はますます嬉しくなった。
「ストンプもいいね!」おじさんは嬉しそうに笑った。
その笑顔のまま、おじさんは雷に打たれたように壁を見た。その目はカッと見開かれた。
それからゆるゆると半開きになった目で、おじさんはこっちを見た。
「薬師丸ひろ子のファンなの?」
「え"……」
ブラジョンが好きなんじゃないの?
セーラー服からおへそを出してるおなごに、寄り道なんてしている暇があるの? ポスターなんか貼っちゃって。
ミュージシャンを目指す君としては、そこんとこどうなの?
え? どうなのよ。
そう責められているような気がして、僕は焦った。
The Brothers Johnson - Stomp!
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