悲しくてやりきれない | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」
岡江久美子さんのコロナ死には胸が痛んだ。とても悲しいけれど、今夜はその話ではない。

そんな流れは感じていたのだけれど、僕は強引に押し切ってきた。
でも今日、遠慮がちにだけれど言われた。

「マスクは売るなって」

上からのお達しだ。
立場的に、僕は所属店舗を移動する遊軍に近い。僕が教えた人が上に上がっていく。だからそれを口にした人間も、僕の教え子だ。だからといって、それをどうにか思うほど子供ではない。責任者にという言葉を何度も断ってきたのだから。

納品される数などたかが知れている。マスクがあって助かったと思う人はほんのわずかだ。
でも、それを売らずにどうするつもりだ。

僕が口にできたのはこの一言だった。
「それ、人として正しくない」

そんな流れを感じていただけに、僕が欠かさず続けていることがある。
ショルダーバッグにマスクを忍ばせること。もちろんバラではなく一袋。
一袋なんてたかが知れている。せいぜい4~5枚、ものによっては7枚ぐらいだろう。

それでも、ひどく困っている人がそばに表れたら譲る気持ちで持ち歩いている。

人の心が荒(すさ)み始めている。
人として正しいこと、人としてやってはいけないこと……恥多き人生を送ってきた僕は、これ以上恥を重ねたくはない、と思い続けている。

己の愚かさに早く気づいてくれればいいと思うが、無理なんだろう。マスクが並ばない理由のひとつは、きっとここにもある。

ひととして、恥ずかしいことだと思う。