人を縛る枠(わく) | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

あんたもう、子供じゃないんだから。

お前ももう、いいかげん大人なんだから。

もう若くはないんだから。

女なんだから。

男なんだから。

子供らしくない。

大人げない。

人は人を枠でくくりたがる。

僕が生まれたのはついこの間だ。宇宙歴にすれば針の先で突(つつ)いた跡にすらならない。

小学校に入りたての下校時だった。我慢しきれずに大量のウンチを漏らして、ズボンのお尻をドナルドダックみたいに膨らませた僕が、母のいる家に走ったのは、ついこの間のことだ。

ウンチを漏らす前、肛門のうずうずを必死で止めながら、はぁはぁと息を切らせながら、小走りの僕は探し続けた。

僕が通う最短の道は、野山に近かった。だからものすごく急ぐ登校時にしか使わなかった。
かといって、人の通らない本当の野山でもなかった。

ここならできるんじゃないか、いや──無理だ。
あそこなら絶対できるんじゃないか。
階段を上がったお墓の奥。そう、お尻を出して野糞だ。

急げ急げ。

でも、目指すそこに辿り着いてみれば、とてもできるもんじゃないとわかる。
幼い子供とはいえ、羞恥心というものがあるから。

人が来たら人生の大問題!

右に行った大きな木の陰。明らかにそっちの方が近い。
ああ、でももうだめだ。

もう少しで家だ。もう少し。
ウンチが出る前に早く早く。

トイレじゃないところでウンチを漏らすなんてありえないことが身に降りかかる前に、早く家に。

しかし、ついに限界を超えた。
ぶびびっと一度出たら、もうどうにも止まらない。(山本リンダぢゃないけど)

出ちゃった。ウンチ出ちゃった……。
泣きそうな僕は、泣く余裕もなくウンチをひりだしながら走り続けた。

庭に出したタライにためたお湯で、かわいそうだったねえ、と僕のお尻を洗ってくれる母の肩に手を乗せて、ふぅっと晴れた空を見上げた日を僕はよく覚えている。



駆け戻った家にいた母を見て、ウンチ出たと告白した僕の贖罪は、母のちょっと驚いたような、けれどそれを上回るような優し気な笑みで救われた。

母にしてみれば大変な事でもなかっただろう。ついこの間まではウンチもおしっこも漏らし放題で、おっぱい大好きな赤ちゃんだったのだから。

あの時僕は、とても幸せだったのだろう。神より偉大な親がいたから。

人生なんて短い。
宇宙の過ごした悠久の時間に比べれば──僕たちの本質が過ごしてきた時間に比べれば──本当に短い。

人間の僕たちは子供のまま死んでいくんだ。
この世で偉そうな顔するなんて、それこそ百万年早いんだ。

ひとは大人になる前に子供を産み、親となる。
みんなみんな初めての体験だ。

頑張れ母親たち。頑張れ父親たち。
結果はきっと、その子たちが示してくれる。

僕のブログは、何を書こうしてているのか自分でも時々わからなくなる時がある。
雰囲気だけでも伝わってくれると嬉しいけど。


「木蘭の涙~acoustic~」スターダスト☆レビュー



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