八日目の蝉 | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」
積読の中から先週選びだしたのが、あまりにも有名なこの小説。何年放置していたのだろう。見てはいないけれど、テレビドラマにも映画にもなった。




逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。
心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。
─ 「BOOK」データベースより─

公園で読み始めてすぐにやめた。ダメだ、僕はもう重い小説など読む気力がない。
そしてBOOKOFFに向かった。

読みたい小説はあった、軽いもの、スポーツもの。
誉田哲也の『武士道シックスティーン』
この作家さんは書くジャンルが広いのに当たりハズレが少ない。警察物の、僕が大好きな姫川玲子シリーズもこの人の手によるものだ。

結果は、なかった。その代わり『武士道エイティーン』が並んでいた。おぉ、知らぬ間に続編が出ていたのか。

諦めて読み始めた。角田光代だし、内容はいいに決まっている。
そして、引き込まれていった。



話はそれるけれど、映画で誘拐犯を演じた永作博美はいい役者だ。少し狂気を含んだ役なら右に出る人はいないだろう。それを認識したのは20年以上も前だと記憶している。

小説に話を戻そう。
会わせてあげたかった。誘拐犯希和子と誘拐された子供薫を。成長した薫と老いたであろう希和子を会わせてあげたかった。

絶対にそうなると疑わずに、残り少ないをページを読み進める僕の目には、先走った涙が浮かんだ。
けれど結果は、港の待合室でお互いに気づくこともなくすれ違ってしまった。

一縷の望みを賭けて、読みかけたまま開いた次のページは終わりだった。
あぁーっ、と声にならない息を吐いた僕は解説を読む気力もなく文庫本を閉じた。

これは一読者の期待にすぎないけれど、どうして会わせてあげなかったのだろう。
僕の頭には、エンディングの二人の言葉と様子さえ、瞬間的に浮かんだというのに。
あのふたりに、イミテーションとはいえ昔のような母娘に戻って欲しかったのに。

そのラストだったら、僕は滂沱の涙を流し、この小説に最高点をつけただろう。
まあ、あくまで個人の感想にすぎないのだけれど。

薫は忘れてしまっていたが、母と信じていた希和子が港で捕まり、連行されてゆく時に叫んだ言葉をふいに思い出すシーンがある。物静かな希和子が上げる初めての叫び声。

「その子はまだ、朝ごはんを食べていません!」

さすが角田光代。この作家さんはやっぱり女だ。これ以上の描写はないだろう。


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