話題の中心となっている人や影響を与える人のことを「台風の目」と呼ぶ。
その場合、意外な人という意味合いが強いのだけれど、今回は本当の台風の目の話。
台風の目と聞いて、小さい頃の僕はこんな想像をした。
空に浮かぶ巨大な目……。
そう、冷たい感じをした目が、空の上から人間を見下ろすのだ。
その目は、いかなる温かみも持たず、何を考えているのかわからないから怖い。
僕はその目をくっきりとイメージできた。その邪悪な存在感に圧倒された。
こんな恐ろしいものが、台風を連れて空に出現するのだ。
僕は台風の目に遭遇したくないと強く思った。イヤダイヤダ、怖い怖いと身震いした。
そしてその願いは叶い続けた。
けれど、ついにそれに会う日が来た。
嵐は止み、見上げた空は抜けるように青かった。
それを認識したのは、「目に入ったか」という父の声だったはずだ。案に相違して目はやさしかった。
しかし、なぜ台風情報が流れないのだ。
夜中だからか?
沖縄方面はどうだったのだろう。
本州上陸はなさそうかな。
自然の力には勝てないことを僕たちは知っている。
被害がありませんように。
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