母も祖母も、僕と美裕の過去の出来事に、熱心に耳を傾けた。
この二人に美裕が見えていないのは、もはや明らかだった。
僕の隣を見る目の焦点は遠く、美裕には合っていないし、その声にも一切反応しない。
改めて、熱心にアルバムに見入る美裕を見る。
少し微笑む横顔が、いつもと違って見える。
それはそうだろう、十数年の時を経て、双子の兄弟だったと初めて知ったのだから。そして、この世の人ではないことに。
「あ……どっちが上なの?」母に尋ねた。
「なにが?」
「いや、美裕と僕、どっちが上なのかなって」
「ああ、美裕がお姉さんよ」
そうか、それはそれで正解のような気がする。
「それで? それで? 美裕は何か言ってるの?」母が身を乗り出し、真剣な目をする。
「さっきから、いろいろしゃべってるんだけど」
「なんて? なんて言ってるの?」
「写真が懐かしいとか、お母さん老けたとか、おばあちゃん相変わらず酒飲みだとか」
祖母がふっと笑う。
「美裕! お母さんに何か話して!」
母の声に、僕は隣を見た。
ちょっと天井を見上げた美裕は、小さく頷いた。
「お墓のピクニック楽しかったよね」
お墓の、ピクニック?
「なにそれ」
「ヒロ君は質問じゃなく、通訳すればいいのよ」
「にべもないなあ……美裕がね、お墓のピクニック、楽しかったねって言ってるよ」
「え……」
母の顔が瞬時に引き攣った。その反応に驚いた僕は隣に視線を移した。祖母は、眉を険しくしていた。
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