見えない彼女「18」 | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

空っぽの靴箱の前で、僕は茫然と立ち尽くした。
間違いなく仕舞った。確かにここに靴を入れた。

視線の端で動く影に、僕はぎろっと目玉を動かして、それを見た。
あのグループだ。僕をいじめるあのグループ。その中に、僕が幼稚園のころから知る近所の男子が混じっていることが、何とも悲しいことだった。

「お靴がにゃーい!」
一人の女子の声でそのグループは大笑いを始めた。

僕は靴箱を閉じて、上履きのままで歩き出した。
靴が一足なくなったことを、母さんは絶対気づく。よりによって一番新しい靴。
なんて言おう。

失くしちゃった。
失くしたって、どこで失くしたのよ。
外で靴を脱いで何をしていたのよ。

盗まれちゃった。
学校で?
先生に言わなきゃダメよ! 学校に泥棒がいたらだめよ!
あたしが学校に電話するわ!

ダメだ、どれもだめだ。親が騒いだら、余計にひどいことになる。
僕はベンチに座り、頭を抱えた。
どうしよう。



「上履きでどうしたの」
声に顔を上げると、いつも通り、ピンクのランドセルを背負った美裕だった。

「靴を、盗まれちゃった」
「盗まれたって、どこで?」
「学校」
「ひょっとして、靴箱からなくなったの」
「そう」
「ふうん」

そのふうんは、興味なさげというより、ほら見ろと言わんばかりのものだった。

「でもそれは困るね」
「困る」
「いじめを受けていることを知られるのが?」
「え?……」
「違ったの?」
「いや……」

「いいんだよ。あたしはね、ヒロ君を守ると決めたんだから。何を言ってもいいの」
「いや……うん、いじめかなあ、あれは」

「弱気だなあ。まあ、いいや。じゃじゃーん」
美裕は、手に持った手提げのビニール袋を突き出した。 


ポチポチッとクリックお願いします。

短編小説 ブログランキングへ

blogramのブログランキング