皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。
胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。
下痢が続くのに、はっきりした原因がわからないと不安になります。食あたりなのか、ストレスなのか、何かの病気なのか判断がつかないまま放置すると、症状が長引くこともあります。ここでは胃腸内科外科の専門医の視点から、原因不明の下痢で考えられる主な病気と、受診の目安をわかりやすく解説します。
1.下痢の「タイプ」で原因を絞り込む
下痢と一口にいっても、性質や続く期間によって考えられる病気は変わります。まずは、自分の下痢がどのタイプかを整理すると原因に近づきやすくなります。
数日で治る急性の下痢は、ウイルスや細菌などによる一時的な感染症であることが多いです。食事内容がはっきりしている場合(生ものや傷みかけた食品など)は、食中毒が疑われます。一方で、数週間から数か月以上ダラダラ続く慢性的な下痢は、腸の炎症や機能異常、ホルモン異常など別の病気が隠れていることがあります。
便の性状も重要な手がかりになります。水のような水様便なのか、粘液が混じるのか、血が混じるのか、脂が浮いたような便かによって、原因が絞り込めます。臭いの変化や色(黒っぽい、白っぽいなど)も、医師が診断する際のヒントになります。
2.よくある原因:感染症と生活習慣
もっとも頻度が高いのは、ウイルスや細菌による感染性腸炎です。いわゆる「胃腸炎」と呼ばれる状態で、急な下痢、腹痛、吐き気、発熱などが同時に出ることが多くなります。冬場のノロウイルスや、夏場の細菌性食中毒は代表的な例です。
生活習慣が引き金になる下痢も少なくありません。冷たい飲み物や脂っこい食事、アルコールの飲み過ぎは腸の動きを乱し、下痢を起こしやすくします。乳糖不耐症(牛乳に含まれる乳糖を分解できない体質)の人が乳製品を多く摂ると、原因が分かりにくい慢性的な下痢になることがあります。また、睡眠不足や強いストレスも、自律神経を介して腸の運動を乱し、軟便や下痢を引き起こします。
3.慢性的な下痢で疑うべき病気
原因がはっきりしない下痢が何週間も続く場合、単なる「お腹の弱さ」だけでは片づけられない病気が隠れていることがあります。その代表例を紹介します。
過敏性腸症候群(IBS)は、検査で明らかな異常が見つからないのに、腹痛と下痢・便秘をくり返す病気です。ストレスや緊張で症状が悪化し、「通勤電車や会議前にお腹が痛くなる」といったパターンが特徴的です。命に関わる病気ではありませんが、生活の質を大きく下げるため、早めの相談が大切です。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、慢性的な下痢に加え、血便や体重減少、発熱が見られることがあります。若い世代にも起こり得る病気であり、放置すると腸のダメージが進むため、専門的な治療が必要になります。薬でコントロールしながら、長期的に付き合っていくイメージの病気です。
4.薬や持病が原因になる下痢
意外と見落としがちなのが、飲んでいる薬による下痢です。抗生物質は腸内細菌のバランスを崩し、下痢を引き起こすことがよくあります。糖尿病薬の一部、胃薬、サプリメント(マグネシウムを含むものなど)でも下痢が出ることがあります。
甲状腺機能亢進症や糖尿病、膵臓の病気など、全身の病気が原因で下痢になることもあります。この場合、動悸、体重減少、汗が多い、脂っこいものが苦手になるなど、ほかの症状を伴うことが多くなります。下痢だけに目を向けず、全身の変化を一緒に振り返ることが重要です。
5.受診の目安と、何科に行けばよいか
「いつ病院に行くべきか」「何科を受診すればよいか」は、多くの人が迷うポイントです。基本的な目安としては、次のような状況では早めの受診がすすめられます。
数日で治りそうにない下痢が1週間以上続く場合。血便や黒色便、発熱、強い腹痛を伴う場合。体重が減ってきている、食欲が落ちている、全身のだるさが強い場合。これらが当てはまるときは、胃腸内科・消化器内科の受診が適しています。
受診の際は、下痢の回数、どのような便か(色・形・血や粘液の有無)、いつから続いているか、食事や旅行歴、服用中の薬などをメモしておくと診察がスムーズになります。必要に応じて、血液検査や便検査、腹部エコー、内視鏡検査などが行われ、炎症や出血、腫瘍の有無を確認します。
6. 自分でできる対処と、やってはいけないこと
受診前後を問わず、下痢のときにもっとも大切なのは脱水を防ぐことです。水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンクなどで電解質も補いながら、少しずつ頻回に飲むと吸収されやすくなります。食欲がある場合は、おかゆ、うどん、バナナ、柔らかく煮た野菜など、消化にやさしいものを選びます。
自己判断で下痢止めを乱用するのは注意が必要です。細菌性腸炎など、体が「出してしまいたい」状態のときに無理に止めてしまうと、かえって回復を遅らせることがあります。また、強い腹痛や発熱、血便を伴うときに下痢止めだけで様子を見るのは危険です。市販薬はあくまで「軽い一時的な下痢」に限って使い、数日で治らなければ医療機関にバトンを渡すイメージで考えてください。
原因が分からない下痢が続くと、不安やストレスがさらに腸を刺激して、悪循環に陥ることも少なくありません。「こんなことで病院に行っていいのかな」と迷う段階で相談しても問題はなく、むしろ早いほど検査や治療の選択肢が増えます。気になる症状が長引くときは、一人で抱え込まず、消化器を専門とする医師に相談してみてください。