皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。
胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。
「寒くなると、痔の痛みが増す気がする…」
「排便のたびに違和感があるけれど、寒いから放っている」
そんな声を耳にすることが増える季節です。
この記事では、胃腸内科外科の専門医が、痔が冬にひどくなる理由と、今日からできる予防・対策をわかりやすく紹介します。
1. 冬に痔を悪化させる3つの要因
「痔」と一口に言っても、いぼ痔(内痔核・外痔核)や切れ痔(裂肛)、痔ろうなど種類があります。 そのいずれも、冬になると症状が強く出やすくなるので、考えられる理由を3つ紹介します。
① 冷えによる血行不良
冬の最大の敵は“冷え”です。
肛門まわりの血管はとても繊細で、寒さによって血流が悪くなるとうっ血しやすくなります。 いぼ痔の場合、血流が滞ることで内部に血の塊(血栓)ができ、突然の痛みや腫れを引き起こすこともあります。
特に女性や冷え性体質の方は、お尻が冷えやすい薄着や長時間の座り仕事に注意が必要です。 冬場にこたつやソファで長時間同じ姿勢を保つことも、圧迫によって血流を悪化させ、痔の発作の原因になります。
② 筋肉の緊張
寒さで体全体の筋肉がこわばるように、肛門周囲の筋肉(肛門括約筋)も緊張します。
この緊張状態が続くと、排便時に肛門の開閉がうまくいかず、切れ痔や出血を招きます。
また、ストレスによる筋肉のこわばりも痔の痛みを強める原因のひとつです。
冬は仕事や年末行事でストレスを抱えやすい時期。
冷えと緊張が重なり、知らないうちに肛門周辺が慢性的にこってしまうこともあります。
③ 生活習慣の乱れと便通の悪化
年末年始の暴飲暴食や不規則な生活も、痔の悪化を招く大きな要因です。
アルコールや辛い食事は血管を拡張させ、うっ血を悪化させることがあります。
また、水分不足や寒さでトイレを我慢する癖がつくと、便が硬くなり排便時に力を入れすぎてしまいます。 この「いきみ」が、いぼ痔や切れ痔をさらに悪化させる悪循環を生んでしまいます。
冬の便秘は見落としがちですが、痔の悪化を防ぐには便をやわらかく保つことがもっとも重要です。
2. 冬に痔が悪化しやすい人の特徴
すべての人が同じように影響を受けるわけではありません。
特に冬に症状が強くなりやすい人には共通点があります。
- 長時間デスクワークや運転をしている
- 便秘や下痢を繰り返している
- 冬場にお風呂よりシャワーで済ませがち
- ストレスが多く睡眠不足になりがち
- 食事の時間が不規則で野菜や水分が不足している
これらの習慣が重なると、肛門の血流が悪化し、慢性的な炎症が続きます。
症状が軽くても繰り返すようなら、生活習慣の見直しが必要です。
3. 今日からできる冬の痔対策
では、今すぐ始められる「冬の痔対策」は何でしょうか。
医師としておすすめしたいポイントを順に紹介します。
① お尻を冷やさない工夫を
外出時は厚手の下着や腹巻きを活用し、腰から下を冷やさないことが基本です。
特に屋内でも、冷たい椅子に長時間座らないよう注意しましょう。
デスクワークが多い方は、クッション性のある座布団や円座を使うのも効果的です。
また、入浴はシャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯に10〜15分浸かることで血流が改善します。 湯船に入ると肛門周囲の筋肉もリラックスし、痛みや違和感の緩和につながります。
② 便通をスムーズに保つ
毎日の排便リズムを整えるためには、食物繊維と水分を意識的にとることが大切です。
冬は水分摂取量が減りがちなので、温かいお茶やスープで補うのが理想です。
便秘気味の方は、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を取り入れ、腸内環境を整えましょう。
排便時は強くいきまず、「3分出なければいったん離れる」習慣をつけることも大切です。
無理に出そうとすると、肛門組織を傷つけ、痔を悪化させます。
③ ストレスケアと睡眠の確保
ストレスは交感神経を優位にし、血流を悪化させます。
深呼吸やストレッチ、軽い運動を取り入れ、体と心をゆるめる時間を作りましょう。
睡眠不足は体の修復力を低下させるため、毎日7時間前後の睡眠を取るのがおすすめです。
④ 食生活の見直し
アルコールや香辛料の摂りすぎは痔の炎症を悪化させます。
また、脂っこい食事やスナック菓子も腸の動きを鈍らせ、便を硬くする原因になります。
加熱野菜や海藻、果物など、腸と血流にやさしい食材を積極的に選びましょう。
4. 放置は危険!早めの受診が安心
「市販薬で何とかなる」と思い込んで我慢してしまう人は少なくありません。
しかし、痛みや出血が繰り返される痔の裏には、肛門周囲膿瘍や直腸がんなど別疾患が隠れている場合もあります。
冬に痛みが強くなった、違和感が取れないという場合は、恥ずかしがらずに医療機関を受診してください。
最近では日帰りでの痔の治療も進んでおり、負担は軽くなっています。
早期に治療を受ければ再発も防ぎやすく、日常生活への支障も少なく済みます。
5.冬の冷えと緊張をほぐす習慣を
冬は寒さと忙しさの中で、体にも心にも負担がかかる季節です。
冷えと筋肉のこわばり、そして便通の乱れが重なることで、痔の症状は悪化しやすくなります。 だからこそ、この季節は「温めて・整えて・休む」を意識しましょう。
お尻を冷やさず、入浴でほぐし、心身の緊張をリセットする習慣を続けることが、根本的な改善につながります。
冬の落とし穴に気づき、日々の小さな工夫で痔の再発を防ぎましょう。
体をいたわる毎日の積み重ねが、健康な春への第一歩になります。