皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。
胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としていますが、アレルギーや子供の病気、生活習慣病なども診察していますので、全身の不調が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。
澄み渡る空、心地よい風。一年で最も過ごしやすいはずの秋に、なぜか心と体が重たく沈んでいませんか。夏の疲れが抜けないまま、だるさや頭痛、気分の落ち込みに悩まされ、「自分だけがおかしいのだろうか」と一人で不安を抱えているかもしれません。その不調、決してあなた一人の問題ではありません。多くの人が同じように感じている、季節の変わり目特有のサインなのです。
その正体は、夏のダメージと秋の急激な気候変動に翻弄される「自律神経の乱れ」。この記事では、なぜ秋になると私たちの心身が悲鳴を上げるのか、そのメカニズムを優しく解き明かし、辛い季節を乗り切るためのヒントをお伝えします。
1. 秋の不調の犯人は「自律神経の乱れ」
秋に感じる原因不明の体調不良、その根本的な原因は夏の間に蓄積したダメージと、秋特有の急激な気候変動によって引き起こされる「自律神経の乱れ」です。この体の司令塔である自律神経がバランスを崩すことで、「秋バテ」と呼ばれる様々な心身の不調が現れるのです。
自律神経は、私たちの意思とは無関係に呼吸や体温、消化などをコントロールし、体を常に最適な状態に保とうと働き続けています。活動時に働く「交感神経」と、休息時に働く「副交感神経」がシーソーのようにバランスを取り合うことで、私たちの健康は維持されています
しかし、秋はこの絶妙なバランスが崩れやすい危険な季節です。だるさ、めまい、頭痛、食欲不振、気分の落ち込みといった、はっきりとした原因がわからない不調となって心身を苦しめます。
2. なぜ秋は心と体が悲鳴を上げるのか
なぜ、過ごしやすいはずの秋が、一年で最も体調を崩しやすい季節の一つなのでしょうか。その理由は、私たちの体が直面する「内なる敵」と「外なる敵」にあります。
* 夏の「負債」という内なる敵
夏の間、私たちの体は過酷な環境と戦い続けています。猛暑の屋外と冷房の効いた室内を行き来する生活は、体温を一定に保とうとする自律神経に多大な負担をかけ、疲労困憊させています。また、暑さから逃れるために口にしたアイスや冷たい飲み物は、知らず知らずのうちに内臓を冷やし、その機能を低下させています。この夏の間に蓄積された「疲労」と「冷え」という負債を返済しないまま秋に突入することが、不調の大きな引き金となるのです。夏バテから回復しないまま、秋バテに移行してしまうケースも少なくありません。
* 「寒暖差」と「気圧変動」という外なる
秋は、1日のうちの気温差が10℃以上になることもあり、私たちの体はこの変化に対応するためにエネルギーを大量に消費します。自律神経は、血管を収縮させたり拡張させたりして必死に体温を保とうとしますが、この働きが過剰になると、疲れやだるさといった症状となって現れます。さらに、秋は台風シーズンでもあり、低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わることで気圧も大きく変動します。この気圧の変化を体がストレスとして感じ取り、頭痛やめまい、関節痛などを引き起こす「気象病」を発症しやすくなるのです。
* 日照時間の減少が心に落とす影
秋になると日照時間が短くなり、太陽の光を浴びる機会が減ります。日光を浴びることで生成される、精神を安定させる脳内物質「セロトニン」の分泌が減少するため、理由もなく気分が落ち込んだり、やる気が出なくなったり、眠れなくなったりすることがあります。体の不調だけでなく、心の不調もまた、秋という季節がもたらす試練なのです。
3. 自律神経を整え、秋を快適に過ごすための処方箋
乱れてしまった自律神経のバランスを取り戻し、辛い不調を乗り切るための、今日からできる簡単なセルフケアをご紹介します。自分を追い詰めず、優しくいたわる気持ちで取り組んでみてください。
* 「3つの首」を温めて、冷えから体を守る
体の冷えは万病のもとであり、自律神経の乱れを助長します。特に、皮膚のすぐ下を太い血管が通っている「首」「手首」「足首」の3つの首を温めることが効果的です。ストールやカーディガン、アームウォーマー、レッグウォーマーなどを活用し、こまめに着脱して体温調節を行いましょう。夜は38〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、心身がリラックスモード(副交感神経優位)になり、質の良い睡眠につながります。
* 朝日を浴びて、体内時計をリセットする
朝起きたら、まずカーテンを開けて太陽の光を浴びましょう。光の刺激が体内時計をリセットし、自律神経のリズムを整えてくれます。特に午前中に光を浴びることで、夜の自然な眠りを誘うホルモン「メラトニン」の分泌がスムーズになります。15分程度のウォーキングなど、軽い運動を組み合わせるとさらに効果的です。
* 腸を喜ばせる食事で、内側から整える
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、その環境は自律神経の働きと密接に関わっています。ヨーグルトや納豆などの発酵食品、きのこや海藻などの食物繊維を積極的に摂り、腸内環境を整えましょう。また、体を温める作用のある生姜やネギ、ニンニクなどを食事に取り入れるのもおすすめです。冷たい飲食物は避け、温かいスープやハーブティーで内臓をいたわってあげましょう。
4. 自分をいたわることから、健やかな秋は始まる
秋の体調不良は、決してあなたの弱さや怠慢が原因ではありません。それは、夏の疲れを引きずったまま、過酷な季節の変わり目を懸命に乗り越えようとしている、あなたの体が発する健気なサインなのです。
「頑張らなくては」というプレッシャーから一旦離れ、まずは自分自身を慈しむ時間を作ってみてください。ほんの少しの「自分への優しさ」が、乱れた自律神経を穏やかに整え、心と体に安らぎをもたらしてくれます。
それでも不調が長引く、日常生活に支障が出るほど辛い、という場合は、決して一人で抱え込まず、専門の医療機関に相談してください。体の発するサインに耳を傾け、適切に対応することで、実りの秋を心から満喫できる、健やかな毎日がきっとあなたを待っています。