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福岡の内科外科院長のブログ

福岡の内科外科院長のブログです。医療の事はもちろん、日々のクリニックでの出来事など投稿します。

皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。

胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。

 

急な嘔吐が始まると「食中毒かインフルエンザか」と不安が一気に高まります。

冬はノロウイルスなどによるいわゆる胃腸風邪が流行し、夜間救急を受診される方も福岡で多く見られます。

 

吐き気が強いときほど、何をすれば良いか分からず、慌てて水を大量に飲ませてしまうこともあります。胃腸内科外科の専門医として、冬の胃腸風邪にご家庭でどう向き合うかを整理しておきたいと感じます

 

この記事では、冬に起こりがちな突然の嘔吐などの症状の見方と、正しい対処手順を解説します。

病院を受診すべきタイミングも合わせて示すので、落ち着いて対応するための道しるべとして役立ててください。

 

 

 

1 命を守るカギは脱水予防

 

 

冬の胃腸風邪で最も警戒すべきなのは、嘔吐や下痢による脱水症状です。特に小児や高齢者では体内の水分バランスが崩れやすく、短時間で重症化するリスクがあります。大切なのは、水分を無理なく「少量ずつこまめに」補給することです。

嘔吐が続く場合はまず口を休め、症状が落ち着いてきたタイミングで、経口補水液やイオン飲料など体液に近い成分の水分を1回量を少なめに分け、5〜10分間隔で飲ませることを心がけてください。

 

大量の水分を一度に飲ませると再び嘔吐を誘発しやすいため、スプーン1杯程度から始めると負担が減ります。市販のスポーツドリンクや湯冷ましも利用できますが、電解質が不足しないよう工夫が必要です。

胃腸風邪は多くがウイルス性で特効薬がなく、主な治療法は体力や水分を失わないようサポートすることに尽きます。無理に食べ物を与えず、まず脱水を防ぐことが命を守る最大のポイントです

 

 

 

2冬に胃腸風邪が増えるメカニズム

 

 

冬は空気の乾燥と気温低下で、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染性胃腸炎が流行しやすい環境になります。これらのウイルスはごく少量でも口から入ると発症し、家庭や学校、職場で一気に広がります。

 

主な症状は、突然の嘔吐、続く下痢、腹痛、発熱、全身のだるさなどで、発症までの潜伏期間はおおむね一〜二日です。小児では嘔吐が目立ち、成人では下痢が中心になることが多く、症状の出方に年齢差が見られます。

 

ウイルス性の胃腸炎には、ウイルスそのものを消す薬がなく、治療は安静と脱水予防が基本になります。正しい対処を行えば多くは数日で改善しますが、乳幼児や高齢者では短時間で脱水が進むため注意が欠かせません。

 

 

 

3 具体策:家庭での対処手順

 

 

⑴   嘔吐が始まった直後の対応

 

まず嘔吐が続いているあいだは、無理に飲ませたり食べさせたりせず、少し落ち着くまで口を休ませます。誤嚥を防ぐため、横になるときは横向きに寝かせ、頭を少し高く保つ姿勢を意識してください。

 

嘔吐がおさまり始めたら、スプーン一杯程度の少量の水分から再開し、五〜一〇分おきに様子を見ながら続けます。一度にコップ一杯を飲ませると再び吐きやすいので「ちびちび飲み」が原則になります。

 

⑵   水分補給のコツとおすすめの飲み物

 

基本は経口補水液や、薄めたスポーツドリンク、湯冷まし、水などで、冷たすぎない温度に整えます。乳幼児や高齢者では、電解質を含む飲み物を少量ずつ回数多く与えることが大切です。

糖分の多いジュースや炭酸飲料、濃いお茶やコーヒーは、かえって下痢を悪化させる恐れがあります。アルコールは当然避け、回復期でも水分としては選ばないよう意識してください。

 

⑶   食事を再開するタイミングと内容

 

吐き気が落ち着くまでは、無理に固形物をとる必要はありません。

食べられそうになってきたら、おかゆ、やわらかいうどん、具の少ないスープなど消化の良いものから始めます。

白身魚、バナナ、トーストなども、少量ずつなら回復期のエネルギー源になります。

揚げ物、脂身の多い肉料理、乳脂肪の多い洋菓子、辛い料理は、完全に回復するまで控えてください。

 

⑷   絶対に避けたい自己判断

 

市販の強い下痢止めは、ウイルスや細菌を体外に出す力を妨げる場合があり、自己判断での使用は勧められません。特に高熱や血便を伴うときは、腸の動きを止める薬で症状が悪化する危険があります。

 

嘔吐物を片付ける際は、素手で触らず、使い捨て手袋とマスクを着け、ペーパータオルで静かに拭き取ります。その後、塩素系漂白剤を薄めた消毒液などで床やトイレ周りをしっかり拭き、ウイルスの広がりを抑えます。

 

 

 

4 受診の目安と予防のポイント

 

 

⑴   すぐに受診すべき危険サイン

 

以下のような場合は、時間帯に関係なく医療機関への相談や受診を迷わないでください。

水分がほとんどとれない、尿が半日以上出ない、ぐったりして反応が乏しいといった脱水のサインは特に危険です。

高熱が続く、血便やコーヒー色の便が出る、強い腹痛が治まらない場合も、細菌性の腸炎やほかの病気を疑う必要があります。乳幼児、高齢者、持病のある方、妊娠中の方は早め早めの受診を心がけてください。

 

⑵   家庭でできる冬の予防策

 

冬の胃腸風邪を防ぐ基本は、石けんと流水によるこまめな手洗いです。

外出後やトイレのあと、調理や食事の前には、指先や爪の間まで三〇秒ほどかけて丁寧に洗う習慣をつけます。

カキなどの二枚貝や生ものは十分に加熱し、まな板や包丁を生食用と加熱用で分けて使うと安心感が高まります。

家族に嘔吐や下痢の人がいるときは、タオルやコップを共用せず、トイレやドアノブの消毒も意識してください。

 

冬は新型コロナやインフルエンザ対策と一緒に、感染性胃腸炎への備えも欠かせません。

正しい知識と落ち着いた対処で、つらい嘔吐の夜を乗り切り、ご家族の体力を守っていきましょう。