立ち去る後ろ姿も
私を見つめながらの「じゃ・・・また」も
通話が切れるガチャリ音も
嫌い
だから見ないようにするし
いつも最後は、受話器から耳を離す
・・・カチャ
そっと閉められた、ドアの音
思わず息をついた
部屋を出る姿を見たら引き止めたくなる
きっと思わずのそういう目を雅治に向けてしまう
だから見ない
私は随分我慢ができなくなった。向かい合えば弱く、抑制が効きにくい。
いつもの、学会の朝を迎えた
歩きながら、そしらぬふりで尋ねる
「ねぇ?今朝は何時に出ていきました?」
「・・・えっと・・・4時くらいだったかな」
「少しは眠れた?寝不足でしょう」
「少しね。だから今夜は・・あんまり頑張れないかもしれないな、誰かさんの要求が強すぎる」
「もう。それにしても昨夜はあんなに・・・どうしたの、いつもは寝てる時間だし、随分激しく・・」
「だけど昨夜のはまだ一晩中というほどではない。誰かさんが一晩中ずっとって言うから、その約束は果たさないとね」
「・・・まあ」
朝8時過ぎ
学会場に行く道すがら、の話じゃない
「あのね」
「うん?」
「A先生から連絡が来てるの。こっちに出てきてるのか?って」
すっ、と表情がかわる
「ん?それで、何て答えた」
「それを、聞こうと思って」
「・・・sanaへの連絡は、後での食事の誘い?」
「いえ、まだそこまでの話じゃなくて」
「じゃ今日は約束がある、と言えばいい」
「3人で食事、というのは?」
「無いね」
「・・・あら?ヤキモチ?A先生とは何だかんだでそういうをタイミング逃してばかりで。食事も嫌ってこと?幼なじみでしょう」
「そう、嫌。幼なじみはここに関係ないし、アイツとsanaとのタイミングなんて合わないままで別に構わない」
「・・・あのね、えっと、A先生も私の恩師になるんですけど?久しぶりに会う・・・」
「嫌だよ。久しぶりの話は充分会場でできる。そんなことに時間を使いたくない。それとも僕よりAとの時間を優先?」
「・・・あらまあ」
嫌、と瞬間的に思う時、雅治はしゃべる言葉が早口になる
雅治は、演じるようにヤキモチを言うようになった
こそばゆくて、顔を背けて少し笑ってしまう
会場に着けば
私達は、距離をあけ
ふたりだけのいつもとは違う昔の顔をして、違う方向に歩き出す
お久しぶりです、という「先生」と「教え子」の顔をして

