水底の月 -11ページ目

水底の月

恋の時は30年になりました 

腕枕からそっと腕を抜いたのは、今度は雅治の方だった

 

 

「ん・・・」

 

 

「sana・・・ごめん、起こした?」


「・・・」



「少し部屋に帰るよ、もう4時を過ぎた」

 

「・・・」

 

 

4時・・・4時・・・そう、4時

 

 

「・・・・」

 

 

「朝は・・・来るのは8時でいいかい?」

 

 

「・・・・」

 

 

 

私は、雅治の問いに答えず眼を開けなかった

 

眠たいからよくわからない・・・を咄嗟に装った

でも、私を起こすまいと隣でそうっと動いていた雅治に最初から気づいていた

シャツに袖を通す音がする

 

 

私は眠りが深いほうで

でも、雅治が隣にいる時はいつも、小さな動きにも気づいてしまう

 

もともとの眠りが浅いから余計にきっちりした睡眠時間をとる雅治にすれば、こんな時間、それもずっと私を・・・それは眠たくて当然だろう

 

学会は今日も明日もあるんだから

本当はもうすこし早く、帰してあげればよかったんだろうけど

 

 

一晩中、傍にいて

一晩中、ずっと私を抱いてて

 

そんな私の願いを、叶えてくれようとしてくれてること
叶えたいと思ってること

 

わかってるの


だから叶った

 

もういい、充分
帰って休んで

私みたいなショートスリーパーならともかく
 

でもそれを素直に言い、さらりと送り出すのは

あんまりにも物わかりがいい、本物の愛人すぎるような気がして

 

 

 

 

眠たいから、もうごねる元気もない

気づいてない、だから気にせず、声をかけずに出て行って
 

「寝てたからね」って言えるでしょう?


眠たさに負けて帰るのに気づかず、嫌だと引き止めなかったのは私。
朝、どうしてここに居ないのって文句が言えない理由も、これで全部、「私」になるから

 

 

眠たいの、寝てるの。だから今のうちでしょ

帰ったらダメとゴネられる前に、ほら


小さく寝返って、私を見ているであろう雅治に背を向けて眠っているふりをした



これでいい



 

そんな私の様子を、少し遠くから静かに眺めて



 「sana」


と、小さく声をかけ


着替えを済ませた雅治は、そっと

音を立てずに出て行った

 

 


 

 

 

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