水底の月 -9ページ目

水底の月

恋の時は30年になりました 

「おお、来とったか」

 

幼なじみ、というには随分とキャラが違う

静かな優しいニュアンスで喋る雅治とは対照的に、A先生は言いよどみのないはっきりした話し方をする。その分、感情やテンションなど起伏は手に取るようにわかるけれど

 

久しぶり、でも久しぶりではない存在感は雅治とはまた違っていて。

やっている業務分野が似ているから、話し始めると随分おしゃべりも長くなる

 

さっそく、はじめのセッションで遭遇した。

ひとつの質問に10分のペースで答えが返ってくる、そういう熱さもあいかわらずで

 

 

「そうそう、アイツも来とるぞ、ホラあそこ。・・・もう会ったか」

 

「いえ、まだ」

 

 

A先生は喋りながら、向こうを歩く雅治を指さす。

頭一つ抜けるほどに背の高い雅治は遠くからでもよくわかる。
アイツをこっちに呼んで来い、とでもいいたげに指を差すと、ここに居ると言うように隣にあった自販機にがしゃんと小銭を放り込み、椅子にドカッと座った。

 

 

「じゃ、声をかけてきますね」

 

 

雅治もまた、久しぶりの顔をして合流すると、しばらくはA先生の話の独壇場となった

 

そうそう、こんな感じよ

随分ずいぶん昔の記憶を、随分歳を重ねた二人に重ね

勢いはあるものの、なんだか少し小さくなったようなA先生の雰囲気に寂しくもあったり

 

 

「もうな、60を越えるとな、遠く行っての全日参加は・・・しんどいわ。来たものの、座るのももうええか・・ってなるな」

 

テンションは高いものの、たしかに少し疲れているようにも見えた。

と言いつつ別の学会があるからと、A先生は夕方にはこちらを出るようで


そんな話をふたりがしているのを隣で聞きながら

 

 

 

「ねえ、一緒に写真を撮りませんか、せっかくだし」

 

と、声をかける

 

 

学会の度に、会えば写真を撮ってきた。

それぞれとのツーショットは無いけれど、何故か3人の写真は手元に数枚。

お決まりのようになったそれをお願いすると

 

「おお、じゃ撮るか、オレはな、自撮り棒を持ってる」

 

 

 

 

私は真ん中

ふたりの先生に囲まれて撮る。これもいつもどおりで

 

 

 

「ありがとうございました。じゃ私次のがありますから行きますね、先生、お元気で」

 

 

「おう。写真、後で送るわLINEでな。ま、元気でやれよ、無理せずにな」

 

 

 

ふたりを置いて、私は動く

 

 

60を越えた・・・

ん・・・となると、同い年にして、雅治は随分若い、どうしてかは知らないけど(笑)

 

 

 

 

 

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