肌の熱 | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

 私の隣へ、滑り込むように雅治が入ってくる

 

身体を横たえ、こちらに向くと

私へ左腕を伸ばし、腕枕のような体勢から左腕は私にくるりと巻き付き


私はその腕に転がされて雅治のほうを向く

 


私は、雅治の身体に触れながら

頭を、腋窩あたりに

横向きにした身体は、型をとるように雅治の身体の左側に添う

 

それが定位置


こちら向きに斜めに身体を起こして私を見ていた雅治の頬がそっと下りてきて 


私の頬に触れ

 

徐々に身体が重なっていく


雅治の重さを感じながら抱え込まれて

私はベッドに身体を沈ませていく

そうやって、まずはただ重なり、肌を感じる

 

 

時折

シュッと引き上げるようなシーツの掠れる音と

小さな息づかい

 

まだ、ほかの荒々しい効果音はいらない

 

 

 

ぴったりと裸肌を重ねても、汗ばむことはない

肌を離したくなるような不快な熱は放たない

 

雅治の肌の熱は心地よくて

熱く燃え滴る汗を肌に感じ、それを受けて肌が汗ばむ時でさえ、その身体を暑いと感じることは無い

 

代謝の違い、体温の違いだろうけれど

そこはつい、パートナーと比べてしまう

 

「暑いよ」

冬でも薄手のTシャツで過ごせるパートナーは、私を腕に抱くことをあまり好まない

パートナーの肌は、熱いというよりも暑く

 

「暑い、もう離れて」

 

肌感が合わなくなってきたなと思う

合わないのを見ないようにしてきたのを止めた、と言うべきか 

 

貫かれるよりもただ、肌の重なりで安心できる時もあるのに

隣で15年も過ごすと、そんなことは生活音よりも小さいことで。暑いと眠いに軍配が上がる

 

メンテナンスなんて、いまさら

大事にしなきゃいけないものじゃない、らしい

 

 

だから、それを求めることはしなくなったけど

 

それにもう、他の肌は忘れた

 

 

 

「私の身体は・・・冷たい?」

 

「・・・sanaは死んでるの?」

 

「そういう冷たいじゃなくて。飛躍し過ぎ」

 

「冷たい?」

 

「雅治があったかいということは雅治のほうが体温が高い、くっついても暑くはないなら、私の肌は冷たいのかな・・・冷たい肌をぴったりくっつけられるのはイヤじゃないかなとか」

 

「・・・何を言いたいの?」

 

「何を?・・・言いたいのか・・・よくわからないけど、どうなのかなって・・・」

 

 

それへの答えはなく


ふっ、と首筋に息を吹きかけ、私の背が反り返るのを確かめて


せり上がった乳房に、雅治はそっと唇をあてた

 

 

 

 

 

 

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