燃えぬ火に | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

火のつきかけた身体

どちらにも、もうとっくに種火はついている

 

服の上からでもわかる互いの変化。でもいつかのように一気に溺れこみ・・とはならなくて。

 

指先の遊びに耐えられず、突き抜けはするのに

したい反応はそうじゃない

 

「もう・・来て」

 

「どこに?」

 

「入れて」

 

「何を?ちゃんと言わなくちゃ・・・、言って?」

 

焦らすように焚きつけ、言わないと手を止め

わざとに目を合わせ恥ずかしがらせ

 

それに

薄い酸素の中で泳ぐ魚のように

パクパクと、私は溺れるように応える

 

噛み合ってないんじゃない

種火を大きくしたくて

 

 

雅治の欲しい反応が返せない身体がイヤだと思う

今日の私の身体の、どうにも反応が鈍いのは私のせい

雅治の身体は、鈍さを感じ取っている

どうしたの?まだ疲れているのかなと思う雅治の気配を感じる

 

慌てているわけでも

戸惑っているわけでもないけど

私を探りながら、どうしたら私がほどけるか

雅治は考えてる


自分の快楽はいつも二の次

いつもそうやって

弱った時の私の、負の感情を吸い取る

私はそれに甘えてしまう

気配に甘え、弱さを渡して整えてもらうことになる

 

電話で声を聞くよりも

肌は、指は、雅治を伝えてくる


でもイヤ、それだけをしてもらうのは嫌

 

 

「身体、やっぱりもう流してくる」

 

「流してくる?」

 

 

身体を流して仕切り直す


そんなこと、前に雅治も言ってた

 

これは、性欲なんだろうか

何度も何度も経験する

雅治にしか抱けない感情と雅治からしか受け取れない熱は

 

服を着ていたら、いつもを脱げない

 

身体を、動けるように温めたい

冷たい身体の中に沈むおもりを消したい

 

 

裸の

雅治の腕の中なら、解いていい

そこでしか、私を緩められない

 

 

「先に入る?」

 

「はい」

 

 

雅治の手は

身体を起こそうとする私の背中を、後ろから支えた

 

 

この人は、私に

いつも、ずっと、どこまでも優しい

 

 

 

 

 

 

 

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