彼に伝えて | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

concorde にメールを打つ。

事務局長の中にいるもうひとりの、メールを打ってきた人に宛てて

 

 

奇妙な。

 

私が抱かれていながら、ふたつの人格のなかを行ったり来たりしていたように、事務局長もまた、自身の中にふたつ人格を住まわせ私と対峙するとは。

 

言ってない、そんなこと。そんなところまで同じでなくてもいいのに。

そうしないと、私達は互いを保っていられない関係だったということなのか。

 

 

あなたから伝えていただけませんか、事務局長に。

 

事務局長の本音が見えたような気がするから

 

私は事務局長から切り離され、取り残されたように感じていた。

あのひとの腕の中にいても、抱かれていても淋しさが消えなかった。

理解しあえるはずなのに、どうして解りあえないのか。

噛み合ったと思ったそれは幻想だったのかと、思っていました。

 

そうではなかったようですね。

 

気持ちを知ることができて良かった。

私ばかりが苦しみ、悲しんでいたわけではなかったと。

こうなっても事務局長を嫌いにはなれない自分が嫌でしたが、嫌いにならなくてもいいのだと思いました。

嫌いになれるはずがない。彼から愛され、学び、得たものは私を様々に変えました。

 

でも、これ以上事務局長の傍にいたら、また私のことで無駄に苦しめ、力を弱め

本来の事務局長の目指すものをおざなりにさせてしまいそうな気がします。

 

噛み合わなくて大嫌いになる前に離れてみませんか。

 

私達は余りにも近くて、合わせ鏡のように似すぎていて

愛していても、結局はハリネズミのように互いを傷つけあってしまう。

 

退職という形で距離を置いても

本当に必要であればまた、逢うことになるような気がします。

 

それに、私の携帯の番号など、もう彼の指は覚えているはずです。

繋がる方法はあるのですから

 

明日。退職願を再度お届けに上がります。

 

やはり最初のとおり、辞めさせていただきたいと思います。

今まで色々とお世話になりました。

 

そう、事務局長にお伝えください。

 

繋がること、はたぶんもう無い。

私が退職したら、よほどのことがないともう逢うことは無いとわかっていた。

 

事務局長はきっとそういう人で、私もまたそういう人間で。

でも、事務局長の存在が無くなる日常が来たら・・・身悶えする位後悔する。きっと何か月も。

 

そんな惑いも悲しみも乗せて

私の手元から、concordeは飛び立った。

 

 

 

 

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