合格しました | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

「合格しました」

 

 

約束の3か月よりも1か月早い合格通知書を、事務局長室に届けた。

 

 

「ん!?」

 

 

朝の忙しさにまぎれて。

ゆっくり話す時間のないタイミングで。

改めてあの時の自分の突発的な発言を思うとこちらからそれを切り出すのもためらわれ、後ろに秘書さんがいる時間帯に報告に行った。

 

 

事務局長はその書面をつまみ上げるとじっと見つめて言った。

 

 

 

「早かったね。おめでとう。よく頑張りました。ではこれについて、この後委員開催準備、指針や規約の制定、委員選定のことも含めて話があります。午後、時間がありますか」

 

「はい」

 

 

「では早速。午後に打ち合わせることにしましょう。勉強してどうでしたか。勉強した内容を踏まえて、当院で気になる点、改善したほうがいい点を数点あげてもらえると助かるな。たぶんいくつか見えてきたものがあろうかと思うけど」

 

 

「はい」

 

 

院内で気になる点、改善したほうがいい点はテキストを読んでいくうち頭の中に挙がってきていた。業務に活かしていく学びというのはこういうことかと、納得し手応えのようなものも感じながら。

 

 

 

 

 

「私のほうからおたくの上司にも話しておきます。委員会の中心メンバーで動いてもらうことになるからと、それでいいね」

 

 

「はい」

 

 

 

 

ふっ・・・と口の端に笑みを浮かべると合格通知書に注いできた目をこちらに向け

 

 

「では。色々と、後程」

 

 

 

 

 

つんと澄ましたようないつもの事務局長のポーカーフェイス、一瞬にじんだ笑みの裏に私の意図は伝わっている、あの約束は忘れてない、そう理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 


女の本音・女心ランキング


にほんブログ村