「ほーら、やっぱり来た」
「・・・やっぱり、って」
「律儀なsanaちゃんはきっと帰る前に一度顔を出してくれるわってさっき話してたところ。
ま、座んなさいな。もう学生じゃないから、今日はお茶を入れてあげましょう」
なじみの秘書さんはいつもと同じいたずらっぽい目で笑うと手早くお茶を出してくれた。
「で、いつ帰るの?」
「明日の朝です。両親が迎えに来るので」
「あらまぁ、寂しくなるわね。あれ、もっと寂しくなるはずのヒトはどこへ・・・あぁ、今日は朝から奥の部屋で何かやってた。行っといで。ワタシもう明日帰りまーすって」
「はーい。」
そっと入る。
「・・・いらっしゃい。今日は来るだろうなあと思って、待ってたよ」
いつもの、白衣姿。
私はすらっと背の高い、先生の白衣姿が好きだった。
他の人より少し長めの白衣の裾が早足で歩く先生の白いズボンにはためき
急な角度で曲がる反動でさらにひらりと跳ね上がる。
キュッと斜めに止めるクセのある足元も、潔くて好きだった
「sanaちゃん。謝恩会の夜。もしかして、追いかけてきてた?僕を」
「・・・・・」
「やっぱりsanaちゃんだったか・・・。どうして?」
「どうして?・・・じゃ何で先に、どうして何も言わずに帰ったんですか」
「何か言ってたら、その後、どうかなってたよ。多分」
「・・・・・・・」
「あと30分で仕事が終わるから、ご飯でも食べに行こうか。
もし行くんなら、学校の裏の駐車場においで。車で迎えに行く。
どっちでも。来てもいいし、僕が怖いなら来なくてもいいし。sanaちゃんに任せる」