レジェンド・・山男 | ryojin1002のブログ

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ブログの説明を入力します。剣道のこと、オオカミ復活運動のこと、そして紀州犬のことやいつも行き来している大好きな京都のネタなども綴っていきます。

  先日土曜日、いつもの鵜殿の稽古会に行った帰り道、あまりに天気が良くて久々に大泊から旧道311号に入り、新鹿、二木島、梶賀、賀田と素晴らしい海岸線を巡り、三木里に着いたらそこでで高速に乗ろうかと思ってたのですが、何だか急に「よし!今日はこのまま尾鷲まで走ってみようと」と思い立ち、そのまま早田から九鬼まで来て、そのまま九鬼尾鷲道を国道42号線まで走る途中、ふと右側に旧道行野線(旧311のこと)があることに気付き、この先に以前一度だけお邪魔したことのある田中さんのログハウスがあったことを思い出し「ちょこっと寄ってみよう」とそのまま突き進んでいったのですが、思い起こせばもう30年近くも会っていなくて、今の年齢や近況のこともまったく知らずどう過ごされているのかも皆目知らないまま、ただ突き動かされてしまうようにログハウスの前まで来てしまいました。

道路わきに白い車が止まっていて、家の前で数人が立ち話をしているように見受けられて、そのメンバーをよく見ると端っこで腰かけているエンジ色のヤッケ姿の男がいます。

すぐわかりました。マスちゃんです。子供の頃から家も近所だしよく見知った人です。「マスちゃん?」と声を掛けると「おーー!オカダ君やないか」と闊達な声で迎えてくれました。

そこにはあごひげを蓄え、引き締まった体躯の精悍な老人がニコニコと佇んでいました。

嬉しかったですね。今度もし仮に彼に会えるとしたら病院のベッドに横たわる瘦せこけた姿であろうと僅かながらも車の中で寂しい予想が脳裏を掠めていましたからね。

正直、ここに居るとはまったく予想していませんでした。

どうも白い車の老夫婦に道案内をしていたところのようで、たまたま僕がそこに出くわしたと云うことです。

  僕はこの瞬間まるでタイムスリップしたかような感覚に包まれました。

懐かしさが込み上げ、僕が17、8才の頃にマスちゃんの主催する山岳会に所属して北アルプスに槍ヶ岳までの縦走登山に行った時のことが昨日のことのように思い出されました。

  僕のあの頃の思い出話が次々と出てくるのに呼応してか彼の青年時代から油の乗り切った成年期の山岳話から奥さんの苦労話にまで話が弾み、一時間以上お邪魔してしまいました。あっと云うまでした。

彼はこの地域だけでなく全国的にもあの世代の山岳関係者ならだれでもが知る有名な登山家です。

奥さんが嘆くように「オカダ君、この人あの頃は365日山やったんやでな」「大変やったよそりゃ」と笑いながら話していました。

マスちゃん曰く「俺が山から帰ってきたら、知らん間に家が建ってたでなぁ・・・(笑)」こんな調子ですからおして知るべしですよね。

  そう云えば以前、彼は年末年始は毎年山でキャンプして過ごすのが恒例とも云ってましたね。僕の知る限りでは大台が原の麓に近い雪深い和佐又山でキャンプを張り、そこで過ごすことが楽しみだったようです。

  彼は国内の有名無名のアルプスは元よりヒマラヤやヨーロッパアルプス(マッターホルンと言ってました)まで踏破した文字通りの一流登山家と云えます。

随分昔になりますが東京の新聞社に頼まれ6,7年間大峰山の登山ガイドもしていたとも言ってました。

  何はともあれ大した山男であったのは確かです。

今まで大した事故にも遭わずよく無事だったのはありがたいことだとも、それより自分の育てた山男(女)が誰一人として遭難や事故に遭わず無事だったと云うのがオレの唯一の自慢だ、とも言っていました。

  話は飛びますが、その17才頃の北アルプス行きでは僕たちは危うく遭難しかけましたけどね(笑)

今こうしていられるのも・・なんて思ったりしてね。

遭難しかけた話は長くなるので端折りますが、それを乗り越えた時、それにしてもあの頃の若さの自分の体力は凄かったんだと、今思うに助かったのは無鉄砲さとその体力のお陰でしたよ。まったく・・・。

と云うことでこの古の山男に再会し、その壮大な物語に出会った話でした。

彼は85歳と云うことで、それにしても良い齢の取り方してるなぁとつくづくと考えさせられました。

自分もああなりたいものだともね・・。

「今は足があかんので、たまにこうやって街の家を離れここにやって来てな、この家の前で雰囲気だけ味あうんさ」

この人あってこのログハウス(ほとんど自分で手掛けたらしい)かぁと感動しましたよ。

帰りかけ、「よっちゃん(ごく親しい人の僕の呼び名)また山の話しようなぁ」と杯を傾ける仕草で言ってくれましたが、それはとても嬉しいことであり、話すと云うより、僕が話を聞きたいと云う方が良いと思いました。

その日が来るのが楽しみです。

終わります。