スライ&ザ・ファミリーストーン→ディアンジェロ | なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO

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僕の好きな人物、作品をWHO'S WHO形式でご紹介します。



今世紀初となる、ディアンジェロの、なんと14年ぶりのアルバム「ブラック・メサイア」。先行ネット配信
されている、という噂は耳にしてて、そのときは「あそ、ふーん」くらいだったのですが、昨年末、タワレコの店頭で
出会い頭みたいに、賑々しくイチ押しコーナーを飾っていたのを目の当たりにして、まあこれはなんかの冗談だろう、
とりあえず買っとく?みたいに、意外に冷静にレジへ直行した私。そして帰宅後、軽い気持ちでその日の戦利品を
オートチェンジャーのプレイヤーにセットして順繰りに聴いてたわけです。で、これになった途端、僕は一瞬ハタと動きが
止まってしまいました。もうまぎれもなく、「あの」音なのでした。すげえなあ、おい。それにしても、いったい今まで
何やってたんだか。そもそも、デビュー以来20年で、アルバムはわずか3作、と超寡作のひとではあるのですが。


始めの何曲かは、それこそP-FUNKぽかったりしますが、HIPHOP色は
控えめながら、それ以降は、いつものディアンジェロ節。僕の「いつもの」と
いうのはバラエティに富んでいるということでもあって、「暴動」のころの
スライ・ストーン風だったり、ファンクなマイルス・デイヴィス
だったり、プリンスだったりマーヴィン・ゲイだったり。それをあの
重~いビートでやられた日には・・・まあ、若干統一感がないという憾みは
あるものの、リズムの要クエストラヴがまだ在籍してくれてたりとか、
感慨もひとしおであります。いまだにヘビーローテションだったりして。
早くも(もっと練れた)次のアルバムが待たれます。


ところで、僕も含めほとんどのファンは、前作「ヴードゥー」にやられた
クチだと思いますが、こちらはちょっとすごかった。完成度は最高でしょう。
コテコテに重いズブズブのファンクであり、そうかと思うと甘いファルセット
ボイスによるスウィートな(ある意味異様な)ナンバーもあり、まさに新世代
ソウルミュージック、と言うべきものでした。これがほぼ一発録りだった、
というのが奇跡というかほんとに信じられないのですが、そのせいでしょう
ライブ感もある。前記の、元ザ・ルーツのドラマーはじめ、リズム隊が
なにしろ最強です。これはもちろん意図的なのでしょうが、ほんのちょっと
だけリズムが「遅れる」のですね。「後ノリ」に近いかもしれません。そうした
リズムの綾から生まれる「間」が、これまたすごい。一聴プリミティブだけど
考えぬかれてる感じ。これはクセになる音。だいぶ以前にも書きましたが
これにジェイムズ・ブレイクがハマった結果、あのような音を作るに
至った、というのも納得です。ただし、この「重さ」が苦手、というソウルファンは少なからず存在し、それもまあ、
わからなくもない。彼の作り出す音楽は、甘茶ソウルみたいのも無いではないんですが、このアルバムに関して
言えば、ポップというにはほど遠く、少なくともドライブデートのときかけるものではないなあ・・・


そういった意味では、1stアルバム「ブラウンシュガー」はまだしも
でしょう。ジャズっぽいアプローチとかすごくカッコいいし、なんといっても
その甘くてスモーキーで官能的なヴォーカル。濃ゆーくてエロいです。
スモーキー・ロビンソン
のカバーとかしてる、特に後半なんか
オススメ(ちなみに彼はR&B嫌いを公言してますが)。これはヒップホップ
通過後のソウルミュージックとして90年台を代表する作品でもあります。
彼は、ニュークラシックソウル・ムーヴメントの立役者のひとり、なんて
言われてたりもしてて僕も特に異論はありませんが、マックスウェル
エリカ・バドゥなんかと一緒くたにして語られるのもどうかなあと。
もし、そのようなムーヴメントが存在したのだとすれば、それはおそらく、
ディアンジェロひとりが始め、「ヴードゥー」で終わらせた、と今は思います。


さて次は、忘れた頃に新作発表しやがってつながり、でいってみます・・・