涼風文庫堂の「文庫おでっせい」483 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ネイハム、

ガードナー>

 

1453「シャドー81」

ルシアン・ネイハム
長編   中野圭二:訳  新潮文庫
 
 
ロサンゼルスからハワイに向う
747ジャンボ旅客機が
無線で乗っ取りを通告された。
姿なき犯人は、
旅客機の死角に入って決して姿を見せない
完全武装の謎のジェット戦闘機であった。
 
犯人は二百余名の人命と引き換えに
巨額の金塊を要求し、
政府、軍隊、FBI、銀行など
あらゆる公共機関がパニック状態に陥った。
 
豊富なニュース、情報を駆使し、
臨場感あふれる正確な記述で描く
新しい冒険小説。
 
                        <ウラスジ>
 
 
久々に登場願う、
<冒険・スパイ小説ハンドブック>。
 
最初の一行がこれ。
 
世の中に「一発屋」という言葉がある。
 
続いて、
 
今回のアンケート結果からして、
冒険小説界最高の一発屋はさしずめ
このネイハムに違いない。
ただの一発でなく、
長く読み継がれるであろう傑作を残したのだから。
 
<西夜朗:冒険・スパイ小説 ハンドブックより>
 
 
ベトナム戦争で撃墜されたはずの
戦闘爆撃機TX75Eを駆って、
ジャンボ・ジェットを事実上ハイジャックする物語。
 
ただし犯人は機内におらず、
ジャンボの背後の死角にあって
決して姿を見せない戦闘機に乗っていた。
 
ゆえの、”シャドー” の名称。
 
で……。
 
後味スッキリ。
読後感、爽快。
 
評価も高く、名作の誉れ高いので、
こっからは余談含めた個人的感想を。
 
 
<余談 1>
このやりかた、
まさしく 
”大空での、あおり運転” 。
 
<余談 2>
他の<ハイジャック小説>の有名どころというと――。
 
『スカイジャック』 トニー・ケンリック
『ゼロの罠』 ポーラ・ゴズリング
 
 
<余談 3>
飛行体を後から追尾するというシチュエーションは
『空の大怪獣 ラドン』
を想起させます。
 
「突っ込んできました、途方もない巨大な……」
ドカーン。
 
福岡在住の人間はすべからく見るべし。
 
 
大濠公園、中洲、新天町、
岩田屋(現・パルコ)、西鉄大牟田線
などが登場、
殆んどが破壊されます。
 
<余談 4>
ベトナム戦争時の飛行機を扱った映画に
『エア★アメリカ』 1990年
がありました。
 
出演者はメル・ギブソンと若手時代のロバート・ダウニー・Jr.。
こっちは戦闘機ではなくて、C-123みたいな輸送機。
 
 
これで穀物や火器だけでなく、
麻薬まで運んでいるというお話。
 
<余談 5>
かつて映画『大脱走』が公開されたとき、
「第二次大戦は、もはや講談となった」
と評した評論家がいらっしゃいました。
(双葉先生だったっけ?)
 
アメリカは戦争と無関係でいられる国ではないので、
何かしらその影響を受けた文学や映画作品が
落し子のように生れていました。
 
先の『大脱走』のように活劇調のものばかりでなく、
ブラックなものを含めた
ユーモアや諧謔にあふれた作品も登場しました。
 
第二次大戦だと『キャッチ=22』。
朝鮮戦争だと『マッシュ』。
 
で、ベトナム戦争の後はというと――。
 
少なくともそれを題材にした 
”笑える話” みたいなものには
出会った事がありません。
 
第二次大戦は勝ちいくさ、
朝鮮戦争は引き分け、
ベトナム戦争は負けいくさ、
……
だからでしょうか。
 
 
 
 

1454「奇妙な花嫁」 

ペリー・メイスン・シリーズ

アール・スタンリ・ガードナー
長編   小西宏:訳  創元推理文庫
 
 
 
新婚早々の新妻らしき女客がメイスン事務所を訪れた。
 
しかし不審な言動をメイスンに追求された彼女は、
依頼の相談もせずに逃げるようにして帰ってしまった。
 
彼女が忘れていったハンドバッグ、
その中に入っていたピストル。
 
不吉な予感を感じたメイスンは弁護士としての義務感から、
その女客を探して助力をあたえようとする。
 
しかし時すでにおそく、殺人事件が発生する。
 
民事の離婚訴訟と刑事の殺人公判が
有機的に関連する二つの法廷で
虚々実々の火花をちらす
弁護士ペリー・メイスンとルーカス地方検事補!
 
                        <ウラスジ>
 
 
ペリー・メイスン初登場はこちら。
 
 
こっちも久々の<世界の推理小説・総解説>から。
 
このシリーズは一九三三年の『ビロードの爪』を皮切りに、
全部で八二冊書かれており、
題名がいずれも The Case of the……
で始まるのが特色である。
きわだって傑出した作品がないかわりに失敗作もなく、
ほとんどすべてが一定の水準に達しているのがまた、
作者の非凡な力量を示しており、
アメリカはもちろんのこと
世界各地で絶大な人気を博した。
 
    <谷口俊彦:『世界の推理小説:総解説』より>
 
 
……重婚、恐喝、殺人、転嫁……。
 
「証人が聞いたのはドアベルでしたか、
それとも目ざまし時計でしたか?」
 
「ぼくのやり口は型やぶりなんだ。
法に触れぬかぎりにおいてね。
トリッキーかもしれぬが、
弁護士なら使用する権利のある合法的なトリックだよ。
証人の反対尋問にさいしては、
ぼくは思いつくかぎりのいかなるテストも、
合法の域内におけるいかなるデッチ上げも
利用する権利があるんだ」
 
これがあるから、このシリーズは続く。
 
真相解明よりも
依頼人の無実を勝ち取ることが大事。
 
 
 
 

1455「義眼殺人事件」 

ペリー・メイスン・シリーズ

アール・スタンリ・ガードナー
長編   小西宏:訳  創元推理文庫
 
 
 
メイスン弁護事務所を訪れた新しい依頼人は、
義眼の男だった。
 
男は、ゆうべ自分の精巧な義眼を紛失し、
それが犯罪の現場に悪用されるのを恐れていると訴えた。
 
やがて、
義眼を握って殺されている死体が発見され、
嫌疑はメイスンの依頼人にかかった。
 
メイスンは私立探偵ドレイクを使って
検事側の先手を打とうとしたが失敗し、
第二の殺人を招くことになる。
 
法廷に立ったメイスンの胸中の秘策は、
死刑判決から依頼人を救えるかどうか?
 
メイスン・シリーズの最大傑作!
 
                        <ウラスジ>
 
ペリー・メイスン物の中で、
『奇妙な花嫁』との双璧をなす(と言われている)のが、
この『義眼殺人事件』。
 
判りやすい証拠はどこへ転がっていくのか?
義眼の使用者はひとりなのか?
”女青ひげ” の暗躍とは?
 
……”義眼” って聞くと、
ピーター・フォークを思い出す年代……。
 
<余談>
私らの世代からすると、
<ペリー・メイスン>と言えばこのドラマ。
 
 
レイモンド・バー。
 
テレビドラマにおいて、
『弁護士ペリー・メイスン』
『鬼警部アイアンサイド』
の二つの代表作をもつブラウン管(?)の帝王。
 
 
 
……ついでに ”アイアンサイド” と言ったら、
このテーマ曲。
 
”テレビ三面記事ウィークエンダー”。
 
1975~1984
ざこば師匠(当時は朝丸)や泉ピン子さんが 
”顔” でしたねえ……。
 
レイモンド・バー。
声は若山源蔵さん。
 
先に ”法の番人” ”正義の味方” 
の印象が強かったから、
ヒッチコックの『裏窓』の殺人鬼役を観た時は
ショックだったなあ……。
 
あとは<ゴジラ>のアメリカ版。
 
 
これも、だいぶ後で見たっけ。
 
<追記>
再び文庫に戻って。
 
このあとメイスンものは、
創元推理文庫に限られて、
以下のようなラインナップで続いていきます。
(順不同)
 
『すねた娘』
『幸運な足の娘』
『吠える犬』
『管理人の飼猫』
 
その他は
<レスター・リースもの>、
AAフェア名義の
<クール&ラムもの>
が、ちょこちょこ登場。