涼風文庫堂の「文庫おでっせい」480 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<石原藤夫、

平井和正>

 

1444「ハイウェイ惑星」

石原藤夫
短編集   石川喬司:解説  早川文庫
収録作品
 
1.ハイウェイ惑星
2.安定惑星
3.空洞惑星
4.バイナリー惑星
5.イリュージョン惑星
 
 
〔惑星シリーズ〕
今日も元気に宇宙を行く、
惑星開発コンサルタント社社員の
ヒノとシオダを待ちうけているものは――
 
無人の惑星に大河のような大ハイウェイが
密林の中を縦横に走り回っている
「ハイウェイ惑星」
 
自然の天体としては
あまりにもバランスがとれすぎている
「安定惑星」
 
などなど。
 
連作短篇シリーズ。
 
            <1986ハヤカワ文庫:解説目録>
 
 
まず、著者の石原藤夫さんについて。
 
最初に買ったSFの手引書、
ポプラ社の『SF教室』(筒井康隆編)の中の
日本の作家・編で、
 
 
星新一、小松左京、筒井康隆、
福島正実、光瀬龍、眉村卓、豊田有恒、平井和正
と並んで写真付きで紹介されていたのが石原藤夫さん。
 
工学博士の称号を持っていて、
自然科学をもとにした作品を多く書いている、云々。
 
そして私はこの本で
初めてそのお名前を知ることになりました。
 
まだSF慣れしてない頃だから、
思いっきり ”ハード” ぽい作品を描いていてそうで、
ちょっと敬遠していたところもありました。
 
しかし、この〔惑星シリーズ〕を見る限り、
そんな心配は杞憂でしかなかったようです。
 
 
〔惑星シリーズ〕 事始め その1
読者としては、
まず、題名から ”どんな惑星なんだろう?”
と想像の一歩を踏み出す。
 
次にその状況を把握して、頭のなかで絵を描いてみる。
 
最後に「締め」として
歴史的事実めいたものと、
そこから派生した現在を説明してみせる――。
 
<本編>
では表題作の「ハイウェイ惑星」から。
 
ここも
楽して『世界のSF文学:総解説』から借りパク。
 
 
まったく原始そのままの密林や砂漠の中を、
幅員数百メートルにも及ぶ完全舗装で
自己修復機能まで備えたハイウェイが、
惑星全面にわたって網の目のように走っている
奇妙な世界だった。
 
しかもその道路の上を、つぎからつぎと、
大小さまざまの車輪型生物がころがっていく。
太いもの、軽快なもの、
中にはひらたくひろがって空を飛ぶものもある。
 
おそらくどこかの高等文明が、
この惑星に植民しようと、まず道路をこしらえたが、
そのあと放棄され、
そこに新たな生命進化がはじまったものだろう。
 
はじめに道路があったため、この世界では、
車輪型をして速くころがる能力をもったものが、
優者として生き残っているのだ。
 
 
本編ではこうなります。
 
 
出現したのは四輪車だった。
……
四輪車の胴体は、
がま蛙を巨大にしてトサカをつけたような、
一種の爬虫類を思わせた。
……
その爬虫類の横につき出た短い四つ足の先端が、
車輪状になっているのだ。
……
時速は二十五キロぐらいか。
まさに快適なスピードである。
 
四輪車は一台――
いや一匹だけではなかった。
 
グロテスクな背中を見せて、
四、五匹がつづけさまに走っていった。
大きさはロバぐらいである。
いずれも、あと足、
つまり後輪のほうが大きく、
力強く回っている。
 
 
で、このシリーズの主人公、
ヒノ・シオダの ”弥次喜多コンビ” 、
途中で自らも<四輪車>と化してしまいます。
 
で……。
 
続く。
 
 

1445「ストラルドブラグ惑星」

石原藤夫
短編集       早川文庫
収録作品
 
1.コンピューター惑星
2.システム化惑星
3.エラスティック惑星
4.ストラルドブラグ惑星
5.パラサイト惑星
6.愛情惑星
 
 
〔惑星シリーズ〕
謎の知的生物が、
たがいに宿主と寄生者の関係を続ける
「パラサイト惑星」
 
不老不死を願った何十億という宇宙人が、
逆に、胎児同然の姿になってしまう
「ストラルドブラグ惑星」
 
キラキラとかがやく帯状のハチマキをつけた
「エラスティック惑星」
 
など、
ヒノシオ・コンビの活躍を描く連作短編集。
 
            <1986ハヤカワ文庫:解説目録>
 
 
 
次にこのシリーズの全体像と、
私の手持ち札を。
 
私の所有する〔惑星シリーズ〕は、
今のところこの二冊だけです。
 
ラインナップとしては、
 
『ハイウェイ惑星』 (短編集)
『ストラルドブラグ惑星』 (短編集)
『ブラックホール惑星』 (短編集)
『タイムマシン惑星』 (長編)
『アンテナ惑星』 (短編集)
 
すべて、(かつては)早川文庫で出ていました。
ほかにもあるようですが、そこはそれ。
 
〔惑星シリーズ〕 事始め その2
この表題作、不老不死の話が関わってくるんですが、
読んでいくうちに、次の文章に突き当たります。
 
 
つぎにはスウィフトのストラルドブラグ人だが、
これは、ガリバー旅行記四部作の第三部に出てくる
東洋の神秘国ラグナグの住民だ。
 
ラグナグ国では、きわめてまれではあるが、
不死人間が生まれてくることがある。
 
赤ん坊の時には左の眉毛のすぐ上に赤い痣があり、
成長するにしたがってそれが緑色になり濃紺色になり、
ついには漆黒となる。大きさも大きくなる。
 
これが不死人間のしるしで、
ストラルドブラグと呼ばれている。
 
<本編:138ページ>
 
この時には、”ラグナグ” に全く触れてないなあ……。
 
それはともかく。
 
<余談>
この『ストラルドブラグ惑星』あたりから、
当時のSFファンの連中はこんな遊びを始めました。
 
曰く、
自分なりの『○○惑星』を考えてみること。
 
『○○』にはストレート過ぎず、少々ひねった言葉を入れること。
 
たとえば
『吸血鬼惑星』よりは『ポリドリ惑星』、
『アガメムノン惑星』よりは『エレクトラ惑星』
みたいな感じ。
 
ホント、遊びです。
 
私は、
”一日のうちに、建設と破壊を繰り返す” 『ペネロペイア惑星』、
”永遠の恋人を待ち続ける” 『アッシャー惑星』
とかを提示したっけ。
 
……なんか女性がらみが多かったような。
 
あと、
”潜在意識にある理想の女性を具現化する” 『ハリー惑星』
……って『ソラリス』のまんまでいいじゃん。
 
もちろん、
科学的根拠とか考察は置いといて――。
 
今なら、
”来訪者が来ないと経済が成り立たない『インバウンド惑星』”
とか
”何をするにも目に見えぬ圧力がかかる『コンプライアンス惑星』
とか。
 
<追記>
かつて同人誌を出そうとした時、
友人は『シャンブロウ惑星』という作品を
提供してくれましたが……。
 
どんな内容だったか……。
 
 
 

1446「メガロポリスの虎」

平井和正
長編   あとがき  早川文庫
 
 
完全な自動管制機構の上に築かれた
二十一世紀のメガロポリス!
 
まさに絢爛たる自動文明を誇って、
無数のロボット、アンドロイドが人間の手足となって
労働に従事していた。
 
だがいまや人類の存在そのものに触れる
新しい危機が迫りつつあった……
 
それを象徴するのが、
”虎” そのものだったのだ!
 
著者初の長篇。
 
            <1986ハヤカワ文庫:解説目録>
 
 
そうなんだよな……。
 
一通り ”ウルフガイ” の
紹介を終えたあとに気づいたことは、
 
平井和正は、
もともと ”狼” ではなく、
”虎” だったんだ……。
 
この
『メガロポリスの虎』をはじめ、
『虎は暗闇より』、『背後の虎』、
出世作の短編『虎は目覚める』、
と、初期は ”虎に憑依されていた” のです。
 
で、早川文庫から角川文庫に総移動して、
そこでの『メガロポリスの虎』の
<ウラスジ>とおぼしきものがこちら。
 
より具体的で全体像を摑みやすいと思います。
 
 
コンピュータが支配する自動管制文明は、
人間の生気を奪い、
4Dフィルム“イマジネーター”による
疑似世界に引き籠もらせることで、治安の維持を図っていた。

人気番組を抱える
イマジネーター社の制作担当プロデューサー大村は、
イマジネーターによる不法なブルー・フィルム制作の
嫌疑をかけられる。
 
それは、
メガロポリスを支配する
AIコンピューターの“意志”の発動と関わっていたのだった。

仮想空間に耽溺する人類の近未来を予見する、
巨匠平井和正のSF処女長編作品。
 
<角川文庫のウラスジ>
 
1968年作。
 
デストピア小説風なんだけど、
ちょっと毛色が変わってるんだなあ……。
 
内部崩壊から事態が動き出す、
ってのは定石に近いんだけど、
その、人類をほぼほぼ支配してるコンピューターが
反乱を促すっていうか、
”虎” を ”目覚めさせている” って言うか……。
 
それを抑止するキャンペーン。
 
<虎狩り>……人間精神改革運動。
堕落した人間精神を救済し、道徳を高め、
人間の裡にひそむ凶悪な獣性を除去しようという主旨。
 
ラスト近くになると、
狼の群れも出現します。
 
やはり処女作には、
それ以降の作品世界の萌芽が詰まっている……
……のか?
 
主人公は大村という製作者ですが、
ほかに「ちびの私立探偵」赤原、
<虎狩り>エージェントの土屋、など、
他者の視点でも語られてゆきます。
 
<総括>
少々上から目線になってしまいますが、
なんか ”処女長編” ということで、
いろんなものを詰め込みすぎて、
いささか交通整理に行き詰まっているような
感じがします。
 
いわゆる、
”若書き” という奴でしょうか。
 
こんな感興を覚えた作品は他に、
三島由紀夫の『花ざかりの森』
荒俣宏さんの『別世界通信』
などがあります。
 
 
 
<余談>
今は ”虎” ブームの到来か。
 
NHKの朝ドラ『虎に翼』が牽引役。
 
中島敦の『山月記』にも波及か?
 
翼タイガー。
羽川翼が ”推し” なんで。
 
「何でもは知らないよ。知っていることだけ」
 
 
ガオガオ。