涼風文庫堂の「文庫おでっせい」471 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ジャック・

ウィリアムスン>

 

1419「宇宙軍団」

ジャック・ウィリアムスン
長編   野田昌宏:訳  早川文庫
 
 
 
太陽系の平和と秩序を守るガーディアン、
それこそわが宇宙軍団!
 
選びぬかれ、鍛えむかれたかれら精鋭スペースマンこそ、
太陽系文明の存続を担っていたのだ。
 
だがいま、
人類の住むすべての惑星が
滅亡の不吉な影に怯えていた……。
 
はるかな宇宙、
バーナード遁走星雲から、
恐るべき怪物メドウサが突如襲来したのだ。
 
千フィートを越える球体宇宙船
瞬時にしてなにものをも焼きつくさずにはおかぬ
得体の知れぬ赤ガス――
 
いまこそ、
宇宙軍団の真価が問われるべき時だった!
 
E・E・スミスの<レンズマン・シリーズ>に匹敵する、
本格スペースオペラの古典的名作!
 
                        <ウラスジ>
 
 
 
「THE LEGION OF SPACE」 (1934年)
 
LEGION=軍団
 
”軍団の総帥” ウィリアムスン登場。
 
 
<本編>
主人公は、ジョン・ウルナー。
又はジョン・スター。
そしてジョン・デルマー。
皆、同一人物。
 
いくつか名前があり、最初に説明があるものの、
ちょっと煩わしい。
 
彼が「宇宙軍団」の一員として、
 
 
1.親族と戦う。
 
エリック・ウルナーは嘲笑するようにその金髪の頭を振った。
  「おれは反逆者だ」
  「おれこそは、正統な太陽系の皇帝なのだ」
 
2.メドウサと戦う
 
まったく圧倒されてしまうほどの大きさである。
ねっとりとしめってゆっくり収縮する緑色の胴は
さしわたし二十フィートはあり、
蛇をおもわせるその触手は軽くその二倍ある。
 
まさにそれは邪悪そのものであった。
ブクブクにふくれ上がり、
緑色したゼラチンのようになかばすき通っている。
そして何十本と垂れさがっている触手も、
みな不気味にうごめいているのだ。
 
 
3.その他のBEMと戦う
 
・化物鯨
・ギザギザひれの化物
・アメーバの巨大なやつ
・ジャングルの人喰い蔓
 
そして口絵の怪物
 
 
それは大蛇に似ており象ほどの大きさである。
表面は固い赤色の甲羅に覆われていた。
突き出した無数の足の先端には鋭い爪がついている。
 
挑むは軍団の四人。
ジョン・ウルナー
ジョン・カラム
ハル・サムドウ
ギルス・ハビブラ
 
フューチャーメンのように<特殊能力>には欠けるが、
それぞれが特技を持ちあわせている――。
 
AKKAの秘密を握る、
グリーン・ホールの末裔、
アラドレ・アンタールを救え!
 
なんか取っ散らかってしまいましたが、
結構入り組んだお話。
 
そして戦前のSFにありがちな、
「信じる信じないは別にして」
という始まり。
 
バロウズもこんな感じだよな……。
 
プロローグ  未来を思い出す男
 
「わたしは一九四五年の三月二十三日の
午前十一時七分に死ぬことになっているのを知っているんです」
 
ここに紹介する宇宙軍団のジョン・スター――
本名ジョン・ウルナーの冒険のくだりは、
三十世紀の人類の反逆分子が
怪物メドウサとの同盟を求め、
これがまったくの無防備であった全太陽系へ
恐怖とおそるべき破壊をもたらした、
その時代の物語なのである。
 
               <彼を看取った医者の話>
 
……メタフィクションのお手本か?
 
 
 
 
 
 

1420「航時軍団」

ジャック・ウィリアムスン
長編   野田昌宏:訳  早川文庫
 
 
 
存在し得る可能性を持つ二つの未来世界――
 
美わしのジョンバールと邪悪なギロンチが、
その実在を獲得しようとたがいに鎬を削っていた。
 
時間流に沿って争われる
この熾烈な戦闘に勝利をおさめた側のみが、
未来世界として実在することになるのだ!
 
そして今、
その世界線が切断され
消滅の危機に立たされたジョンバールを救うべく、
航時軍団のクロニオン号は時の深淵のなかを航行していた。
 
だが、
クロニオン号の行手には、
宿敵ギロンチの怖るべき陥穽が待ちうけていたのだった!
 
巨匠ジャック・ウィリアムスンが、
迫力ある筆致でサスペンスフルに描く古典的名作!
 
                        <ウラスジ>
 
 
「THE LEGION OF TIME」 (1952年)
 
* 1952年は原書が単行本化された年
 
”軍団モノ” 再び。
 
「航時機」=「タイムマシン」
ってのは、
キース・ローマーのところで触れた通り。
 
で。
 
ええ~ここは久々に(でもないか)
『世界のSF文学:総解説』を丸写しで――。
 
航時軍団(The Legion of Time、1938)
 
いかなる未来も、存在する可能性を持っている。
だが、実際に存在し得る未来はただ一つしかない。
 
新聞記者のデニス・ランニングは、
清純な美女レゾネーの支配するジョンバールと
邪悪なソライニャの支配するギロンチという
二つの可能な未来世界の抗争にまきこまれた。
 
その戦いに勝った側が、実際に存在する権利を得るのだ。
 
ギロンチに通じる未来が人類の滅亡を意味し、
ジョンバールのそれが人類の繁栄を意味すること
ということを知ったランニングは、
様々な時間帯から選び出された航時軍団に入って、
ジョンバールを助けて戦うことになった。
 
だがギロンチのソライニャは、
地球の過去の歴史の中で、
ジョンバールの存在を可能にする鍵となるものを見つけ出し、
それを歴史の中から取り除いてしまったのだ。
 
そのために、ジョンバールの存在の可能性は消えて、
ジョンバールは消滅してしまうのである。
 
ジョンバールを復活させるために、
ランニングをはじめとする航時軍団の面々は、
ギロンチに忍び込み、その歴史を変えたもの、
それは何と一台の自動車の部品だったのだが、
それを盗み出し、歴史上の正しい時点に戻すことに成功した。
 
その瞬間、
ランニングたちを殺そうと
肉迫してきたギロンチの追手たちは消え、
そのかわりにジョンバールが復活し、
レゾネーの美しい笑顔もよみがえったのだ。
 
 
J・ウィリアムスンの『航時軍団』(一九三八年)は、
パラレル・ワールドを扱った作品としては
最も初期の作品であり、
その歴史的な意味が重要視されている作品である。
 
        <鏡明 『世界のSF文学:総解説』より>
 
 
ジョンバール分岐点
ラプラスの悪魔
バタフライ効果
 
理系オンチの私でも、
何となく耳にした言葉がこの作品を評するもののなかに
散在しています。
 
 
1921年の8月の午後、
12歳のジョン・バール少年が
道端の茂みで見つけたものは――
 
T型フォードの点火マグネットの部品か、
ただのきれいな色をした小石か――。
 
「かれがしゃがみこんで、
 そこから拾いあげたものによって世界線は分岐したのだ」
 
 
”もし、両親が恋に落ちなければ――”
 
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
でマーティの写真が薄れてゆくシーン、
なんか、この辺の応用でしょうか。
 
<余談>
多少、
冒険活劇の顔を持つ『宇宙軍団』は余裕の329ページ。
 
翻って、
分岐点というビーチフラッグの奪取に特化した
『航時軍団』は、スリムな219ページ。
 
<も一つ>
表紙絵は悪の権化、ギロンチのソライニャ。
 
よく見ると彼女の足もとには累々たる死体の山が……。
 
でも、
清純なレゾネーよりも、
女王さま然としたソライニャに、
より魅かれてしまうのは因果なもの。
 
女優で言うと、シビル・ダニング。
 
 
 

これぞ、”リアル悪の女王様” 。

 

<追記>

ウィリアムスン作品はこの後、

『プロジェクト・ライフライン』

を読んで一休止状態でした。

 

が、

ほぼ半世紀近く経って創元推理文庫から

『エデンの黒い牙』 (1948作)

が刊行され、再び読む羽目になってしまいました。

 

これはSFではなく怪奇小説で、

テーマは ”人狼” 。

 

……って、

シビル・ダニングの『ハウリング Ⅱ』の

ポスターと連動してるじゃん。

 

なんか自己満足。