涼風文庫堂の「文庫おでっせい」363 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<平井和正

 
 

1099「リオの狼男」

平井和正
中編   あとがき  早川文庫
収録作品
 
1.人狼、暁に死す
2.リオの狼男
 
 
最初に北野光夫と出会った時、
俺は夜更けの街を例のごとく
オールドファッションのブルSSSで飛ばしていた。
 
俺のスピードに刺激された一台の二輪車が無謀な運転で転倒、
瀕死の少年を救急病院へ運んだ俺は血を提供してやった。
 
だが――俺は知らなかったのだ。
 
輸血によって俺の、
狼人間の超常能力が、他に転移するなどとは!
 
持ち前の若さと美貌に加え不死身の肉体をすら得た光夫は、
その醜くゆがんだ性格から凶悪無残な犯行を次々重ねていく。
 
自分の蒔いた種は刈らねばならない。
 
奴と俺と、二人の狼男の対決は最早避けられぬ宿命であった!
 
                        <ウラスジ>
 
『人狼、暁に死す』
輸血でおかしくなる話は『狼の怨歌』にも出てきました。
 

 

 

 

『リオの狼男』

デビュー作、『狼男だよ』にも登場する、

犬神明の学生時代からの親友・石崎郷子――

                      

 

 

郷子は、三星グループの大立者の、名うての極道娘なのだ。

三星財閥の創始者、石崎弥太郎の曾孫にあたる。

 

                        <本文より>

 

……『三菱』、『岩崎弥太郎』……

 

 

その石崎郷子が、<人身売買ルート>に売られた――

と、いうことでリオまでやってきた次第。

 

果たして郷子は見つかるのか?

 

一応の決着はついたものの、

犬神明には帰国の意志がありません。

 

「おれは帰らない。まだブラジルでやることがある」

 

で、

『人狼地獄篇』へと続きます。

 

 

<余談>

しかし、

あとがきで平井さん御自身が書かれてるように、

 

『リオの狼男』=『犬神明』

『リオの男』=ジャン=ポール・ベルモンド

 

という図式が窺えて、ちょっとニヤついてしまいます。

 

 

 

アダルト・ウルフガイの犬神明は

再三ベルモンド似だ、とあったので、

彼の ”男” シリーズの代表作でもある

『リオの男』にかこつけて、

いつか犬神明をブラジルへ飛ばすつもりがあったのかしらん、

と勘ぐってしまいました。

 

ああ共演は、

フランソワーズ・ドルレアック

だったな……。

 

交通事故で25歳の若さで亡くなってしまった。

カトリーヌ・ドヌーヴのお姉さん。

 

 

これは『ロシュフォールの恋人たち』のスナップですね。

仲の良い姉妹。

 

いい感じ。

 

 
 

1100「人狼地獄篇」

平井和正

長編   あとがき  早川文庫

目次

 

一章  竜の玉座

二章  スルククの檻

三章  復讐行

四章  竜ドラゴの基地

 

 

俺を愛したばかりに死んだ、

日系二世のブラジル娘エリカ――

 

俺は天に誓ったのだ。

 

彼女を手にかけた殺人者をひっとらえ報復を果たすまでは、

決して日本に帰らないと!

 

だが、最高指導者を殺された上

エリカ殺しも俺の仕業と誤解する人民解放戦線の連中は、

新月期でなみの体力の俺を掴まえるや

夜を日に継ぐ拷問の連続。

 

ぶざまな姿で女呪術師ブランカに助け出されたのもつかのま、

CIA及び日本の大商社と手を結ぶ

ブラジル秘密警察の悪辣極まる陰謀に、

今度は政治犯収容所での

言語に絶する地獄の日々を送るはめとなる……!

 

おなじみ狼男ウルフガイ異郷に決死の活躍!

 

                        <ウラスジ>

 

『リオの狼男』の続編で、完結編。

 

目ざす仇を見つけて葬るため、

敵味方問わず、四面楚歌のなかで

拷問を受けながら徐々にターゲットに近づいてゆく、

犬神明のブラジル道行。

 

お馴染みのCIAはじめ、

人民解放戦線だのブラジル秘密警察だの、

いろんな意味で左右関係なく、

拷問の十字砲火を浴びる犬神明。

 

まあ不死身の狼男だから、

死なない事は判ってるんだけど、

早く反撃の<ジェノサイド>が訪れないかな、

と思ってしまいます。

 

これが<マカロニ・ウエスタン>なら

残り30分ぐらいで反撃の銃声が鳴り響くんだけど。

 

<余談> 1

あと、

時代なのか、この作品には

ナチの残党、ヨゼフ・メンゲレが登場します。

 

いつだったか、

ブラジルでメンゲレの墓が掘り返され、

DNA鑑定されたみたいなニュースが飛び込んできました。

それで本人の死亡が確認されたと――。

 

正直、そのニュースを知るまで、

メンゲレの名前は知りませんでした。

 

そして同時に、『メレンゲ』という料理用語も

その時点で覚えました。

 

<余談> 2

ナチの残党の多くがブラジルはじめ、

南米に逃れていたことは周知の事実でした。

 

そこから、

想像の翼を拡げた二つの作品、

――映画化もされた――

をここで紹介しておきます。

 

 

『マラソン・マン』

ウィリアム・ゴールドバーグ

 

 

 

『ブラジルから来た少年』

アイラ・レヴィン

 

 

この作品には、モロ、メンゲレ本人が登場します。

 

さいわい二冊とも読んでいるので、

詳しい話はその時にまた――。

 

……っていつのことやら。

 

 

 

 

 

取りあえず、

早川文庫での ”ウルフガイ” は

これで終わりです。

 

あとは、

緑の背表紙の角川文庫に引き継がれて行きます。