涼風文庫堂の「文庫おでっせい」359 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<有明夏夫、

E・R・バローズ、

河野典正>

 
 

1087「大浪花諸人往来」

耳なし源蔵召捕記事
直木賞受賞作

有明夏夫

連作長編   武蔵野次郎:解説
角川文庫
目次
 
1.西郷はんの写真
2.天神祭の夜
3.尻無川の黄金騒動
4.大浪花別嬪番付
5.鯛を捜せ
6.人間の皮を剥ぐ男
 
 
大阪朝日町東筋に住む源蔵親分は、
旧幕中は十手取縄を扱い、
御維新後は捕亡下頭として
警察の末端に繋がっている。
 
特異な容貌と度胸のよさを売物に
浪花の街ではちょいとした顔で
「海坊主の親方さん」といえば知らぬ者はいない。
 
明治十年に勃発した西南の役で
いまだ世情定まらぬ大阪で頻発する事件を追って
源蔵親分は今日も大奮闘。
 
西郷はんのニセ写真が売られている話や
東京の掏摸チボが大挙して出稼ぎにくる噂など
いつも頭を悩ますものばかりだが。
 
豊富な資料を基に、
俊英有明夏夫が明治開化期の生き生きとした世態、
細やかな人情を描いた長編連作小説。
 
第八十回直木賞受賞作。
 
                        <ウラスジ>
 
 
明治開化の探偵譚と言うと――。
 
勝海舟がセカンド探偵(ミスリード役)を演じる坂口安吾の
『明治開化 安吾捕物帖』、
弁護士の前身 ”代言人 ”が探偵となる和久俊三の
『代言人 落合源太郎の推理』
などを読みました。
 
が、しかし、この時代を舞台にした推理劇と言えば、
山田風太郎の一連の明治物――
『警視庁草紙』や『幻燈辻馬車』――
ちくま文庫からセットで出ていた
<山田風太郎 明治小説全集:全14巻>
に行き着くことになると思います。
 
ただ……
あいにく一冊も読まぬうちに、一旦、消えてしまいました。
 
まあ、いいか。
 
明治になって江戸を回顧する話っていうと、
『半七捕物帳』とか『壬生義士伝』とか。
 
<余談> 1
このシリーズはNHKでドラマ化され、
主役の源蔵を今は亡き桂枝雀さんが演じておられました。
その名も、『なにわの源蔵事件帳』。
 
 
枝雀師匠、
たしか、『ドグラ・マグラ』でも主演されてはりましたな……。
へえ。
うつ病が高じて、自ら死を選びはりましたが、
すでに名人の域に達してはりましたな……。
 
<余談> 2
かつて地下鉄御堂筋線で、
枝雀師匠と乗り合わせたことがあります。
 
ちょうど向かいの席で、お付きの人と一緒におられました。
 
なんやら手持無沙汰みたいで、キョロキョロしてはりました。

 

あれは、『小米』時代やったか、

すでに『枝雀』を継いでおられてはったか。
 
 
 
 
 
 

1088「類猿人ターザン」

エドガー・ライス・バロウズ
長編   高橋豊:訳  森優:解説
早川文庫
 
イギリスの若い貴族とその妻が、
任地へ向かう途中船上で反乱にあい、
アフリカ大陸のとある浜辺に置き去りにされた。
 
二世誕生の喜びもつかの間、
彼らはたび重なる不幸にうちのめされ
あえなく世を去る。
 
だが、その遺児は類人猿に拾われ、
密林の奥深くへと消え去った……
 
歳月は流れ、その子ターザンは、
密林の厳しい掟のもと、
あらゆるものを敵とする孤独な野生児として
逞しく成長する。
 
そしてある日、
浜辺の小屋に横たわる白骨を見た瞬間から、
彼は目まぐるしい流転の運命に巻きこまれていく!
 
世界の冒険小説史上最大にして永遠のヒーロー、
ここに颯爽の登場!
 
                        <ウラスジ>
 
ここでお断りしておかなければならぬことがひとつある。
それは原作に描かれているターザンとその世界は
劇場用映画、マンガ、テレビ映画などで描かれている
それとはいちじるしく異なる、という事実である。
 
映像や画像のターザンは、
密林に君臨する正義の味方、文明悪に対する自然の保護者、
心やさしい動物の友として登場する。
 
動物の言葉はわかるが、人間語は、
「おれ、ターザン。おまえ、ジェーン」
式の片言しか話せないことになっている。
 
映画をご覧になっているみなさんは、
数あるターザン役者中もっとも成功したといわれる、
例のジョニー・ワイズミューラーのイメージを
思い浮かべていただきたい。
 
ところが、原作におけるターザンはだいぶ性格がちがうのだ。
 
                    <森優:解説より>
 
どう違うかをちょっとばかり――
 
ターザンは語学の天才です。
 
以上。
 
<追伸>
キップリングの
『ジャングル・ブック』
モーグリもお忘れなく。
 
こちらはインドで狼に育てられた少年のお話。
 
ご存知ですよね。
 
 

 

 

1089「狂熱のデュエット」

河野典正
短篇集   片岡義男:解説  角川文庫
収録作品
 
1.狂熱のデュエット
2.腐ったオリーブ
3.グッバイ・タチカワ、グッバイ・ジム
4.ブルース・マーチ
5.ブルース・フィーリング
6.パドック一九七〇年
7.マザー
8.ブルースの魂
9.ピットインでヤマシタ・トリオをディグしていると
   妙な話が浮かんできた
10.生きながらブルースに葬られ
 
 
あいつは逮捕された。ざまあみろ!
<デュエット>の女の子が気をきかして、
あいつの好きなチコ・ハミルトンのふざけた曲を流していた。
 
ありがたく思って豚箱にはいりな。
そう、太鼓の強烈なビートに乗って出発だ。
 
――黒人の鼻をつく体臭、
たばこの煙でむせかえる場末のバーで、
一組の男女を襲ったアクシデント。
 
ギラギラした炎天、狂った若者たちに、
犯され妊娠し、死んでいったあわれな女の性。
 
河野典正の会心のジャズ小説集。
 
                        <ウラスジ>
 
 
ジャズ小説が本来なら本場であるはずのアメリカにも、
その数はすくない。
読んだ範囲内で思いうかべても、
十指にみたないか、あるいは、
やっと十本の指を折って数えることができるほどだから、
アメリカ人にとってもそれは書きにくい世界なのか、
あるいは、書くための内的な必然性のおこってこない世界なのか、
とにかくそんなありさまだ。
 
                 <片岡義男:解説より>
 
つい最近、
筒井さんの『ジャズ小説』という短編集を読んだばかりです。
 
しかし言われてみれば、
日本における ”ジャズ小説” と銘打たれたものしか
読んだ記憶がありません。
 
米文学に造詣の深い片岡義男さんがそう言うんだから、
間違いなく、アメリカの ”ジャズ小説” は不毛なのかな。
 
私が読んだ中だと、
『ジャズ・カントリー』 ナット・ヘンホフ
ぐらいかな。
 
あとは個人的に、
”これはジャズ小説といっていいだろう”
と思った、スタージョンの
『マエストロを殺せ』 河出文庫
『死ね、名演奏家、死ね』 早川書房
が印象的でした。
(同じ作品です)
 
って、同じ作品を、
違う表題と翻訳で ”二度読み” したせいで、
記憶に残らざるを得なかった、ってこともありますが。
 
 
<余談> 
ちなみに、
私が一番カッコイイ徒思った ”ジャズ小説” は
石原慎太郎元都知事の
『ファンキー・ジャンプ』
です。

 

【涼風映画堂の】
”読んでからみるか、見てから読むか”
 
今回は真逆とも言えるこの二本……
 
まずは原作に忠実と言われたこちら。
 
 

 
◎「グレイストーク」 
類人猿の王者 —ターザンの伝説-
   Greystoke:
The Legend of Tazan, Load of the Apes
 
1983年英米 ワーナー
製作:ヒュー・ハドソン/スタンリー・S・カンター/
    ガース・トーマス
 
監督:ヒュー・ハドソン
脚本:P・H・ヴァザック/マイケル・オースティン
撮影:ジョン・オルコット
音楽:ジョン・スコット
原作:エドガー・ライス・バローズ
出演
クリストファー・ランバート
アンディ・マクダウェル
ラルフ・リチャードソン
イアン・ホルム
ジェームズ・フォックス
シェリル・キャンベル
イアン・チャ―ルソン
ナイジェル・ダヴェンポート
 
 
* 監督は、”炎のランナー” ヒュー・ハドソン。
* 類人猿のメイクはリック・ベイカー。
 
* 主演は、”ハイランダー” クリストファー・ランバート。
* フランス人だから、”クリストフ・ランベール” 
   と呼ばれることもある。
* にしては、英国の名だたる名優と共演している。
* この作品で、ラルフ・リチャードソン、イアン・ホルム、
   『ハイランダー』で、ショーン・コネリー……。
 
* ジェーン役のアンディ・マクダウェル。
* 南部訛りがひどすぎて、この映画でグレン・クロースに
   台詞を吹き替えられたのは有名な話。
* しかし、英国人ならともかく
   同じアメリカ人に替えられるとは。
* どんだけ訛ってたんだ?
 
 
 
も一つ
 
 
◎「類猿人ターザン」 
Tarzan The Ape Man
1932年 (米)MGM
 
監督:W・S・ヴァン・ダイク
脚本:シリル・ヒューム/アイヴォー・ノヴェロ
撮影:ハロルド・ロッソン/クライド・デ・ヴィンナ
音楽:クレジットなし
原作:エドガー・ライス・バローズ
出演
ジョニー・ワイズミューラー
ニール・ハミルトン
C・オーブリー・スミス
モーリン・オサリヴァン
ドリス・ロイド
 
 
* ターザンと言えば、どうしたってこのお方。
* 「アー、アー、アー」の叫びとともに、
   蔦を使ってジャングルを飛び回り、
   ナイフを口に咥えて川を泳ぎ回る――
* その ”ターザンのステレオタイプ” を確立したのが
   このお方。
 
* ジョニー・ワイズミューラー
 
* 元水泳競技のオリンピアンで、金メダリスト。
 
* 見事な抜き手で身体を回転させながら、
   ジェーンと二人して川を泳ぐシーンは、
   ターザン映画の名シーンのひとつ。
 
* そのジェーン役のモーリン・オサリヴァン。
* ミア・ファローのお母さん――
* って言ったって、
   すでにミア・ファローが過去の人だからなあ……。