涼風文庫堂の「文庫おでっせい」335 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ツルゲーネフ、

サガン>

 

1019「猟人日記」

イヴァン・セルゲーヴィチ・
ツルゲーネフ
長編(連作短編集)   工藤精一郎:訳
  新潮文庫
目次
 
1.ホーリとカリーヌイチ
2.エルモライと粉屋の女房
3.マリーナの泉
4.郡医者
5.わたしの隣人ラジーロフ
6.郷士のオフシャニコフ
7.リゴフ
8.ベージンの草原
9.クラシーワヤ・メーチのカシヤン
10.領地管理人
11.事務所
12.狼 (ビリユーク)
13.二人の地主
14.レベジャン
15.タチヤナ・ボリーソヴナとその甥
16.死
17.歌うたい
18.ピョートル・ペトローヴィチ・カラターエフ
19.あいびき
20.シチグロフ郡のハムレット
21.チェルトプハーノフとネドピュースキン
22.チェルトプハーノフの最後
23.生きたご遺体
24.音がする!
25.森と曠野
 
 
 
一狩猟家が獲物を追って
山野をめぐる間に見聞した
深刻な農村生活を描くという形式をとった
長短25編の連作。
 
高いハーモニーにみちた、
自然と人間との交錯の描写は、
文学上の新しいジャンルを創造したと称される。
 
さらに、
美しい自然の中で呻吟する人びとへの限りない愛情は、
非人間的な農奴制度への冷徹なる告発であり、
アレクサンドル二世に農奴解放を決意させたともいわれている。
 
                        <ウラスジ>
 
 
プーシキンとともに、
明治初期から日本に入って来たツルゲーネフ。
二葉亭四迷が訳した、
ここにも収められている 『あいびき』 なんかもそう。
 
で、たまたま最近まで読んでいた
ツルゲーネフの 『ルーヂン』 で、
今さらながらに驚かされたことがあります。
 
それは当時のロシア貴族が
フランス語を使っていたという事。
しかも、
ロシア語をうまく操れない御仁もいたということ。
 
訳注にもこうあります。
 
十九世紀前期までのロシアの貴族は
日常語としてはフランス語を用い、
母国語たるロシア語を満足に知らない人も少なくなかった。
                     <多分、中村融>
 
勉強不足もいいところで、よくよく調べていくと、
あの 『戦争と平和』 もフランス語で書かれたと言う事。
 
知っている人からすれば、
「なにを今さら」
ってところでしょうが。
 
まあ母国語以外の言語から訳された外国文学は
そこそこ読んで来たものの
(分かりやすいのが 『千一夜物語』)、
まさか、一大文学山脈を誇り、
日本にも名だたる専門文学者がいる<ロシア文学>が……。
 
恨み節にもなってしまいますが、
『なんで?』
 
なんでも
ピョートル一世(大帝)<在位1682~1725>
の即位とともに、
 
”政治、経済、文化のあらゆる領域にわたって、
ヨーロッパ化の過程が急速にすすめられる”
                 <ロシア文学案内より>
 
で、当時勢いの合ったフランス語が自然に選ばれたらしい。
 
……フランスと言えば、
革命から逃れた貴族たちが、万単位でロシアに逃れ、
より親しみを感じるようになったようですが……。
 
さほど時を置かずして、
ナポレオンの<ロシア遠征>が待ち受けています。
これで一挙にフランス嫌いが増えたようでもあります。
 
前述したようにこの時代を舞台にした 『戦争と平和』 が
敵性語のフランス語で書かれているという、
ジレンマと言うか二律背反というか。
 
ちょっとズレてる
 
今、何かと話題になっている 
”ロシア” という国ですが、
”西側(西欧)デビュー” を画策して、
逆におかしなアイデンティティを披露している節があります。
 
『われわれも欧州社会の一員である』、
というのを、対手に認めて欲しいんだろうけど、
地理的にも歴史的にも、いろいろ難しいらしい。
 
まあ、長く生きてりゃ、勝手に(自然に)入って来る、
<ロシア事情>ってものが、誤謬ふくめ、
たくさんあるので、時に応じて晒していきたいと思います。
 
ここでは、
 
”ピョートル大帝の西欧デビュー”
t.A.T.u.” の西側デビュー”
 
そして
 
”プーチンの西欧デビュー”
 
これらの根底にあるものは一緒のような気がする。
 
側近がラスプーチン。
 
あとロシアに関する断片を少しだけ。
 
* 二級白人
* 大ロシア主義
* 国土は広いが大半は使いものにならない
* 周辺国、衛星国――
  ナポレオンにもヒトラーにも素通りされた
* 自国民を奴隷にしていた国
 
この辺がキーワード。
 
はい。
今日はここまで。
 
<本編>
有名な 『あいびき』 ですが、
ここに出て来る男は、俗物根性の権化のような野郎で、
覗き見していたツルゲーネフも憤怒の念にかられたようです。
 
で、このヴィクトル・アレクサンドルイチという男、
さっきのついでに言うと、
<ペテルブルグ・デビュー>
もしくは
<海外デビュー>
を目論んでるような話しぶりで、
ロシアの当時の若者を象徴しているような輩です。
 
なにごとも、
”捕らぬ狸の皮算用” 
地で行ってるような案配――
 
これも現在につながりそう。
 
 
 
 
 

1020「ブラームスはお好き」

フランソワーズ・サガン
長編   朝吹登水子  新潮文庫
 
美貌の夫と安楽な生活を捨て、
人生に何かを求めようとした三十九歳のポール。
 
孤独から逃れようとする男女の複雑な心模様を描く。
 
                  <新潮社:書誌情報>
 
 
あっさりしすぎの説明なので、
朝吹さんのあとがきから、
大まかで、判りやすいストーリーを。
 
 
美貌な夫と安楽な生活を捨てて、
何か他のものを人生に求めようとした
聡明で美しいポールという女性。
 
商店のウィンドーの飾りつけ専門の
エタラジストとして独立し、
ロジェという自分より少し年上の中年の恋人もいる。
 
そこへ若くて美しいシモンという
金持の息子が彼女に夢中になる。
 
彼は十五の年の差も無視して
結婚してくれというぐらいポールに真剣に恋してる。
 
しかし、ポールは、浮気な中年男ロジェを
すっかり忘れ切ることができない……。
 
              <朝吹登水子:あとがきより>
                                           
 
『ブラームスはお好きですか?』
この言葉が、
『とつぜん広大な荒野の世界を露わに見せてくれたように思えた』
とポールは考える。
 
曰く、
『彼女は自分がスタンダールを好きだと人にもいい、
自分でもそう思いこんでいた。
 
そこが問題なのだ。
 
そう 『思いこんで』 いる……。
もしかしたら、ロジェを好きだということも
単にそう 『思いこんで』 いるだけなのかもしれない。
 
 
恋が始まる、こじつけと自分史改竄……。
しばらくは熱にうなされることになる。
(ちょっと厳しいか)
 
で、終局。
 
 
「シモン、シモン」
そして、なぜだかわからずに、こうつけたした。
「シモン、もう、私、お婆さんなの、お婆さんなの」
 
別れに際して、涙をためて走り去る青年シモン。
 
それを表して、
 
”かれは幸福な人間のように駆けていた。”
”かれは二十五だった。”
 
と綴るサガン。
天才少女の三作目。
 
 
<余談>
ユーミンのアルバム、
MISSLIM>に収録されている 『私のフランソワーズ』。
 
これはフランソワーズ・アルディのことですが、
たまに、フランソワーズ・サガンのことだと
言っていた人もいました。
 
”荒井由実” 時代の事です。
 
そう言えば、
2022年5月現在、
テレビのCMでフランソワーズ・アルディの
『さよならを教えて』 が使われていますね。
 
役所広司/神木隆之介/杉咲花、御三方が出演されている、
カフェオレかなんかのCMだと思います。
 
懐かしい。
 
ヴェラ・リンのオリジナルも聞いたけど、
なんか<バリー・マニロウ風・盛り上がり方>
の楽曲に仕上がっていて、
なんか違う、って感じでした。
 
 
訳詞はセルジュ・ゲンズブール。
彼はこの三年前、『夢見るシャンソン人形』 も作っています。
 
 
<閑話休題>
で、
本当は、ブラームスが好きじゃないの?
 
 
私自身も、
『ハンガリー舞曲』(第5番)と、
『子守唄』 ぐらいしか思い浮かばない。
 
あと、
リック・ウェイクマンが<YES>時代、
『こわれもの』 のなかでやってたやつ。
 
【涼風映画堂の】
”読んでから見るか、見てから読むか”
 
 
 
 
◎「さよならをもう一度」 Goodbye Again
 
1961年 (米)ユナイト
製作:アナトール・リトヴァク
 
監督:アナトール・リトヴァク
脚本:サミュエル・テイラー
撮影:アルマン・ティラール
音楽:ジョルジュ・オーリック
原作:フランソワーズ・サガン 『ブラームスはお好き』
出演
イングリッド・バーグマン
イヴ・モンタン
アンソニー・パーキンス
ダイアン・キャロル
ジェシー・ロイス・ランディス
ミシェール・メルシェ
 
 
* アナトール・リトヴァク。
   ウクライナのキエフ出身。
* バーグマンのハリウッド復帰第一作目の
   『追想』 でメガホンをとってる。
* 『追想』 はロシアの皇女アナスタシアのお話。
 
* なんかロシアづいてるなあ……。
 
 
* イングリッド・バーグマン。
* 晩年の、
   完全なる演技派女優に向けての助走期間。
 
 
* このころ、往年の大女優が
   年の離れた若者と恋に落ちるって映画が目立った。
 
* ヴィヴィアン・リーの 『ローマの哀愁』(1961年)
   若者はウォーレン・ビーティー。
* キャサリン・ヘップバーンの 『旅情』(1955年)
   若者はロッサノ・ブラッツイ。
* ダニエル・ダリューの 『赤と黒』(1954年)
   なんかもそうかな。
   ジュリアン・ソレルはジェラール・フィリップ。
 
* で……文字通りの題名。
* 『年上の女』(1959年)
* 主役はシモーヌ・シニョレ。
   つまりはイヴ・モンタンの奥さん。
 
 
* 若者はローレンス・ハーヴェイ。
* シモーヌはこの作品でアカデミー賞の主演女優賞に輝く。
* 私的には、『嘆きのテレーズ』 の時の彼女が好きだった。
 
* 実際のモンタン&シニョレ夫妻は、
   モンタンとマリリン・モンローとの不倫やら何やらで、
   シモーヌが自殺未遂を起こしたりして……。
 
 
* ……結局は元の鞘におさまり、
   彼女が死ぬまで添い遂げたそうな。
 
 
* さて、そのイヴ・モンタン。
* この作品じゃさほど印象に残らないか。
 
* 枯葉よ~♫
 
* モンタンといえばコスタ・ガブラスの三部作と、
   『恐怖の報酬』。
* これを観なけりゃ始まらない。
 
 
* アンソニー・パーキンス。
* すでに 『サイコ』 でノーマン・ベイツを演じた後。
 
 
* この作品のあと、『死んでもいい』 で、
   また年下の恋人を演じている。
* お相手はメリナ・メルクーリ。
* 原作は ”生さぬ仲” の母と息子の話。
 
* アイビールックの象徴、”トニパキ”。
* ”トニパキ” は彼の愛称。
* トニー・パーキンスの略。
 
* 彼に関しては 『サイコ』 の時に、ちょっとだけ詳しく。
 
 
 
 
 
 
これで、1020冊終了。