涼風文庫堂の「文庫おでっせい」  275. | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<柴田翔、

大江賢次、

川端康成>

 
 

835.「ノンちゃんの冒険」

柴田翔
長編   宮原昭夫:解説  新潮文庫
 
上京して、
女子短大英文科に籍を置くこと一年余、
はたちにもならないノンちゃんに、子供ができた。
 
父親たる哲学君は、
”世界が暮れ落ちる今、ぼくらは旅立つのだ”
と呟やいて家を出たまま、行方が知れない。
 
生むべきか、生まざるべきか……?
 
終末観ただようアスファルト・ジャングルの中、
この生き難い世を生き続けるすべての人々に贈る、
スリリングで心暖まる、都会のメルヘン。
                                <ウラスジ>
 
 
ちょっと年齢層高めの寓話風メルヘン。
 
なんたって大学生だもん。
事の良し悪しは判断できるよね。
 
 
……と、言うことで、
解説の宮原昭夫さんが冒頭でいきなりこんなことを書かれていました。
 
 
この小説のことを
――たわいのない女の子が
   たわいのないことをしでかすと、
   中年のおじさまたちが寄ってたかって
   それをできるだけむずかしく考えてしまう――
と要約した人が居ましたが、
まあ、そう言ってしまえば身も蓋もない。
                       <宮原昭夫:解説より>
 
否定せんのかいっ。
 
ノンちゃんの呼び名の由来は、
やっぱり石井桃子さんの 『ノンちゃん雲に乗る』 からきたものらしい。
あとは<のんきのノンちゃん>。
 
その他の登場人物は、
<ウラスジ>にもある 『哲学君』 や、
『年金さん』、『仙人さん』、
それに、『マクさん』。
(米国務長官マクナマラにちなんで、とあるが、
ロバート・マクナマラはケネディ、ジョンソン大統領時代の国防長官)
 
このあたりのネーミングも、”寓話” らしい。
 
ただ、メルヘンというには、出だしがちょっと……。
 
房事が終ったあとの睦み事から始まるもんで、
SEX用語がバンバン出て来ます。
 
で、<ウラスジ>にある通り、妊娠。
 
ハムレットなみに迷った(?)挙句――。
 
 
あの冒険と迷いと決断に充ちみちた日々から、
七カ月ほどたったある日、
ノンちゃんは玉のような女の子を生んだ。
 
 
これまた、”寓話” のなせるワザ。
 
めでたしめでたし――、
 
か?
 
<蛇足>
しかし、こんな作品を書いちゃうところが、
高橋和巳とは違うところでしょうね。
 
 
 
 
 

836.「 絶 唱 」

大江賢次
長編   小松伸六:解説  講談社文庫
目次
 
第一章 山鳩の小雪
第二章 湖畔の記録
第三章 葬婚歌
 
 
山陰の大地主の跡取りとして
何ひとつ不足のない青春を過す園田順吉が、
初めて知った真実の恋。
相手は小作人の娘小雪だった。
身分差ゆえ周囲の反対は激しい。
ふたりは松江に逃げ、
順吉の友人の庇護でささやかな新所帯をもつ。
だが、戦争の激化が再び彼らの純愛を揺さぶり始めた!
愛の高貴を描く不朽の青春文学。
                               <ウラスジ>
 
山陰の美しい山河のほとりで、
小さいが鮮烈に咲いた青春の愛の花、
そして花はやがて散るさだめ……
不朽の青春文学!
                               <帯スジ・裏>
 
表紙に付いてる帯の写真は、
三原じゅん子(順子)さんと、広岡瞬さんですね……。
 
三原さんは国会議員として、いまだによくお見かけしますが、
広岡さんはどうなんだろう?
 
で。
ここから
<百恵・友和のゴールデン・コンビ>
で映画化された作品が続きます。
 
 
しかし、この<ゴールデン・コンビ>の作品、
前にも言ったと思うけど、
殆んど観ている割には、
CM付きのテレビ放映されたものしか観てないような……。
ちゃんとした<CMなし・ノーカット版>で観たいなあ。
 
NHKのBSか、
デアゴスティーニに頑張ってもらいたいものです。
 
 
で……。
解ってるんです。
こっちが本家だってことは。
 
どちらかと言えば、
というよりも、思いっ切り左に触れた
プロレタリア文学っぽい内容と言い、
最後のアイリッシュ並みの ”死者との婚礼” と言い、
ナンもカンも含めて、大筋は把握していましたし、
名作であることは認識しております。
 
ですが、
私にとっての 『絶唱』 は、
中一時代に連載されていた、
吉岡道夫さんのこちらの 『絶唱』 でした。
 
 
 
連載物で、
次の号が出るのを楽しみにしていた読物は、
後にも先にもこの小説だけでした。
 
そして、『絶唱』 と名が付くもの、
恋人の女性が命を落とす物語に相違なし、
との認識に至りました。

 
 
 
 
 

837.「 古 都 」

川端康成

長編   山本健吉:解説  新潮文庫
 
 
捨子ではあったが
京の商家の一人娘として美しく成長した千恵子は、
祇園祭の夜、
自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。
 
二人はふたごだった。
 
互いにひかれあい、懐かしみあいながらも
永すぎた環境の違いから一緒に暮すことが出来ない……。
 
古都の深い面影、
移ろう四季の景物の中に由緒ある史蹟のかずかずを織り込み、
流麗な筆致で描く美しい長編小説。
                               <ウラスジ>
 
小説版:京都ナビ。
 
ノーベル賞の受賞に一役買ったと言われるのが、
<KYOTO>の案内と行事の紹介。
 
そして、
百恵ちゃん(あえてこう呼ばせていただきます)
の引退記念映画。
 
もひとつ。
どっかで書いたと思うけど、
女優さんにとっての<一人二役>の登竜門。
 
切ない双子の物語。
 
ケストナーの 『二人のロッテ』 とは対照的。
 
<裏事情>
やべっ。
リンドグレーンと勘違いしてた。
ケストナーだったんだ。