涼風文庫堂の「文庫おでっせい」  175. | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ディクスン・カー、

横溝正史、

かんべむさし>

 
 

553.「夜歩く」

ジョン・ディクスン・カー
長編   井上一夫:訳  戸川安宣:解説
創元推理文庫
 
パリ警視庁を一手に握る名探偵アンリ・バンコランたちが
見張るクラブの中で、新婚初夜の公爵が無惨な
首なし死体となって発見された。
 
しかも、現場からは犯人の姿が忽然と消えていた!
 
夜歩く人狼がパリの街中に出現したのだろうか。
 
不気味な犯人の魔の手は、さらに第二の犠牲者を求めて、
差しのべられる……!
 
本格推理の巨匠ディクスン・カーが自信満々、
この一作をさげて登場した記念すべき処女作。
 
その怪奇趣味をもっともよく伝える密室ものの巨編。
完訳決定版。
                               <ウラスジ>
 
 
ギデオン・フェル博士やHMことヘンリー・メルヴィル卿に
負けず劣らず(?)人気のある名探偵バンコランの一作目です。
と、同時にカー自身の処女作でもあります。
 
カーと言えば、”密室”、
”密室” と言えばカー、
と言われるほどの代名詞的な密着度。
 
また、ノン・ミステリーでも著された、
”密室” に匹敵するほどの怪奇趣味。
 
カーを彩るこの二つの特徴が、早くも一作目から横溢しています。
 
処女作には、その作家のすべてが詰まっている、
とはよくいったもの。
 
で、その後は、”雀百まで踊り忘れず”。
 
私個人としては、『皇帝のかぎ煙草入れ』と『ユダの窓』が
お気に入りです。
それはまたその際に。
 
 
 
 
 
 

554.「真説 金田一耕助」

横溝正史
長編   あとがき  角川文庫
 
聖バレンタイン・デーに名探偵金田一耕助を襲った
毒入りチョコレート事件!
といえば、親愛なる読者諸兄はさぞかしびっくりされたことと思う。
 
しかしご安心あれ。
 
不死身の金田一耕助は無事、九死に一生を得たのである。
 
事件の真相はこうだ。
ある親切な(?)編集者氏が
「読者から金田一先生にバレンタインの贈り物です」
と可愛い小包を届けてくれた。
自称金田一耕助の小生は遠慮なく戴く。
中身はチョコレートだった。
 
だが食べ終ってから数日後、
世間を震撼とさせたあの毒入りチョコレート事件が発生したのである!
 
猛烈な横溝ブームの最中、
その熱気にとまどいながらも淡々と日々を過ごす
著者の心境を吐露した好エッセイ集。
                                <ウラスジ>
 
 
カーの次が横溝正史御大とは……。
 
ブーム真っ只中時分に書かれたエッセイ集ですが、
取り上げられている時代が多岐に渡っています。
 
もちろん、メインとなるのは時代的に
映画『犬神家の一族』であったり、
テレビドラマの<横溝正史シリーズ>であったりして、
それはそれで興味深いものがあります。
”石坂金田一はどうだ、古谷金田一はこうだ” とか。
 
ただ私としては横溝御大の普遍的な嗜好や大昔の話に、
より興味を抱いてしまいます。
 
盟友・乱歩に対する思い、
菊田一夫とともに、”金田一耕助” のモデルになったという
城昌幸の話、
本名は<マサシ>でペンネームが<セイシ>であること
……などなど。
 
また御大の<カー好き>は有名で、
このエッセイでも盛んに取り上げています。
その他の海外ミステリーにも言及されていて、これがまた楽しい。
 
しかし、私はブームが起きる前に、
そこそこ読み終えてしまっていたんだなあ……。
 
 
今じゃ誰でも知ってる<金田一耕助>。
 
 
 
 
 
 

555.「決戦・日本シリーズ」

かんべむさし
短編集   筒井康隆:解説  早川文庫
収録作品
 
1.まわる世間に
2.背で泣いてる
3.追いこされた時代
4.決戦・日本シリーズ
 
 
前述の横溝御大は熱心な近鉄ファンだった……。
近鉄も阪急も消滅しちゃった。
 
 
との前振り(?)はさておき、
<ウラスジ>がないので、
ここは「世界のSF文学総解説」の力を借りて
(パクって)、
【アウトライン】から剽窃します。
 
その年、セは阪神、パは阪急が独走、
日本シリーズでの対決は決定的になった。
 
両チームのオーナーは阪神間を走るふたつの私鉄であり、
両チームは沿線の住民の意識を代表する存在でもある。
 
ここに着目したスポーツ新聞は記念行事として、
優勝チームは負けチームの電車路線にパレード電車を乗り入れ、
ファン一〇〇〇名を招待、
ドンチャン騒ぎの宴会電車を走らせるという企画を発表した……。
 
続いて<著者略歴>。
 
かんべむさしは一九四八年生まれ。
SFマガジン・コンテストに応募した
「決戦・日本シリーズ」でデビューした。
ユニークな発想と軽妙な語り口によるユーモアSFにより、
いわゆるSF第二世代の代表的作家として注目された。
海外SFの影響がなく、SFファンダムに関った経験もないことから、
その作風は従来のSFのパターンにとらわれることなく自由であり、
この点が、以後の若い書き手の登場の呼び水となっていることも
見逃せない。
                 <堀晃:「世界のSF文学総解説」より>
 
日本SFの第二世代――
上の記事を書いた堀晃をはじめ、田中光二や山田正紀、
かんべむさしと同じくユーモア系のヨコジュンこと横田順彌。
 
この辺までかな、熱心に読んでいたのは。
 
では表題作について。
 
この作品が出た頃は正しくオンタイムで関西に住んでいたので、
それなりの思い入れがあります。
 
今となっては合併・合体して、パ・リーグの再編含め、
わけが解らなくなっていますが、
当時のことを思い出しつつ書いてみます。
 
これは<ネイティヴ>ではなく、<移民>の目線になると思いますが。
 
*阪神電鉄は単線、阪急電鉄は複数線。
*阪神・庶民的、阪急・高級。
*阪神・貧乏、阪急・金持。
 
*私の周辺では、阪神デパートの<デパ地下>の
  利用頻度が高かった。
*私個人は、梅田界隈で地上に出た事が殆どなく、
  阪神デパート、阪急デパートの姿を拝むことも少なかった。
*2021年現在、私の故郷の玄関口 『博多駅』 の駅ビルは、
  なぜか『阪急百貨店』。
*肝心の野球選手のモデル
 阪急 邪魔田……山田
     渋柿……正垣
     河豚本……福本
     白熊……大熊
     果糖……加藤秀
     長寿……長池
     田植監督……上田利治監督
 阪神 真夏……江夏
     銭田監督……金田正泰監督
*ちょうど私がプロ野球を見始めた頃です。
 でもまだ江夏が南海に行く前だなあ……。
 
*で、野球のシーンは殆どありません。
 
エンディングは上下二段に分かれ、
上段は阪神が負けた場合の、
下段は阪急が負けた場合の、
その後の様子が同時進行で描かれていきます。
 
その行き着く先は――。
というところで、そこは最後のお楽しみ。