<ヴェルヌ、
アイルズ、
ヴァン・ダイン>
309「地底旅行」
鉱物学の世界的権威リデンブロック教授は、
十六世紀アイスランドの
錬金術師が書き残した謎の古文書の解読に成功した。
それによると、
アイスランドの死火山の噴火口から
地球の中心部にまで達する道が通じているというのである。
教授は勇躍、
甥を同道して地底世界への大冒険旅行に出発した。
地球創成期からの謎を秘めた人跡未踏の内部世界。
現代SFの父といわれるジュール・ヴェルヌの
驚異的な想像力が縦横に描き出した不滅の傑作。
<ウラスジ>
読む前からワクワクさせてくれる小説の一つです。
ただ、この物語に関して言うと、
原作より先に映画の方を観ていました
◎「地底探検」
Journey to the Center of the Earth
チャールズ・ブラケット
大筋は原作通りですが、探検隊の数が違います。
原作は三人ですが、
映画だと四人、しかも女性が入っています。
その女性に対するセリフがなぜか記憶に残っています。
いざ探険に出発と言う時に、
リンデンブロック教授が、ゲタボルグ未亡人に確かめます。
「失礼ですが、◯◯をしていらっしゃいますね?」
○○とは女性の下着の事です。
コルセットだかビスチェだかは判りません。
「……音で判るんです。脱いで下さい」
とかなんとか。
吹き替え版で耳にし、字幕版で目にしました。
何てことはないシーンなのですが、
その場面が近づいてくると、ドキドキしたものです。
妄想逞しいこと……。
しかし、B級の匂いがプンプンするスタッフだな――。
監督のヘンリー・レヴィンなんか、
”サイレンサー” シリーズだもんな。
ああ。
今思い出した。
ジェームズ・メイスンは、同じヴェルヌ原作で、
映画化された『海底二万哩』の中で、
<ネモ船長>を演じていた。
それで探険の途中に、
奇ッ怪な光景に出くわしたり、
恐竜に襲われそうになったり、
地底の海に乗り出したりします。
最後は火山の噴火を利用して地上に戻ってきます。
原作では、イタリアのストロンボリ。
(ロッセリーニとバーグマンの映画でお馴染み)
映画の方は覚えていません。
さて子供心に訴えて来る ”恐竜” です。
原作では、
(多分)アーケロン、プレシオサウルス、モササウルス
が出て来ます。
アーケロンは亀、あとのふたつは<海竜>ですね。
映画の方は――。
いわゆる ”トカゲ特撮” です。
本物のトカゲやワニに
作り物の角や背びれをつけて撮影したものです。
トカゲは大トカゲ、ワニは若いメガネカイマンでしょう。
このやり方、ハリーハウゼンが携わった
『恐竜100万年』まで使われていたような。
310「殺意」
フランシス・アイルズ
長編 大久保康雄:訳 中島河太郎:解説
311「グリーン家殺人事件」
ニューヨークのどまんなかにとり残された
前世紀の古邸グリーン家で、
二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。
この事件をかわきりに、
憎悪、嫉妬、貪欲がうずまくにごりきった空気のなかに、
幽鬼のように一家のみな殺しを企てる
姿なき殺人者が跳梁する。
あいつぐ連続殺人に一家の人間は
一人、二人と減っていく。
とうぜん、残りのなかに犯人がいるにちがいない。
しかし、冷徹、神のごときヴァンスも、
この難事件を前にしてしだいに
焦慮のいろを加えてきた……。
二千冊の推理小説を読破したヴァン・ダインが、
緻密な計算と構成にもとづいて書きあげた第三作は、
一ダースにのぼる彼の全作品中
一二をあらそうほどの決定的名作となった。
<ウラスジ>
『僧正殺人事件』と『グリーン家殺人事件』。
ヴァン・ダインの双璧をなす作品です。
『僧正殺人事件』は、<童謡殺人>の魁として、
クリスティの『そして誰もいなくなった』を生みました。
『グリーン家殺人事件』は、
屋敷内という<クローズドサークル>で
起こる連続殺人として、
クイーンの『Yの悲劇』を誘発しています。
また、日本では浜尾四郎が『殺人鬼』を、
その影響下にある事を
隠さずに著わしています。
まさに近代本格推理小説の、
二つの潮流を作った二作品でしょう。
”天才” フィロ・ヴァンスが、
犯人の見当が全くつかないとして、
日頃のペダンチックな物言いが押さえられています。
ですので、
『僧正殺人事件』よりは遥かに読みやすくなっています。
<警告>
もし、貴方が内外の古典ミステリーのファンで、
高木彬光の『能面殺人事件』
を今から読もうとされている場合の注意点。
必ずや『グリーン家殺人事件』を
先に読了されるように。
すでに読んでおられる方は、何の問題もありません。
『能面殺人事件』は、
日本探偵作家クラブ賞に輝く名作です。
しかし、ある<章>の題名が、
モロ、”グリーン家の○○”
となっています。
少々勘の鈍い人でも、
『グリーン家殺人事件』の犯人の事なんだろうな、
と解かってしまうでしょう。
くれぐれも、お気をつけください。
……『殺人鬼』にもそれっぽいところがあったような……。
それにしても、
昔の探偵小説は<コード>がゆるいなあ……。