涼風文庫堂の「文庫おでっせい」96 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ヴェルヌ、

アイルズ、

ヴァン・ダイン>

 
 

309「地底旅行」

ジュール・ヴェルヌ
長編   窪田般弥:訳  創元推理文庫

 

 

鉱物学の世界的権威リデンブロック教授は、

十六世紀アイスランドの

錬金術師が書き残した謎の古文書の解読に成功した。

 

それによると、

アイスランドの死火山の噴火口から

地球の中心部にまで達する道が通じているというのである。

 

教授は勇躍、

甥を同道して地底世界への大冒険旅行に出発した。

 

地球創成期からの謎を秘めた人跡未踏の内部世界。

 

現代SFの父といわれるジュール・ヴェルヌの

驚異的な想像力が縦横に描き出した不滅の傑作。

 

                        <ウラスジ>

  

 

 

読む前からワクワクさせてくれる小説の一つです。

 

ただ、この物語に関して言うと、

原作より先に映画の方を観ていました

 

 

 

◎「地底探検」 

Journey to the Center of the Earth

1959年 (米)
監督;ヘンリー・レヴィン
脚本:ウォルター・レイシュ
   チャールズ・ブラケット
撮影:レオ・トーヴァ―
音楽:バーナード・ハーマン
出演
パット・ブーン
ジェームズ・メイスン
アーレン・ダール
ピーター・ロンソン
ダイアン・ベイカー
セイヤ-・デヴィッド
 

大筋は原作通りですが、探検隊の数が違います。

 

原作は三人ですが、

映画だと四人、しかも女性が入っています。

 

その女性に対するセリフがなぜか記憶に残っています。

 

いざ探険に出発と言う時に、

リンデンブロック教授が、ゲタボルグ未亡人に確かめます。

「失礼ですが、◯◯をしていらっしゃいますね?」

○○とは女性の下着の事です。

コルセットだかビスチェだかは判りません。

「……音で判るんです。脱いで下さい」

とかなんとか。

 

吹き替え版で耳にし、字幕版で目にしました。

 

何てことはないシーンなのですが、

その場面が近づいてくると、ドキドキしたものです。

 

妄想逞しいこと……。

 

しかし、B級の匂いがプンプンするスタッフだな――。

 

監督のヘンリー・レヴィンなんか、

”サイレンサー” シリーズだもんな。

 

ああ。

今思い出した。

ジェームズ・メイスンは、同じヴェルヌ原作で、

映画化された『海底二万哩』の中で、

<ネモ船長>を演じていた。

 

 

それで探険の途中に、

奇ッ怪な光景に出くわしたり、

恐竜に襲われそうになったり、

地底の海に乗り出したりします。

 

最後は火山の噴火を利用して地上に戻ってきます。

 

原作では、イタリアのストロンボリ。

(ロッセリーニとバーグマンの映画でお馴染み)

映画の方は覚えていません。

 

 

さて子供心に訴えて来る ”恐竜” です。

 

原作では、

(多分)アーケロン、プレシオサウルス、モササウルス

が出て来ます。

 

アーケロンは亀、あとのふたつは<海竜>ですね。

 

映画の方は――。

いわゆる ”トカゲ特撮” です。

本物のトカゲやワニに

作り物の角や背びれをつけて撮影したものです。

 

トカゲは大トカゲ、ワニは若いメガネカイマンでしょう。

 

このやり方、ハリーハウゼンが携わった

『恐竜100万年』まで使われていたような。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

310「殺意」

フランシス・アイルズ

長編   大久保康雄:訳  中島河太郎:解説

創元推理文庫
 
 
 
イギリスの田舎町の開業医ビクリー博士は、
妻のジュリアを殺そうと決意し、
周到な計画のもとに犯行へと移った。
 
完璧を誇る殺害計画、
犯行過程の克明な描写、
捜査の警官との応酬、
完全犯罪を目前に展開される法廷での一喜一憂、
そして意外な結末は殺人鬼の心理を描いてあますところがない。
 
ストーリイを探偵の側からではなく
犯人の側から描く倒叙推理小説に、
新しい生命を吹きこんだ英国推理作家クラブの設立者、
本名アントニイ・バークリー・コックスが描く本書は、
 
クロフツの「クロイドン発12時30分」
リチャード・ハルの「伯母殺人事件」
と並ぶ倒叙推理小説の三大名作の一つである。
 
                        <ウラスジ>
                                                
 
この、『三大倒叙推理小説』という称号は、
今でも揺るぎないようですね。
 
良かった。
 
エドマンド・ビグリー博士が妻を殺す決心をしてから、
それを実行に移したのは、何週間かたってからのことだった。
人を殺すとなれば、ただごとではすまされない。
うっかりしくじったら身の破滅である。
ビクリー博士は破滅の危機までおかす気はなかった。
 
どこかユーモラスにも見える冒頭部分から、
物語は始まります。
 
一人称の手記という形を取らずに、
三人称でビクリー博士の言動や内面が綴られています。
 
これも、のちのち、効いてきます。
 
ちなみに、妻ジュリアは、
全13章(エピローグ含まず)のうち、
7章までは生きています(?)。
 
それで当然、法廷のシーンが登場するのですが……。
 
 
たった一ページの<エピローグ>を除けば、
”完全犯罪” は成立します。
 
いえ、ある意味、<エピローグ>を加えても、
”完全犯罪” は成り立っているのです。
 
ところが――。
 
 
あとは、本編をお読みください。
 
 
 
 
 
 

311「グリーン家殺人事件」

ヴァン・ダイン
長編   井上勇:訳  中島河太郎:解説
創元推理文庫
 

 

ニューヨークのどまんなかにとり残された

前世紀の古邸グリーン家で、

二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。

 

この事件をかわきりに、

憎悪、嫉妬、貪欲がうずまくにごりきった空気のなかに、

幽鬼のように一家のみな殺しを企てる

姿なき殺人者が跳梁する。

 

あいつぐ連続殺人に一家の人間は

一人、二人と減っていく。

 

とうぜん、残りのなかに犯人がいるにちがいない。

 

しかし、冷徹、神のごときヴァンスも、

この難事件を前にしてしだいに

焦慮のいろを加えてきた……。

 

二千冊の推理小説を読破したヴァン・ダインが、

緻密な計算と構成にもとづいて書きあげた第三作は、

一ダースにのぼる彼の全作品中

一二をあらそうほどの決定的名作となった。

 

                        <ウラスジ>

                                               

 

 

『僧正殺人事件』と『グリーン家殺人事件』。

ヴァン・ダインの双璧をなす作品です。

 

 

『僧正殺人事件』は、<童謡殺人>の魁として、

クリスティの『そして誰もいなくなった』を生みました。

 

『グリーン家殺人事件』は、

屋敷内という<クローズドサークル>で

起こる連続殺人として、

クイーンの『Yの悲劇』を誘発しています。

 

また、日本では浜尾四郎が『殺人鬼』を、

その影響下にある事を

隠さずに著わしています。

 

まさに近代本格推理小説の、

二つの潮流を作った二作品でしょう。

 

”天才” フィロ・ヴァンスが、

犯人の見当が全くつかないとして、

日頃のペダンチックな物言いが押さえられています。

 

ですので、

『僧正殺人事件』よりは遥かに読みやすくなっています。

 

 

 

<警告>

もし、貴方が内外の古典ミステリーのファンで、

高木彬光の『能面殺人事件』

を今から読もうとされている場合の注意点。

 

必ずや『グリーン家殺人事件』を

先に読了されるように。

 

すでに読んでおられる方は、何の問題もありません。

 

 

『能面殺人事件』は、

日本探偵作家クラブ賞に輝く名作です。

 

しかし、ある<章>の題名が、

モロ、”グリーン家の○○” 

となっています。

 

少々勘の鈍い人でも、

『グリーン家殺人事件』の犯人の事なんだろうな、

と解かってしまうでしょう。

 

くれぐれも、お気をつけください。

 

……『殺人鬼』にもそれっぽいところがあったような……。

 

 

それにしても、

昔の探偵小説は<コード>がゆるいなあ……。