妄想独り言… -2ページ目

妄想独り言…

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「もしもし」
10年前と変わらない岩崎の声が携帯電話の向こうから聞こえてきた。
「久しぶりだな、元気か?」
「はい、おかげさまで元気にやってます。」
昔と変わらない岩崎の声なのだが、年齢を重ねたせいなのか、責任者という立場で歩んできたせいなのか、どこか落ち着いている声がするのを、亮治は感じていた。

「社長が昨日電話したみたいですね」
「あぁ、内容は聞いたのか?」
「聞いていません」
「そぉか」
「ひとつ言わせて下さい」
「何だ?」
「亮治さんは給料が貰えればそれでいいと思って仕事をする人じゃありません。」
「…」
「誰かに必要とされて仕事をする人です」
「…」
「会社が貴方を必要としています。だから戻って来て下さい」
と言って岩崎は電話を切った。
心を読まれている…


次の日、外は雨である。

亮治は休日にはサーフィンに出掛けるのだが、車が故障中の為に海には向かえない。
その日は前以て休日だという事は解っていたので、Harley-Davidsonでツーリングに出掛ける予定ではいたのだが、亮治が調べた天気予報は外れ出掛けられずにいた。

仕方なく、溜まっていた洗濯と暫くしていなかった部屋の片付けをする事にした。
片付けをしていても頭の中には色々な事が駆け巡り、手が止まり溜め息を吐く、その繰り返しだ。
そんな事が4度、5度、続いた時、また携帯電話の着信音が鳴った。
送信者の名前は、岩崎…


PCを閉じた亮治の元にすぐさま携帯電話の着信音が鳴り響いた。
発信者の名前を覗き込むと、宮本。
亮治は通話ボタンを押すと携帯電話の向こうに
「もしもし」
と懐かしい声が聞こえた。

お互いスグに昔話に花が咲き10年前の様な会話をするのである。
昔話にひと段落ついた後はお互い現況を話していた。
宮本は、あれから必死に会社を盛り立て、亮治の知らない社員も抱えて頑張っていたのだか、その社員が急に辞める事になってしまったらしい、宮本は亮治に
「10年経ったんだ、どうだ戻って来ないか?」
と誘ってきた。

亮治は今、誰にも必要とされてはいないのではないのだろうかと、下を向いて俯いている時である。
正直、嬉しかった。
しかし、10年前に啖呵を切って辞めたのを亮治自身は忘れていない。
岩崎の事もある。
宮本も10年以上一緒に走ってきた岩崎の気持ちを蔑ろにする事は出来ない。
やはり今回も、実現はならず諦めるしかなかった。