私のコラム(2018年7月) イスラエル、臓器移植、若者 | 九州のオピニオン誌「フォーNET」編集長の独り言

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おはようございます。今日も福岡は秋晴れです。今日は私のコラムをお送りします。

(2018年7月 未推敲)

 

イスラエル、臓器移植、若者

 

 

 

 

 今号では偶然にも二人の外国人の記事を掲載している。しかも、二人ともユダヤ人という偶然が重なった。初めて知るイスラエルという国家の実像に目からウロコが落ちた思いがした。特にイスラエルが中東で唯一の民主主義国家で、敵対するイスラム教をはじめ各宗教に信教の自由を保障していて、アラブ人の政党が三つもあることに驚いた。しかも、同じイスラム教徒同士で争わないように兵役の義務を免除しているという。パレスチナとの紛争ばかりがクローズアップされているが、意外に安全な国だと再認識させられた。コラムで太田誠一さんは「イスラエルの国防に対する不屈の精神を日本も学ぶべきだ」と書いている。まさにそれを実感した内容だった。

中国で行われている「良心の囚人」の臓器を狩る事実は衝撃的だった。

中国の違法というか残酷な臓器移植の調査を十年以上前からやっている人物で、彼らが調査した内容をドキュメントした映像の上映会と質疑応答のイベント前に時間をもらった。中国の臓器移植については、ずい分前に「ヤクザの大親分が中国で臓器移植手術をやった」とか「その臓器は死刑囚と迫害されて収容された法輪功の学習者のもの」という知識は持ち合わせていたが、実際に訊くと、その残虐性に吐き気を催す。とにかく酷い。ユダヤ系カナダ人のマタス氏の「ホロコーストも人類最悪の残虐行為だが、臓器移植は憎しみ、妬みという感情すらない、金儲けのために罪無い人の命を奪う、人類史上最悪の行為だ」という言葉が重たい。
 日本の支援団体事務局の話によると、法輪功学習者たちは長く続く迫害を学習して、国外に逃げたり国内で潜伏していて中国当局もなかなか捉まえられないという。しかし、中国の経済政策の柱の一つに「臓器移植ビジネス」があるため、今「狩られている」のは新疆ウィグル族、キリスト教信者たちだという・・・支援団体は現在、地方議員をネットワークして、いずれ国会議員をネットワーク化して議連を作り、日本がこの非道に加担しないような法整備を促すという。
 その後の懇親会で、「隣国でこんな酷い、悪魔の所業が行われているのになぜ日本は国会で議論されないのか」と疑問を呈すと、ここでは書けないが、いや、どうしようもない現実の壁があるようだ。人道をあらためて考えさせられた夜だった。

 

ところで、最近勉強会を始めた。「せごどんクラブ」とかなりくだけた名称をつけたが、中味は濃い。『西郷南洲手抄言志録』を読み解く。
第一回の参加者は二十代男女各一名、三十代男性一名と私の四名。原文の読み下し文と現代語訳を交代で声に出して読んで、その後意見を交わす。その後に私が解説文を読む。この日は七条目。皆真剣に考えてくれた。印象に残ったのは、
三 (原文読み下し)
 唐虞(とうぐ)の治、只(た)だ是(こ)れ情の一字のみ。極めて之(こ)れを言えば、万物一体も、情の推(すい)に外(ほか)ならず。

(現代語訳)
尭舜の政治はただ情の一字であらわしうる。極言すれば、「万物一体」というのも情をおし拡めたものだ。(言志(てつ)録第251条)

について意見を交わした時のことだった。

今の政治状況はこの状態とは大きくかけ離れている、ということで意見は一致したが、それでは「情の政治」を実現するにはどうすればいいかということになった。投票率が低い状態をどう考えるかと参加者に問いかけると、20代の二人が口を揃えて「今の政治にまったく期待できないから、投票しろと言われても難しいのではないか」と言う。つまり、若い世代は政治に対して無関心なのではなく、無力感を感じているというのだ。若い世代に希望を抱かせることができないのが、今の政治の状況なのだと再認識させられ、私も学ばせてもらった。