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水平の彼方

空には雲ひとつなく、視界を遮るものも何一つなかった。

しかし、その清涼さとは対照的に波は高く、大きなうねりは彼方から次々と押し寄せていた。

その水平の先を見つめながら彼は言った。

「こうして海を眺めるという行為を、おまえとすることになるなんて何の罰が下ったんだろうな」

そう言う彼の口調は、普段海を見慣れてないせいか、どこか楽しげでもあった。

「海の側に住んでいる僕にしてみれば、ごくごくありふれた景色だし、こうして人と海を見渡すなんてことも、君が毎日知らない誰かとビルを見上げてることとたいして変わりはないさ」

事も無げに僕がそう言うと、彼はフッと鼻を鳴らして言った。

「都会の喧騒から逃れて田舎に引っ込んでも、そういうところは相変わらずだな」

「そういうとこって?」

「言葉にするのは難しい」

彼の言いたいことは何となくは分かっていたが、僕もうまく言葉にはできそうにないので、黙っていることにした。

「しかしまあ、変わってない、てのは喜ばしいことでもあるな。おまえのやさぐれ具合はなかなかいじり甲斐があったからなあ」

「僕は全然嬉しくないけど」

「そんなこといっておまえ、ここ5年もオレとの軽妙なトークなしでいて、よく正気で─ 」

時折吹く、身体ごと根こそぎもっていかれそうな突風のせいで、最後がよく聞き取れなかったが どうやら彼は久々の再会を本当に楽しんでいるようだった。

「それほど平穏な暮らしぶりだった、ってことじゃないのかな。」

海に向けていた目線を頭上の空に移しながら、僕は努めて明るくそう言った。

「ふむ」

彼は海から僕に顔を向けると、さっきまで上がりっぱなしだった口角を今度は下げながら言った。

「5年も住んでて何もねえ、ってことはないよなやっぱ」

「君が期待するような大きな出来事は特に何もないよ。まあ、会社を起こしたからそれでいろいろあった、っていうのと…、プライベートだと、付き合ってた女はいたけどちょっと前に別れたとか、そんなことぐらいかな」

「それは立派に大きな出来事なんだろ?おまえにとっては」

「仕事が?プライベートが?」

「どっちもだよ。ただおまえの場合、女ではほんとろくでもないことになることが多いからな」

やれやれ、とでも言いたげな表情で彼がそう言うと同時に、正午を知らせる時報が微かに聞こえてきた。

「ん?何か聞こえてくるな。あ、そうか。これ時報だろ。田舎では昼と夕方に鳴るやつ」

ちょうど正午だということを教えてやると、彼は考えこむような仕草で言った。

「何かこう、昼休みですよ、的なお知らせが鳴ると、やっぱ人間もパブロフの犬みたいに腹が減るものなんだろうか」

正直どうでもいい話だったが、話題を逸らしたかったので乗っかってみることにした。

「僕はこっちに来て一年はデスクワークで、毎日この時報を聞いてたけど、そんなことは全然なかったよ。ていうか、朝飯を食べないから時報が鳴る前からいつも腹ペコだったな」

真面目ぶって答える僕の思惑を知ってか知らずか、僕が言い終わる前に彼は言った。

「どうでもいいよそんな話」

「いや、こっちもせっかくどうでもいい話に付き合ったのになんて言い草だ」

憤慨したように大袈裟にそう言うと、彼はケタケタと笑った。

「で、今回もこっぴどくやられたのか?」

笑いながら彼がそう言うので、少し間を空けつつ僕もおどけた調子で言った。

「まあ… そこそこやられたかな」

「おやおや!」

僕の調子に合わせているのか、芝居がかった驚き方だった。

「簡潔に言うと、浮気されてそれが本気になって捨てられた、てとこかな」

「あ〜あ~」

「まあ実のところはもっと複雑でエグい捨てられ方なんだけどね。でもそれを話し出すと、長くなる上にようやく解放されたはずの怨念にまた取り憑かれそうだから、今日のところはやめておくよ」

「そうだな。あんまり長くなると飯食うタイミング逃すしな」

「いや、もうちょっと気にするだろ普通は」

「ま、なんつうか、怨念の部分は過去と決別できたときに聞くことにしよう。まだ根っこの部分では消化しきれてなさそうだし」

やはりこういうとき、彼は驚くほどに鋭くなる。

「君の言う通りかもしれない。なかなか根が深い問題なんだ」

昔の僕なら、彼のそういう人を見透かした態度に反感を覚えたものだが、不思議と今はそう感じなかった。

「ひどい女だとは思うんだ。でも、だからといってもう関わりたくない、と切り捨てることもできない」

僕のトーンがさっきまでと変わったので、彼も心持ち真剣な表情になったようだった。

「引きずってる、とは別の意味でか?」

「どういえばいいのかな。僕は捨てられたし、相手には別の男がいる。そのことを考えると、まだ腹立たしい気持ちになることがある。でも、あいつはきっとこのままじゃいけない。どこかで変わらないと、今の男ともきっとうまくいかないし、この先も同じことを繰り返す。そんな気がするんだ」

「おいおい、それはイタい男が言いそうなことだぞ?」

彼の反応は予想通りだった。僕はきっとどうかしている。

「『オレだけが彼女を分かってやれる、オレが彼女を救うんだ』ってやつか?そういうやつに限って毛ほども相手にされないし、ただの勘違い男として扱われるのがオチだぜ」

なかなか辛辣な言い方をする。だがそれも予想通りだ。

「確かにろくすっぽ必要ともされてないし、僕の言うことなんて一つも聞きはしない。でも、あいつは放っておいたら駄目なんだ。それこそ、この世界から消えてしまいかねない。だからといって、君の言うように僕があいつを救う、なんて自惚れてはいないよ。今僕にできることは何もないからね。だけど、幸か不幸か、現時点であいつの闇にいちばん近付いたのは僕なんだ。だから僕はただ"在る"だけの存在でも状況が許す限りは近くに居ようと思ってる」

話している内に熱が入ってしまうらしい。言葉が次々と出てくる。

「それはまだ忘れられないってことか?戻ってくるのを待つと?」

「自分でもよく分からない。やり直せるとは思っていないんだ。ただ…」

彼にとっては理解不能な話なのだろう。苛立ちを隠しきれずに僕の言葉を遮って言った。

「普通じゃないよ。オレには引きずってるようにしか見えないね。ん?ただ、何だ?」

「ああ。ただ… ただ僕は… あいつを深く愛しているんだと思う」

僕が静かにそう言うと、彼も静かに息を吐き、水平線に目を向けた。

しばらく風の音しかしなかった。遠くで鳶が鳴くのが聞こえた。

「愛していることは否定できない。だけど、やり直したいとか戻りたい、とは思わないんだよ。不思議とね。あいつの闇をどうにかできるとも思っていない。どうにかしたい気持ちはあるんだけど。とにかく、誰かが側にいないと駄目なら、ひどい裏切りを経験してもまだ側に居ようと思える僕が居るしかない。そう思うんだ。」

彼は長いこと黙ったままだった。僕に愛想をつかしてしまったのだろうか?

長い沈黙の後、また鳶が鳴いた頃に彼は口を開いた。

「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている」

「だいぶ前にもその引用を聞いた気がするな」

「その娘の闇は、きっとおまえの闇でもあるんじゃないかな。もちろん中身は全く違うだろう。まあおまえとその娘の間に、何があったかは詳しく聞いてないから分からないんだがね。ただ、光が強いと闇は濃くなる。おまえがただ光であるなら彼女は救えないし、ただただ彼女の闇が濃くなるばかりだ。だが、おまえも相応の闇を抱えてる。だから彼女に引かれるんじゃないか?お互いの闇を覗いてこそ、そこに光を当てて闇を晴らすことができる。おまえは彼女の闇を晴らしたい。だが同時に、自分の闇も晴らしてもらいたがっている」

なんということだろう。僕は彼の言う事のすべてを理解できた。その一つ一つが腑に落ちた。

僕は彼女に救ってもらいたかったんだ。

「君は… 何ていうか、その… 」

僕のことをよく理解してる、と言いそうになって口をつぐんだ。

僕からの反発を覚悟していたのか、彼は僕の反応を少し訝しんでいるようだったが、どうもそういう雰囲気ではないと察したようで、少し口角を上げながら言った。

「何だよ。言い過ぎたとは思ってないぞ。それにオレぐらいしかこんなにズバズバと言えないだろ。」

「そうだね。ここは長閑な田舎だから」

「それはオレが都会暮らしでギスギスしてるって言いたいのか?」

「住む場所は関係ないさ。それは君の闇だから」

「勝手に人をダークサイドの住人するなよ。あ、一つだけ言っておくが、オレはおまえの闇に近づくつもりはないからな」

「僕も君の闇を照らそうとは思わない」

「だからオレにはそんなもんはないって」

結局、複雑な出来事は省いたのに、ずいぶんと長い間話していたようだった。

彼は僕の闇がどうとか、深く考えない。ただ友人として接してくれる。闇を抱えていようが抱えていまいが、僕という人間を見てくれているんだろう。

では、僕は彼女をどう見ているんだろう。大層な理由や理屈をぶら下げて、説明をつけようとしているんじゃないのか?
男と女なら、ややこしいことは沢山ある。友人でいることが難しいこともある。
でも、いったんそういう状況的なものは脇に置いて、シンプルに考えてみればもっと楽になれるんじゃないだろうか。

自分にとって必要か必要でないかだ。


移動するために僕らは歩き始めていたが、携帯をつついて昼飯のプランをああだこうだと言う彼の言葉をほとんど右から左に聞き流し、僕は水平線の彼方を見ていた。

空には雲ひとつなく、その光を浴びて海は眩しく輝いていた。僕には、まるでこの世には闇など存在しないかのように思えた。



ヒーロー


ー無機質だなー


カーテンの隙間から差し込む陽の光を見て、僕はそう思った。

病室のベッドから見える景色なんてそんなもんだろうー    などと、ありがちな感傷に浸っていると、ノックもせずに彼が入ってきた。


『なんだ、ずいぶん元気そうじゃないか。』


『そう見えるのは嬉しいことだね。』


『よくないのか?』


『いや、来週には退院できるらしい。』


『なんだ、やっぱり元気なんじゃないか。』


病室に入るなり発したのと同じような言葉を呟きながら、彼はベッドの側の椅子に腰を下ろした。


『ジョセフ・コンラッドか。また陰気な本を読んでるな。』


『そうでもないよ。ただ古くて哲学的で、難解なだけさ。』


『そういうのをおまえみたいな性格の病人が読むってのは、なんかありがちな光景だ。』


彼は僕がついさっき自嘲気味に感じたことをさらっと言ってのけると、大きな紙袋から漫画を数十冊取り出し、ベッドサイドの棚の上に置いた。


『海賊の王になりたい奴が主人公の漫画だ。子供向けに見えてこれがなかなか面白いんだよ。』


『知ってるよ。ていうか知らない人の方が少ないだろう。まあ僕は昔ちょっと読んだだけなんだけどね。』


『そうなのか?何で読むのを止めちまったんだ?』


来るだろうな、と思った質問がストレートに飛んでくる。


『うん・・・何だろう。肌に合わない、とでも言えばいいのかな。』


『つまりつまんなかった、てことか?』


『いや、そういうわけではないんだ。最初は面白いとは思ってたんだよ。でも何というか、感情移入ができなくてね。』


『出たな。おまえの独特な世界観が。』


彼はそう言うと、棚の上から一冊を手に取り、パラパラとページをめくった。


『キャラは立ってるし、ストーリーもわりかしよくできてると思うがね。』


『主人公がね。いまいちピンとこないんだ。』


ふぅむ、と考え込むように彼は相づちをうつので、僕はそのまま続ける。


『ああいう、単純明快な思考と仲間第一の優先順位、頭は良くなくて、すこぶるよく食べるキャラ設定は、すでに昔にあった気がする。』


『まあ、それは確かに、そんな気がするがな。』


『僕の中のヒーロー像は、そういう真っ白で分かりやすいものじゃないんだよ。そうたな、ダークヒーローとでも言えばいいかな。やっぱりどこか陰のある、孤高の存在っていうのが憧れだね。』


『バットマンみたいな?』


『雰囲気だけならば近いね。でもちょっと違うかな。もっとアクの強い方がいい。』


『おまえの好きな俳優は確か、スティーブ・マックイーンだったよな。』

どうやら彼は、僕の言わんとすることを即座に見抜いたようだった。


『ああ、そうだね。そういうことさ。』


『ジェームズ・ディーンもマックイーンも陰のある俳優だった。瞳の奥に、どことなく哀しみを漂わせているような、そんな雰囲気があった。』


『だけど、マックイーンのそれは、ディーンのとはまた違う「孤高」とも言うべき凛々しさを秘めていた。』

僕が彼の言葉を継ぐと、彼は得心がいったというように、二、三度頷いた。


『筋斗雲に乗ることができる、ドラゴンボールの主人公のような心の清らかなヒーローは、リアリティに欠けるってことだろ。』


『ああ。そういうのは子供の頃には夢中になったけど、もうこの歳になると流石にね。』


僕がそう言うと彼はフッと鼻で笑い、少し背筋を伸ばした。

『ふむ。ま、そういう大人の有り様もまた、ありがちな話だな。』


『それだけ世界は混沌に満ちてるんだよ。』


『ありがちな事象だらけでな。』


強く差し込んでいた光は、今ではずいぶんと角度を変えていた。

彼は二つ三つ、近況報告をすると退院まではもう来ないぞと言い残して去っていった。

残された僕は、傍らに同じく残された大量の漫画をしばらく眺めてから、返す手間を考えて少しうんざりした気分になった。

陽はまだ高いが  ー  どうせ僕は病人だ。

ふっと溜め息をつくと、僕は山積みされたいちばん上の一冊を手に取った。



冬の幕



『― きっとあいつは記憶を失って、そしてオレのことも何もかも忘れてしまったんだ ― と、本気でそう思ったほどだ。』



久しぶりに会う彼が最初に発した言葉だった。



『なかなかハードな毎日だったんだ。連絡を返せなかったのは悪かったよ。』



口ではそう言いつつも 実はさほど悪いとは思っていなかった。


忙しかったのは事実なのだ。


しかし彼は 僕のそういうところは即座に見抜く。



『その口ぶりじゃあ、悪いと思ってないって言ってるようなもんだな。まあいい。おまえがそういう奴なのは今に始まったことじゃないしな。』


そう言うと彼は車線を変更し 左折待ちの車列に車をつけた。


2月ももう終わりだというのに街の空気はあまりに冷たく このままずっと冬が続くのではないかとさえ思ってしまう。



『最後におまえに会ったのは年末だったか。おまえの仕事は年末がいちばん忙しいかと思っていたんだがな。』



『まあそれはそうなんだけどね。ただ、今は忙しさの性質がちょっと違うかな。僕の立場も少し変わってね。やることが増えたんだ。』



『ふむ。それは出世したってことか?』



『ざっくり言えばそういうことだね。』



僕らの乗った車が左折し、大通りに入ると、さっきまで空に蓋をしていた雲間から少し陽が差し込むようになった。



『ほう。それでオレが暇を持て余す間、馬車馬のように働いてたって訳か。』



『そういうことだね。だからとてもじゃないけど、君の暇つぶしに付き合う余裕なんてなかったのさ。』



そうやって僕が皮肉たっぷりに言うと 彼は鼻を鳴らして笑った。



『ふん、時間がない時間がないなんて言って嘆いてる奴は、ただ自分がトロいだけの話だよ。時間なんてもん、作ろうと思えば幾らでも作れる。』



彼は片手で運転しながら口の端にたばこをくわえると 火はつけずにそう言った。



『なるほど。君に時間が余ってるのは君の時間管理の仕方が優れているってことか。』



『ばかやろう。別に時間が余ってる訳じゃないよ。やるべきことを整理して限られた時間の中できっちり片付けてるだけさ。そうすりゃ自分に余裕が生まれる。仕事のやりくりも楽になる。その中で自分が自由にできる時間を作るのさ。』



『だから、仕事をパッパと片付けて時間を浮かせるんじゃないのかい?』



『平たく言えばそういうことだがな。微妙なニュアンスが違う。早く仕事が終わったから時間ができた、じゃなくて、時間を作るために早く仕事を終らせるんだよ。』



『そうか。じゃあ僕にまったく時間がないのは、僕自身に時間を作る気がないからだ。だから仕事が終らない。』



僕がしたり顔でそう言うと彼は まだ火をつずにいたタバコをくわえたまま器用に笑った。



『プラス思考か。』



やっとタバコに火をつけると 彼は何故か僕の座る助手席側の窓まで少し開けた。


冷たい風が入り込んでくる。



『時間を作る気がないってのはあながち間違ってないかもな。おまえは仕事の中では同時にいろいろ進められるくせに、なんかこう、生き方的なところでは不器用極まりない。例えば おまえの仕事と音楽の両立ってのも怪しいし、それに女でも失敗してるよな。仕事をうまく捌きながら、別で自分の自由な時間のことは考えられないんだろう。』



『そうやってすぐに僕を分析して分かったような気になったって、何も得るものなんてないと思うけどね。ひとつ間違ってるのは、僕は女に自分の時間を使いすぎて見限られたんだ。僕は仕事人間じゃないよ。』



『恥ずべきことをずいぶんと誇らしげに言うもんだな。歓心するぜ。』



『僕は別に恥じてなんかいないよ。』



『分かったよ。まあその辺の話は触れ得ざるものとしてそっとしておこう。』



さっきまで雲間から覗いていた太陽は いつの間にかまた雲の影に隠れてしまっていた。



『仕事の進め方も実際は不器用なんだろうな、僕は。』



『そうか?おまえとは昔一緒に働いた仲だが、オレはおまえはずいぶん仕事のできる奴だと思ってたぞ?』



『仕事の中身が変わればすべて変わるさ。昔はただのバイトで、やるべきことも限定されていたろう?今は人を使ったり育てたりしなくちゃならないし、自分の目の届かないところも管理してこそ成り立つ職責だからね。』



『管理職ってやつか。響きはいまいちだが、そりゃ骨の折れる仕事だな。』



彼がタバコの火を消したので 僕は自分の側の窓を閉めた。風切り音が止む。



『部下が何人もいるんだ。考えられるかい?この僕がそんな仕事をしてるって。』



『想像には難くないぜ。おまえにはリーダーシップがあったからな。まあ多少気難しいところは否めないが、オレみたいに適当に手を抜いて要領かます奴よりよっぽど統率力はあると思うね。』



彼がさも当然というように言うので 僕は少し笑って言った。



『君と比べて適正を認められてもあんまりピンとはこないな。』



すると彼も 大袈裟な身振りでハンドルを軽く叩きながら言った。



『おいおい、たまにはオレのことも認めてくれてもいいんじゃないか?オレはおまえを正当に評価してるってのに。』



『君の批評はやや偏ってるきらいがあるからね。いやでも、友人の言葉として受け止めさせてもらうよ。』



僕がそう言うと彼は先ほどからの芝居がかった調子のまま こくこくと頷きつつ言った。



『そうだぞ。オレほどおまえを高く買ってる奴はいない。いや、おまえみたいなやつを買ってる奴はオレくらいなもんだ。』



僕もその調子に乗せられて言う。



『いや、もっといるって。たぶん。』



『いねえよ。付き合いの長いオレすらあわや音信不通にする奴だぞ。』



『やっぱり根に持ってたのか。』



『おまえが生きていることを信じ続けたオレに 何か感謝の印を とは思わないのか?』



特に感謝の気持ちはなかったが 久々の彼との対話が新鮮だったこともあって 何か奢ってやるか ―という気持ちに僕はなっていた。


車の中は 窓を閉めてから次第に暖房が効き始め おそらく湿度も下がってきたのだろう いつしか自分の喉がカラカラに乾燥していることに気付いた。



『そうだな。じゃあその印として、あそこのコンビニで君にコーヒーでも奢ってやろう。』



前方に見えてきたコンビニエンスストアを指差しながら僕がそう言うと 彼はまた大袈裟に肩をすくめて言った。



『やれやれ。しみったれた印だな。』



『何ならアイスをつけてやってもいい。』



『いらないよ。女子じゃあるまいし。』



『そうかい?僕は買うけど。』



『知らん。』



日暮れが近いせいか 降り立った街の空気はさらに冷たく 風は鋭さを増していた。


しかし 空は雲に覆いつくされていて 太陽の位置は窺い知れず ただ闇の色は確実に濃くなっていた。


少し前に車に差し込んできた陽の光。


あれは現実だったのか?


黙ったまま空を眺め続ける僕に 先に歩き出していた彼が何か呼びかける。


視線を空から戻すと すでに彼はコンビニの中に消えていた。


僕はもう一度空を見上げる。


頭上を覆う闇の色が さっきよりほんの少し濃くなったような気がした。









リターンズ



不死鳥の如く甦ったオレのバイク。



1ヶ月近く徒歩と電車とバスで暮らしてきたが、やっぱ都会の電車は精神崩壊を招きかねん。



歩くのは好きだが、さすがに6㎞1時間の道のりを毎夜歩くのは、時間的体力的余裕がない。

昔の人はエライよな。



しかし久々に乗るバイク、楽し過ぎる。
もう相当に寒い時期に差し掛かってきた訳だが、そんなの忘れるくらい。

ニヤニヤしながら運転してしまったぜ。



ヤバイヤバイ。





パンク

昨日の朝、バイクに跨がると、何やらバイクが重い。


何じゃ?

と思って後輪をチェックしてみると、空気圧がかなり低くなってた。




はぁぁ?




帰りに何か踏んづけたか、何者かにイタズラされたかだが、なんでこんなうっすら空気が抜けていくようなパンクなんだろう。

まあそのおかげというか、なまじちょっと走れるからってその状態のまま出勤してしまうっつう。



どうも。冒険野郎です。



その帰りはもっと空気抜けてたよね。


当然。








さて!

あさってはライブ!!

10月24日
@下北沢LOFT
http://www.shimokitazawa-loft.com/live/page006.html

ticket¥1500(1ドリンク付)
出番は19:00~。

ぜしぜし。
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