朝日新聞の記事「(インタビュー)世紀の新薬、未来へ 京都大学名誉教授・本庶佑さん」を読んで | 目指せ!脱コミュ障

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朝日新聞の記事「(インタビュー)世紀の新薬、未来へ 京都大学名誉教授・本庶佑さん」を読んだ。

彼は、人にあらかじめ備わった免疫を利用して、異物である「がん」を治療する抗がん剤オプシーボの生みの親だ。

 

この記事を読んで思ったことがいくつか。

①研究の難しさが一般的に理解されてない

インタビュアー「[今回の功績について先生は]拾った石ころのような物質が、ダイヤモンドの原石だったと表現していますね」

→研究をしていると、一見もっともな仮説も実験してみると違うことが多いことは身にしみて理解できる。それに、偉大な発見の多くは、期待されていないところからポッと出てくる。

インタビュアーのこのコメントは、研究の難しさに対する理解が薄い大衆の視点を上手くぶつけたものだと感じた。

 

②科学政策について

教授 「ブレークスルー(飛躍的な進展)はデザインできません。つまり、ねらってできるものではないんです。とくに生命科学では、ある分野でわかったことが考えもしなかった分野とつながって重要な意味を持ってくる、ということもよくあります。どこをどうやったらいいか、だれにもわからない。『ここ掘れワンワン』というわけにはいかないんです。大切なのは、そういうチャンスをなるべく多く作ることです」

教授 「政府のプロジェクト施策のように、5年間で何かをやる、というのは間違っています。5年でできるとわかっていることはたいしたことない。種をいっぱいまかないと、どれが芽を出すか、わからないし、芽を出しても、枝が出るか、花が咲くか、さらには実がなるのか。基礎研究には幅広くたくさん投資することです。それが何万倍にもなって返ってきて、税収も増える。リターンは大きいんですから」

→今年ノーベル医学賞を受賞した大隅先生と同じ意見じゃん!

コンサル諸君、官僚諸君、ちょっと聞いてる?????

 

③産学連携について

教授 「日本の製薬業界には主要な会社だけでも30社以上あり、多すぎるのでは。そもそも開発力を持つ製薬会社がある国は日本もふくめて6カ国程度。高度で知的な総合力が求められるからです。薬の開発は失敗することもあり、リスクが大きい。資本力がものをいいます。集約化が必要でしょう」

→中外製薬がRosche傘下に入ったのも、資本力の強化が1つの理由だし。日本の製薬企業も、自覚はしているでしょう。製薬業界では、グローバルに見ても「集約化」が1つのトレンドになっている気はする。

教授 「重要なのは、大学などで生まれた研究成果の見極めです。評価するには従来の化学者だけでなく、医学を含む生命科学分野の人材がもっと必要です。そしてもう一つ、大学などでの研究成果から製品ができたら、製薬会社は特許料だけでなく、要は次世代を育てるために、さまざまな形で大学に還元してほしいと思います。長い目で見れば、企業にもプラスになる。そんないい循環をぜひつくっていくべきです。やり方はいろいろあるでしょう」

→就活で製薬業界を見た身としては、「化学者だけ」っていうのは、ちょっと時代遅れ(偏見?)な気がします。製薬企業の理系職には、生命科学分野の人が沢山います。医学系研究を大学院で行った私自身も、私の友人の多くも、日本有数のトップ製薬企業の研究職に内定頂いてるので、「製薬会社も医学/生命科学分野の人材を欲している」印象はある。

また、製薬会社が、良い学生を育てるために大学院に還元するっていうのは理想的である。それができないのは、「製薬会社そのものがギリギリの状態で余裕ないから」とも考えられる。今がやばいのに、長期的な視点なんて持ちようがない。

 

④日本の大学について

教授 「大学の同じ学部に一つの高校から5人以上とるな、というのが持論なんです。大学には多様性が何より大切です。いろんな所から来た仲間がいて、とんでもないことをいう人と触れ合ってこそ、人は育ちます」

→これは、すごく思う。「5人以上とるな」は言い過ぎかもしれないけど、実際、東大や医学部ってほとんどの学生が同じような家庭環境 (母親が専業主婦できる中流以上階級)で、それが当たり前な高校出身だからね。 まぁ、受験に必要な塾代や、勉強に専念できる環境とか考えると、仕方ないっちゃ仕方ないけど。そういう意味では、中高時代の奨学金整備や、米国大学のような「多様性枠」って取り方も良いと思う。

 

⑤日本の大学院について

教授 「この20年あまり、大学の基盤的研究費が減るなど研究環境は悪化し、とくにひどい目にあっているのが若い人たちです。大学院に進学し、年に50万円もの授業料を払って奨学金もなし。博士号を取っても、それに見合った職が少ない。これで進学するとしたらよほどのお人よしでしょう。先日訪ねたドイツでは、州政府の政策で大学も大学院も大部分が授業料は無料、奨学金もかなりの確率でもらえます」

教授 「[大学院に進む学生が減り、将来が危惧されていることは]当然です。まず、大学院の授業料は無料にすべきです。財務省は受益者負担の原則をいい、教育を受けた者が受益者だから負担しろといいます。とんでもない間違いです。受益者は国であり、国民です。知の人材を育てることこそが、国にとって一番重要なことのはずです。税金でまかなうべきなんです。こんな現状にした国の責任は重いと思います」

 「政策の逆戻りが難しいとしたら、提案したいことがあります。優れた大学院教育と研究者育成コースをひとまとめにした補助金制度の創設です。授業料と奨学金を大学に補助する。どれだけ優れた研究者を育てたか、実績はどうか、などで成果を評価する。お金は、建物でなく、人にこそ使うべきなんです。このままでは、20年後には悲惨な状況になると心配しています」

→日本の大学院が苦しい環境なのは事実。そして、「大学院教育の受益者が誰か」について日本の理解が乏しいのも事実。あと、企業の理系職に就くためには「大学院前提」になってる現状も、皆様には理解していただきたい。

コンサル諸君、官僚諸君、ちょっと聞いてる?????