変身願望 3



「その条件とはのぅ……、サメと戦うことじゃ」



「サ、サメと戦う?このボクがですか……!?」

「そうじゃ」

ルピーはあまりのことに、目を白黒させて驚いた。



「そ、そんなの無理ですよ。ボクにはサメのような鋭い歯はありませんから、戦ったところで負けるに決まってます!そんなの無理です!ゼッタイに無理です」



「いや、そうではない。戦うといっても正面切ってサメと戦わんでもよい」

「ど、どう言うことでしょうか……!?」



「どこでもいいから、サメの身体の1部を食いちぎって持ってくることじゃ。サメの不意をつけば、そのぐらいのことはそなたにもできるじゃろぅ」



ルピーは、不思議に思って聞いた。

「食いちぎるって、何でそんなことしなくちゃいけないんですか?何か理由でもあるんですか?」



「特に理由はない。ただ、そなたにその勇気があるかどうかを試したいだけじゃよ。」

「……!?……!?」



「どうじゃ。できるかな……!?もしそれができたら、その褒美としてそなたをサメに変えてしんぜよう……」

この時ルピーはジュディに逢いたい1心で、つい言ってしまう。

「は、はい、やります。ぜやらせてください!お願いします」       



ところで、このルピーのサメへの変身だが、とてつもなく危険かつ愚かな行為だった。なぜならサメに変身すれば、確かにそれで強くなれるかも知れないが、だからといってそれでジュディが、

「ルピー、ステキ~!」

と言って戻ってくるという保証はどこにもなかったからだ。



それよりもむしろ、サメに変身することによってルピーの存在が消えてなくなってしまうわけで、そのほうがよほど恐ろしいことだった。



が、ジュディのことで頭がいっぱいだったルピーは、そんな単純な理屈も理解しないまま、とうとう危険なサメ探しの旅に出かけてしまったのだった。



文字通りの海中行脚(あんぎゃ)であった。

海中ではルピーは、異常に緊張し、異常に興奮した。

というのは、神様が指定したのが、サメの中でも1番凶暴といわれるホオジロザメだったからだ。

<よ、よりによってホオジロザメだなんて、神様も意地悪だよなぁ……!>



こうなったら、ホオジロザメの中でも、なるべく身体が小さくてか弱そうなのを見つけるしかない。

皮肉なもので、遭いたくない時は頻繁に出遭っていたホオジロザメだったが、いざ自分から探してみるとなかなか見つからない。



それでも1週間後、やっとのことでルピーは1頭のホオジロザメを見つけた。だが身体がバカでかい上に凶暴そうで、不意を突くとはいえ、とても襲い掛かれそうになかった。

それどころか、相手の目をチラッと見ただけで、ルピーは恐れをなしてその場から逃げ出してしまった。



さらに1週間後、少し小さめのホオジロザメを見つけたものの、やはり恐怖心が先行して襲い掛かれなかった。

そしてサメ探しの旅に出て、丁度1ヶ月が過ぎた時のこと。

ついにルピーは身体の小さなホオジロザメを発見したのだった。風貌もホオジロザメにしてはチョッピリ弱々しそうで、動きもなんとなく鈍そうだった。ルピーは決心した。



<こ、こいつだ!身体が小さい上に、なんとなく弱々しそうだ。こいつならボクでもなんとかやれそうだ!?> 



けれどもそれは錯覚だった。まったくのルピーの思い違いだった。

弱々しいのは表面上だけで、実際はすこぶる強暴だった。動きも思ったよりはるかに機敏だった。やはり「腐っても鯛」ならぬ、ホオジロザメであった。



そんなこととはつゆ知らず、ルピーはここであったが百年目とばかりに、ターゲットのあとを追いかけて攻撃のチャンスを待った。



ある場所まで行ったところで、サメは獲物を捕えて、持ち前の鋭い歯で引きちぎって食べ始めた。

ルピーから見たら、サメは獲物をたいらげることに夢中でスキだらけだった。

<今だ!チャンスだ!うしろから行ってサメの尾ひれに食らいつくんだ!>

 

そう思ってルピーは、サメの背後に静かに忍び寄った。そして心臓の高鳴る中、思い切って、サメの尾ひれにかぶりついた。



するとサメは、いきなり向きを変えて、大口を開けてルピーに襲い掛かってきた。

「ウォーッ!」と叫んだかどうかはわからないが、とにかくサメはノコギリのような鋭い歯をむき出して、ルピーに襲い掛かってきた。文字通り、サメの逆襲だった。



「た、助けてぇ~!」



ルピーは悲鳴を上げて逃げ惑った。全速力で逃げ惑った。が、そのルピーのスピードに合わせて、サメも全速力で追いかけてくる。執拗(しつよう)に追いかけてくる。逃げても逃げてもどこまでも追いかけてくる。



「ああ~っ!神様!」




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