後悔 2



ところでジュディだが、砂浜から姿を消したのは別にルピーが嫌いになったからではなかった。理由は他にあった。



実はジュディ1家は父親の仕事の関係で、突然見知らぬ遠い国に旅立たなければならなかったのだ。もちろんその時ジュディは、ルピーに最後のお別れをいいに海岸へいくつもりだった。ところが母親のテスが、

「よけい哀しくなるから……」



といって強硬に止めたものだから、とうとうジュディはルピーにそのことを告げることなく、旅立っていってしまったのだ。いうまでもなく、ジュディ自身はルピー同様、今もルピーのことが大好きだった。



そんな事情を知らないルピーは、仲間の作り話に翻弄されて、てっきりジュディに嫌われたものと思い込み、サメになったり、これからもまたクジラになろうとして見当違いな努力を重ねていたのだった。



チョッピリ、いや、かなり勇気がいったが、ルピーは満月の夜を待ってもう1度神様を訪ねた。今度も3回目の満月の夜に神様は現れた。



ルピーは先手を打って、神様に詫びた。

「か、神様!申し訳ありませんでした……」

「なんじゃ、いきなりどうした!?」

「じ、実は……」

「実は、なんじゃ……?」

「は、はい。実は、ま、間違いでした」

「何が間違いじゃ…!?」



例によって神様はすべてを見通していたが、わざと知らんフリをしてそう尋ねた。



「ぜ、前回お会いした時、ボクは神様にお願いしてサメにしていただきました」

「うむ……」

「ですが、それは間違いでした。神様には大変申し訳ないのですが、あれはボクのカン違いでした」

「……!?……!?」



しばしの沈黙のあと、神様が言った。

「自分から言い出しておいて、ずいぶん勝手じゃのう」

「も、申し訳ありません……!」

「まぁ、よいわ。で、なぜ間違いだったのじゃ!?なぜカン違いだったとわかったのじゃ?」

「サ、サメになって、酷い目に遭ってしまいましたから……。ジュディに振り向いてもらえると思ってサメにしていただいたのですが、逆でした。サメになったことで、却ってジュディに嫌われてしまいました>

「……!……?」



<いえ、嫌われたかどうかはわかりませんが、とにかく何度海岸へ行ってもジュディは出てきてくれませんでした。ジュディだけではありません。他の人たちも同じでした。ボクが行くと怖がって、すぐに逃げ出していってしまうんです。仲間のイルカでさえそうです。「ボクだ!」って、大声で叫んでも、やっぱりあわててみんな逃げ出していってしまうんです……」



「じゃが、当初そなたはそれを喜んでいたではないか」



「は、はい。始めのうちは……。でも、今はもう、友達も誰もいなくなってしまって……。独りぼっちになってしまいました。はい……」



「確か、わしはお前に念を押したはずじゃよのぅ。サメになって後悔せんかって。そしたらお前は、絶対後悔せんって言ったはずじゃ」



「は、はい。そ、それはわかっています。でもそれは今いいましたように、間違いだったんです。ボクのカン違いだったんです。神様!どうか、ボクを許しください!」



「まぁ、よいわ。間違いやカン違いは誰にもあることじゃ。要は同じ間違いを2度と繰り返さなければそれでよいのじゃ。のうルピー」

「は、はい!あ、ありがとうございます……!」

 

その優しい神様の言葉に、ルピーはホッと胸を撫で下ろした。

「で、今度はなんじゃ?今度はわしにどうせよというのじゃ!?」

「は、はい。まことに、まことにあつかましいお願いなのですが……!」



さすがに自分でもあつかましいと思ったのか、そこから先、なかなか言葉が出てこなかった。

「あ、あつ、あつ……、あつか…ましい……!」

「いいからいうてみよ」

「は、はい……。じゃ、思い切って言います。か、神様!お願いします。今度はボクを……、ボクを、クジラにしてください!お願いします」

「な、なんじゃと!クジラじゃと!」



神様は声を荒げていった。

「……!?……!?」

「なぜじゃ!なぜ今度はクジラなのじゃ。理由を申してみよ」



「そ、それは……、それはクジラになるとジュディが戻ってきてくれるからです。は、はい……」

「なぜじゃ。なぜクジラになるとジュディが戻ってくるのじゃ」

「人間の女の子は強い生き物が好きだからです」



「前にもそなたはそういったよのぅ。サメになるとジュディが戻ってくると……」

「はい。でもそれはボクのカン違いでした。確かにサメは強いのですが、逆にサメは強すぎてみんなから嫌われているんです。それがわかりました」



「クジラだと大丈夫なのか」

「はい。大丈夫です」

「なぜそれがわかる?」



ルピーはここぞとばかりに、ここ数日間で調べ上げた資料をもとに、いかにクジラが人間や周りの魚たちから好かれているかを力説した。



「クジラはただ強いだけではありません。心優しくて、心も身体もとてもおおらかです。ですからみんなから慕われています。

その証拠に、クジラの周りには常にたくさんの魚たちが集まってきています。そして身体にくっついて、楽しそうに遊んでいます。



魚だけではありません。人間もそうです。クジラが海岸近くに現れると、たちまち海岸は黒山の人だかりです。沖にいても同じです。クジラを発見するとすぐに、人間の乗った舟がたくさん集まってきます。

そんなわけで神様、今度こそボクは自信があります。クジラになって海岸にいけば、必ずジュディが現れてボクを暖かく迎えてくれるはずです。絶対に間違いありません」




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