出逢い 2


1週間後―。


再び海岸にジュディの姿があった。

ジュディは砂浜にたたずんで、沖合はるか彼方を見つめていた。

イルカに助けられたことをあとから聞かされたジュディは、もう1度自分でそのイルカに逢って、直接お礼が言いたかったのだ。

しかし、その日イルカは海岸には現れなかった。

次の日も学校が終わってからジュディは砂浜にたたずんだが、やはり姿を現さない。


「仕方ないわ。また明日きてみよう……」


そうして2週間が過ぎたある日、ついにあのイルカがジュディの前に姿を現した。


その日ジュディがいつものように砂浜にたたずんでいると、1頭のイルカが沖合から、海岸に向かって猛スピードで突き進んでくるのが見えた。


海岸に100メートルほど近づいたところで、ジュディは思った。


「も、もしや……?あのイルカは……!?」



そのジュディのカンは当たった。

イルカはジュディに近づくと、例の調子で「ビービー」と鳴いて、おどけて見せた。

 

ジュディも「イルカさ~ん」と大声で叫んで浅瀬に入っていった。

イルカはジュディのところまでやってくると、足元に身体をすり寄せてジュディにじゃれてみせた。感激したジュディは、イルカの頭をなぜながら言った。


「あなたね、わたしを助けてくれたイルカさんって……!?」

「ビービー、ビービー!」


まるでイルカは、「そうだよ、ボクだよ。元気になってよかったネ……」


と言っているようだった。


「イルカさん、あの時は本当にありがとう。わたし、ジュディっていうの。あなたのお名前は……?」

「……!?……?!?」


「そう、まだ名前ないのね。わかったわ。じゃぁ、わたしがつけたげる。そうね、ルピーってのはどうかしら。あなたにピッタリのような気がするけど……?」


「ビービー、ビービー」


「そう、気に入ってくれたのね。じゃぁ、今日からあなたのことをルピーって呼ぶわね」

「ビービー、ビービー」


こうしてジュディとルピーの、麗しき日々が始まるのであった。

以来、ジュディは、学校から帰ると海岸へ走るのが日課となった。

もちろん、ルピーに逢うためであった。母親のテスはその度に、


「危ないから、海に入っちゃ駄目よ!」

と口うるさく言うのだが、ジュディはそれを無視して、ルピーを見つけると、平気で海に入っていった。

<万1のことがあっても、ルピーがいるから大丈夫よ……!>


おそらくそんな安心感が、ジュディの心のどこかににあったに違いない。


一方、ルピーのほうも午後の数時間、群れを離れて海岸に来るのが日課となった。



ジュディを見つけるとルピーも狂喜して、沖合から1直線にやってきてジュディの体にじゃれついた。

「ビービー、ビービー……!」


それに応えてジュディも、ルピーの身体をなぜたり、抱きしめたりして楽しい時間を過ごした。


こうしたほほ笑ましい日々がほぼ毎日のように続き、やがて1年の歳月が流れた。この頃になると、ジュディもルピーも、互いに友達以上の感情を抱いていた。

特にルピーはそれが激しく、この頃のルピーにとってジュディの存在は、恋人以外の何者でもなかった。


ところが、それから間もなくして、思いがけない事件が起きてしまう。そう、それはルピーにとって、まさに事件ともいうべきものであった。


それまで砂浜で毎日のように見られたジュディの姿が、ある日忽然と消えてしまったのだ。ルピーは驚きを隠せなかった。


「ビービー、ビービー!」


その日ルピーは夜遅くまで、必死になってジュディの名を呼び続けた。けれどもジュディは現れない。その日だけではない。次の日も、その次の日も、なぜかジュディは現れなかった。


「ビービー、ビービー!」(ジュディ、どこへいっちゃったの)


ルピーはショックだった。ショックでそれからしばらくは食べ物がのどを通らず、体も思うように動かなかった。




つづきを読む    最初から読む