出逢い 1


紺碧の空に、もくもくと広がる白い入道雲。



さんさんと降りそそぐ真夏の太陽が、エメラルド・ブルーの海をいっそう魅惑的に映し出している。



砂浜には赤や黄色のパラソルの花が咲き、波打ち際では子供たちが楽しそうに波と戯(たわむ)れている。



その美しいエメラルド・ブルーの海を、さっそうと泳ぎ回るイルカの一群があった。

 

白い波しぶきが上がって、その上をすべるように10数頭のイルカたちが泳いでいく。どうやらイルカたちは、仲間で波乗り遊びをして楽しんでいるようであった。


高等生物である彼らは、時々こうして波の高いところを選んで、波乗りをして遊ぶことがあるのだ。


それを見た、ひとりの少年が、沖合を指差して叫んだ。

「ねぇ、あれを見て!サカナだよ。たくさんのサカナさんが泳いでるよ!」


そばにいた、父親らしき男性が言った。



「あれはサカナじゃない。イルカだ!イルカの群れだ!」


次の瞬間、イルカの1群はクルリと向きを変えると、浜辺に向かって突き進んできた。どうやらイルカたちは、少年の叫び声に敏感に反応したらしい。


そばまでくると、イルカたちは愛嬌のある声で鳴き、飛び跳ね、尾ヒレを大きく左右に振って、おどけて見せた。その様は、まるで人間にあいさつしているようだった。


「こんにちは。ボクたち遊びに来ました……」


生来、人懐(なつ)こい彼らは、人間の姿を見るとこうして近づいてきて、パフォーマンスすることがよくあるのだ。

 

しばらくしたところで、イルカの1群はいっせいに空中高く飛び上がり、そのまま


「ビービー」(さようなら)と鳴いて、再び沖へ去っていった。


ある日のことである。いつものように、群れで波乗りに興じていた時、突然、一頭のメスのイルカが叫んだ。


「あそこを見て!誰かが溺れてる!?」

 

見れば、確かに人間の子どもがひとり、海岸近くで身体をバタバタさせて溺れている。



「ボク、助けにいってくる!」


せつな、若い1頭のオスのイルカが、そう叫んで猛スピードで飛び出していった。


イルカは子どもに近づくと、子どもを下から救い上げて自分の背中に乗せた。


うまい具合に、子どもも苦し紛れにイルカにしがみついてくる。



イルカはそのまま海岸まで全速力で突っ走って、子どもを砂浜に上げて無事救出した。


溺れていたのはジュディと言う、海岸近くに住む12歳になる少女だった。

どうやら波打ち際で遊んでいるうちに、大波にさらわれたらしい。

ジュディの友達から連絡を受けた母親が、青ざめて飛んできた。


「ジュディ!大丈夫!?しっかりするのよ!」



そう叫んで、母親は砂浜でグッタリしているジュディの身体を抱きかかえ、あらん限りの力でゆさぶった。


すると、ジュディは「ゴボ、ゴボッ!」と口から大量の水を吐き出して息を吹き返した。そのあと、火がついたように大声で泣き始めた。



「ママ~ッ!ママ~ッ!」


「もう大丈夫よ、ジュディ。もう心配しなくていいのよ……!」


母親はそういって、ジュディの身体をギュッと抱きしめた。


その直後、イルカは例のあの独特の声で「ビービー」(無事でよかったね)とひと声上げて、再び群れに戻って行った。そのイルカのうしろ姿に、母親は大声で叫んだ。


「イルカさん、ありがとう!娘を助けてくれてありがとう!」


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