四年三組のはた(1976) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

四年三組のはた
1976年 日活(製作:日活児童映画)
監督:藤井克彦 主演:立石凉子、南美江、桑山正一、樋浦勉、真屋順子

日活児童映画をもう一本。昨日の映画の9年前に作られた映画である。しかし、児童達をとりまく環境はあまり変わっていないようだ。クラスには家庭の事情からくさい子がいたり、それぞれに家庭のことでの悩みもある。そんな中に、担任の妊娠というサプライズが投げ込まれ、児童達がさまざまにおとなになっていく話である。昨日今日と、こういう映画を見ていて、少なからず、こういう映画がいじめの抑止にはなっていたのではないかと思ったりもした。大人が見ると気恥ずかしい部分も多々あるが、こういう原点的な話を大人が作ることで勉強になることは多くあると感じた次第である。  

四年三組の新学期。新しい担任の先生(立石)は妊娠していることを児童に伝える。児童達は興味津々でそれを迎えた。そんな中、継母を持ち、あまりうまくいっていない児童はちょっと自分の本当の母親のことを考えたりする。けして今の母親が嫌いなわけではないが愛情に飢えていた。そんな中、クラスでスカンクと呼ばれ臭いといわれている女の子と友人になり家に招待されるのだった。彼女の家は子供がたくさんいる印刷工場だった。そして、子守や料理など両親の手伝いを目一杯やっていた。彼女の臭いはそんな生活臭だったのだ。みんなにそのことを知らせ、彼女をのけものにしないようにクラスで決議が行われた。そして、立石はお手伝いをしたことを記録に残させて、みなにその大切さを教えた。夏休みが過ぎ先生は産休に入り、代わりに代用教員の南がくる。南は厳しく皆に当たるが、皆は楽しくものを覚えることを知り、徐々に南を認めるようになった。そんな中、クラスのみんなで水天宮に安産のお祈りに行き、親たちは大騒ぎ。そこでも、南は「大丈夫」と皆を守ってくれた。そして、立石の赤ちゃんが生まれた。母親とうまくいっていなかった児童も、自分から母親にいろいろ話しをするようになれた。そして、南ともお別れの日が来る。皆は、南への感謝を旗に託して、ささやかな感謝パーティを開くのだった。南は皆の気持ちを知って涙が止まらなかった。  

 妊娠した先生を通じて、子供が大きくなる話ではあるが、最後は代用教員の先生に皆が感謝する話になっている。先生にはさまざまな姿があるということも描こうとしたというところなのだろうが、バランス的にはちょっと悪い気もした。代用教員の南美江が良い先生に描かれすぎているのだろう。  

また、子供達のやることに、親たちは怒るが、先生たちは「子供を信じましょう」と寛容なのも今では絶対にありえない状況だろう。まだ、モンスターピアレンツなどというものがいなかった時代の話である。  

子供達は、他の家庭に行って、さまざまなことを覚える。そして、世の中にはさまざまな仕事があることも覚える。この当時は、商店街も生活の教育現場だっったりする。だから、親のお手伝いを評価するような話が出てくるのだろう。今は、さまざまに亡くなってしまった、教育の形が映画の中に垣間見られるのは興味深い。国が道徳など教えようとする意味など全くないこともよくわかる。家庭にとっては大きなお世話なのである。  

この映画も、不潔な女の子の話からクラスがまとまっていく。実際、私の子供時代にもくさい子やゴミ屋の子などがいたが、差別やいじめは最低限に収められていたし、子供達が差別をゆきすぎないようにする状況もあったのだと思う。まあ、ゲームも携帯もない時代の話ではあるが…。  

ということで、この映画も今の子供たちが見たら、絵空事なのかもしれない。だからこそ、今の子供たちに見せて反応を見たい気もするのだ。昨日も書いたが、こういう児童映画が作られる状況が皆無だからこそ、もう一度見直していただきたいと私は考えている。ここに描かれていることは、古くて変わらない人間の生きていく知恵だからだ。そういう意味で、現日活にも、このような映画製作の復活も考えてもらいたいと思う今日この頃である。  

監督の藤井克彦はロマンポルノでは、耽美派といった色っぽい映画を撮った人だが、ここでは真正面から子供達を描いている。そういう器用な監督も今はなかなかいないということも最後に付け加えておきたいと思う。そして、日活児童映画全DVD化是非、お願いしたい。これらが道徳の教材としては一級品であることを金にしか興味のない塾経営者出身の文科大臣は知る由もないだろうね。

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