鉄騎兵、跳んだ(1980) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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鉄騎兵、跳んだ
1980年 にっかつ
監督:小澤啓一 主演:石田純一、熊谷美由紀、竹田かほり、川地民夫、山田辰夫

石田純一の初主演映画である。正直、今の彼のイメージとは違い、かなり硬派のモトクロス選手をなかなか雰囲気よく演じている。彼がこの映画のような雰囲気で売り続けたら、またちがった役者人生もあったのだろうなと思う作品である。相手役はまだ、松田優作と出会う前の熊谷美由紀である。芝居はうまくないが、桃井かおりもどきみたいなフワフワ感は当時、受けた傾向なのだろう。あくまでも正攻法な青春映画である。

石田は田舎の喫茶店で熊谷と出会う。彼のバイクに興味を持ち、モトクロスの練習についていく熊谷。そこには彼女が知らない世界があった。石田は将来を嘱望され、ホンダからマシンを借りられるような選手だったが、いまひとつ伸び悩み、家族からも早く夢を見るのをやめろと言われる。そんな中、熊谷との仲は深くなるが、そこに新人の田中淳のデビューを目撃する。自分との段違いの華々しさに自信をなくす石田。スポンサーも彼を見捨てようとしていた。そんな中、レースで無理をして事故を起こす。スポンサーはなくなるが、夢は捨てられなかった。熊谷に秘密で基礎から鍛え直す石田は、田中に挑戦するために鈴鹿の大会に出ることにする。熊谷も負けたら引退だという石田を応援する。レースは田中の先行で石田が二着につける形。最後の2周で石田が逆転するも、ゴールを先にきったのは田中だった。表彰式、やりきった石田の姿があった。  

ラスト、モトクロスのレースで敗者となる姿がなかなか絵になる映画である。熊谷と石田の恋愛模様もまっったく屈折がない感じは好感が持てる。竹田かほりが、密かに石田に想いを寄せるような部分は、かえって余計なシーンにさえ見える。そういう真正面からの青春映画である。  

先にも書いたように、石田にナンパな雰囲気はまったくない。熊谷と外で抱き合ったりするシーンはあるが、それで、彼がスケベには見えないのは役得という感じだ。当時のにっかつ映画らしく、熊谷も竹田も裸になっている。これも自然の流れで見せていくのは(なくてもいいのだが)当時の映画らしい。この時代、女優は裸になって一人前的な部分であったということだ。  

マシンの詳細な描き方などは、その道の人には少し物足りないかもしれない。たぶん、監督がそれほどそこに思い入れがないのだろう。モトクロスという荒々しい世界を描いているだけにこの部分は残念である。ホンダという名前まで出てくるので、それなりのスポンサーなのだから、そういうメカアドバイザーをしっかり作ればよかったのにねという感じはする。ホンダの会社の人の役で北村総一郎がでてくるが、若いですね。  

 ロケは冒頭に鴻巣駅がでてくるように、埼玉中心のようだ。最後は鈴鹿でしっかりとしたレースシーンを撮っている。竹田が東京のビジネスホテルから見る風景がサンシャイン60なのも、この時期の東京の印象か?  

石田純一は、この路線でアクション俳優として生きていけばまた違った俳優になり得たのかもしれないが、まあ、ある意味、残念な素材だったということだろうと思う(あくまでも、私見だが)  

そして、熊谷もこんな感じで優作に迫ったのかな?などと、興味深く彼女の仕草を見てしまったりする。80年代の不思議少女の一人である。インパクトはありますよね。  

たぶん、日本で唯一のモトクロス映画だろう。この世界、結構、映画的だが、昨今の若者の興味からしたら、しばらくこの手の題材の映画は作れないだろうねと思ったりもした。  

そう、ここでも山田辰雄の姿が印象的である。付け加えておく

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