かっこいい若者たち(1962) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

かっこいい若者たち

1962年 大映

監督:弓削太郎 主演:長沢純、高橋元太郎、高倉一志、水原弘、姿美千子


若い方はまったくイメージできないだろうが、当時のアイドルであるスリーファンキーズがスターになる物語である。そう、うっかり八兵衛(高橋元太郎)のいたグループだ。当時の芸能界の雰囲気(ほとんど嘘だろうが)わかる映画だ。とってつけたようなストーリーだが、音楽劇としては楽しめるし、ゲストもなかなか豪華で、残しておかないといけないフィルムではある。


上野の街にはやりたい放題の愚連隊の若者がはびこっていた。これではヤクザのメンツがたたないとヤクザが少年予備隊というものを作り彼らをまとめあげ、将来の幹部に育てようと計画する。それのまとめ役をチンピラの長沢にまかせる。長沢は愚連隊に押されながらも彼らの上につく。まじめな学生たちは上野動物園で彼らをなんとか更生させようと議論。その役目を高橋と高倉が受ける。2人は長沢をジャズ喫茶につれていく。長沢は音楽が好きなのがわかる。長沢と他の2人は別々にテレビのジャズ合戦に出る。落ちるが、公園で元トランペット吹きの水原に3人ならいけるかもしれないといわれ練習を始める。しかし長沢はチンピラと、きれることができなかった。一度は離れるが戻って練習を始める3人。それをプロダクションのスカウトが見てデビューが決まる。3人はスリーファンキーズとして大活躍。しかし、そこにヤクザがきて長沢を監禁する。上野で凱旋コンサ-トの夜だった。水原や少年予備隊の連中が駆け付け、長沢を助ける。コンサートは盛況のうちに始まる。バックには水原がトランペットを吹いていた。


60年代初頭の上野界隈の姿がでてくる。埃っぽい感じや当時のアメ横がでてきて独特の雰囲気がでている。とはいえ、動物園の中で夜、若者が議論をかわすというのは、ちょっとシュールな感じである。スリーファンキーズというのを、私もリアルに見たことはないので、どの程度の人気を誇っていたのもよくわからない。とはいえ映画になるということは、アイドルとしての地位は築いていたのだろう。


一応、長沢がリーダー格らしい。だから話でも芯になってくる。最初にひとりで唄うシーンはわざとへたに唄っている。こういう事ができるのは器用だ。高橋は和菓子店で勤めており、やはりうっかりが多い役。この人のキャラはもうこの頃にできあがっていたようだ。高橋のお店の御嬢さんが姿美千子なのだが、優等生でロマンスがあるわけではない。やはり、アイドルに虫はつけるなということだろうか?


そんな3人がでる「青春ジャズ合戦」という歌合戦が開かれ、ここでの審査員が渡辺晋、和田昭治、松本英彦という豪華さ。これらの名前をしらないかたは調べてください。そんな日本のジャズの草分けに育てられたのが、スリーファンキーズなどの若い歌い手だったのだろう。


他に、伊東ゆかり、飯田久彦、寺本圭一などの当時の人気者が共演している。 そして、彼らを3人で売り出そうとするプロダクションのスカウトがスマイリー小原である。途中、おもちゃ屋で見事なガンさばきをみせ、ヤクザと間違えられるという役である。ガンプレーは吹き替えみたいだが、バタくさい存在感がある人だ。ただ、踊りながら指揮をする姿はみられない。とても残念である。


長沢がひきつれることになる「少年予備隊」というのは、やはり警察予備隊からきたものなのだろう。彼らがネリカンに何回入ったということで自慢しあうシーンがあるが、この当時のネリカンはやはり「あしたのジョー」にでてくるようなテーストで描かれているようでおもしろい。


そんなたわいない話の中に水原とテレビアナウンサー役の叶順子の昔のラブロマンスが挿入される。まあ、なくても映画は成立する話なのだが、映画の幅を広げたかったのだろう。水原はアル中気味のだめになったトランペット吹きで、プラーベートも荒れていた彼とダブルような役である。でも、十分な存在感はあるし、水原弘の記録としても貴重であろう。


昭和のアイドル史は若者の文化史といってよい。高度成長期の最初の頃の風景がかいまみれるという点でおもしろいフィルムではある。


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