若い恋人たち(1959) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

若い恋人たち

1959年 東宝

監督:千葉泰樹 主演:宝田明、司葉子、団令子、夏木陽介、有島一郎


社長の息子とバーの女給の理解されない恋を描いた軽い映画である。宝田、司というスターをみせる映画と考えればいいのだろう。石坂洋次郎的なエッセンスを意識したオリジナル作品だが、特に凝ったところもない。団令子が宝田の妹というのはめずらしい感じである。舞台は世田谷あたりだが、特定はできない。高度成長が始まる頃、貧富の差は激しいがそれがなんだという空気がでてきた頃なのかもしれない。


宝田は父(有島)が経営する光学メーカーの技師だった。銀座のバーで勤める司とつきあい、結婚する気だった。司は母と弟を給与で育てていた。宝田と一緒になっても女給を続けなくてはいけない状態だったのだ。宝田の妹(団)は有島の叔父(加東大介)の会社で秘書をしていた。ある日、そこに絵を押し売りしにきた青年(夏木)がいた。加東はいいくるめられ買うはめになる。加東は宝田に縁談を持ちかけていたが、宝田は家をでて、司と同棲を始める。偵察にきた団は同じアパートで夏木がいることを知り、近づく。宝田の母(沢村貞子)はひきさこうと司にあいにいく。そして「別れてください」というのだった。司は荒れた気持ちで店にでる。宝田はその日いらついていた、そして司の店にいくと追い出される。酔って次の日の朝もぎくしゃくするふたりだった。そしてその日、加東が汚いコートを着て司を偵察にいく。そこに懇意の社長(上原謙)がきたので、彼に司をくどけという。司と上原は食事にいく。それを見ていた宝田は追いかける。店をもたないかという上原にたいし司は断る。それを宝田がみて店は乱闘状態に。結果的に加東の合格をもらい、二人は結ばれる。そして団と夏木も近付くのだった。


軽いシンデレラ的な話だが、特に複雑な話でもなく、特におもしろいところもない毒のない東宝恋愛劇である。まあ、二人の危機は一回だけだし、それも宝田が浮気をしたり、司が危ない目にあったりするわけでもなくすぎるので、ドラマチックなシークエンスがあまりないのだ。


そして、ふたりの出会いというのが描かれていないのが、面白くない原因だと思われる。やはり恋愛話は出会いがだいじである。それなしにして二人を応援しようなどと観客は思わない。そういう点では団と夏木の話をもっと膨らませた方がおもしろそうである。夏木の方がトッポいが人間としての魅力がある。団との掛け合いも生き生きしてて良い。


夏木は画家で、結構前衛的な絵をかいている。岡本太郎みたいである。時代的には岡本が認めだされた頃なのかもしれない。そんな画に、団と夏木のコンビはあっている=その当時の現代イメージなのだろう。


司はしっかりものでいて、バーでも人気者という役なのだが、キャラクターが中途半端である。旅行シーンで若水ヤエ子と対峙するシーンがあるが、こういうところで存在感をだせないのは、ちょっと女優としての力不足の感がある。つまり若水の個性に飲まれてしまうのだ。


そんな中で見せ場は最後のクラブでの乱闘シーンである。上原も含めてなかなかハリウッド映画ばりの殴り合いシーンでおもしろい。クラブの中央にプロレスのユセフ・トルコが座っていて、なかなか豪快な投げをみせている。締めはしっかりしている映画である。


舞台は世田谷の高井戸周辺のようだ。はっきりとでてくる駅がどこかは確認できないが当時の世田谷あたりの風景がみてとれる。ラストにでてくる坂道はたぶん田園調布だろう。 そして、司の弟役はまだ、久保賢の芸名の山内賢である。中学生の役でカワイイがもう顔はできあがっている。


宝田と司がベッドをともにするシーンもあるのだが、何か健康的すぎる映画である。


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